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2018年06月01日23:41

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[観劇]光の祭典/少女都市

 「…若さで頭をブン殴られた」、よろめくように劇場を後にして抱いた第一印象は、しかしよくよく考えると妥当ではなかろう。上演時間の大半が叫び、喘ぎ、生の感情をぶつけ合う120分、レイプに不倫に三角関係、愛憎と承認欲求が渦を巻く、そんな題材を直截であっても(なにせ「ありのままの私を見て」なんて台詞までそのまま発せられてしまうのだから)決して野卑ではない形で成立させているのだから、鈍器よりも業物めいた構成技量の冴えを称えるべきだろう。デートレイプされてカメラを持てなくなった元・天才女子大生映画監督が(周囲の凡人たちを盛大に巻き込みながら)苦しむさまは、自分自身の作品(フィルター)中に囚われたような鏡像的な演出で、凄まじい。部屋の中央、浴槽で飼われる赤い金魚は映像作品の中では主人公の分身を務め、ときに致命的な真実を吐き捨てる。モザイク状のオブジェが有機的に移動して、シームレスに場面展開していく舞台装置も効果的だ。個人の心の問題に終始するばかりでなく、社会への目配りもしっかり効いている。何も撮れなくなった主人公が立ち直る(?)のは、オリンピックPVの作成、という白々しくも狂騒的、散文的なきっかけである。時流に順応はしても、眼差しは冷然と、という当世の若者のスタンスか、空恐ろしささえ感じてしまう。タイトルにしても、個人のたどり着くべき理想中のふるさと、震災から復興されるべき都市、そして反面きらびやかなるオリンピックの国家的祭典、と社会・個人にまたがる多義性を含む。
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