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2015年01月09日23:39

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火星の人/アンディ・ウィアー

 原題The Martianだが、火星人ではなく、「火星にただ一人の人間」、即ち事故で火星にただ一人取り残された宇宙飛行士のサバイバルを描くのが本作、というわけ。この邦題からも見て取れるように、邦訳はハードSFとしては異例の軽妙さとリーダビリティを誇る本作の妙味を十二分に伝えていて、実に上手い。基本的に一人称(というか主人公のログ)という形で進行する本作、火星にほぼ孤立無援という絶望的な状況にも関わらず、陰鬱さとは無縁なのは、主人公のキャラクターによるところが大きい。ひょうきんで常にユーモアを欠かさないが、その裏では恐ろしく専門的な作業を(表面上は)なんなくこなしていくプロフェッショナルさと精神のタフさ。エリートのなかのエリート、地球人類の精華ともいうべき宇宙飛行士とはこういう人間か、と思わされる。嫌味のない、逆に親近感さえもてる超人ぶり、という不思議な感覚があるからこそ、彼の生還への苦闘を固唾を呑んで見守ることができるのだ。
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