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2015年04月14日14:24

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STAP細胞と小保方晴子についての宮部みゆき、須田桃子の見解

今月号の「文藝春秋」に、その2人の「STAP細胞 なぜ不正に手を染めたのか」と題する対談が載っている。なぜ宮部がと思うが、彼女は今毎日新聞の書評委員をやっていて、昨年の大宅ノンフィクション賞をとった毎日科学部記者の須田桃子の『捏造の科学者 STAP細胞事件』の書評を担当したのだそうだ。

宮部はその書評で、こう書いている。
「自分はミステリー作家だが、推理小説での犯人探しの基本は、「その結果で利益を得る者は誰か」ということだ。その観点を念頭に推理小説を読むように本書を読了し、悲しみと共に愕然とするのは、STAP細胞事件には、この「利益を受ける誰か」が存在しなかったということだ。誰にもいいことがなかった。誰もが傷ついた。犯罪がペイしないように、捏造もまたペイしない。それは希望のみを優先し、地道に一歩ずつ現実を切り開く科学的なものの考え方に背く行為であり、結果として、大切だったはずの希望をも打ち砕いてしまうのだ」

私はその須田桃子著書を未読だが、その理由は、その本の内容が、事実と時間経過だけに基づいて「捏造」を論理的に検証したというものだからだ。そのことであれば、私はすでに再現実験が失敗に終わった時点でそうなのだろうなと、事実として認識していて、あらためてそのことだけを追う興味はない。

私に興味があるのは、小保方晴子がおこなった「捏造という行為」と、多数の記者たちを集めて実施したあの記者会見での印象の落差だ。私もネットで同時中継でオフィスで観たあのときの彼女の人間像の印象が、私が騙されただけなのだといわれればそれまでだが、故意に捏造をおこなう人間のそれとは、どうしても思えなかったのだ。そもそも、最初からみずからは当然認識しているであろう捏造をおこなった者であれば、あんな会見への出席を承諾するはずがない。
私のなかではこの事件の最大の焦点であるその問題について、この対談では、私が思ってもみなかった言葉が述べられている。

須田は、こういう。
「もしかすると小保方さんは、STAP細胞の存在を心から信じていて、それをみんなにも知ってもらわなければいけないと思っていたのかもしれないですね。それなのに、実験がどうしてもうまくいかない、あるいは思い通りの結果がでない。真実であるこの現象をみんなに知ってもらうためには、間違った方法も許されるー」

これは、少なくとも私には、説得力のある意見だ。彼女のなかにあったものをそう考えるとき、前述の「捏造」と「記者会見の場における恥じる様子のない、ウソをいっているとは思えない人間像の印象」の2つは、無理なく溶け合う。
小保方について、「捏造が故意におこなわれたものであるとは思えない。“悪意”とはもっと“貫通力”のあるものだと思う」と述べている宮部も、上記の須田の意見を、「それはすごく有力な仮説だと思います」と受け止めている。

この対談で、自殺した副センター長の笹井芳樹と40通もメールやりとりをおこなったという須田は、不気味なことをいっている。
それは、ある段階では笹井も、この「捏造」に気づいていたようだったとの箇所と、その須田の印象をある別の研究者に語ったとき、その研究者は、「はいたら踊りつづけなければならない『赤い靴』ですね」と答えたという部分だ。

私はこの事件とその最終結果について書かれた多くの人間の多くの文章で、「名のある先輩や上司の研究者専門家たちがなぜ騙されたかは、小保方晴子が若くチャーミングな女性だったからだ」としかしていないことに、強い違和感を持っている。卑俗で下世話としか思えないその理解と説明は、その者の人間観とモラルを物語っているだけだ。

そうではなく、あるいはそのこととも多少は重なるかもしれないが、私が記者会見中継で感じたように、この人物のなかに虚偽はない、真摯な人物と思ったからだとしたほうが、この事件の「謎」は解けるように、思う。須田と宮部がそう見ているように、本人に悪意はなく、心の底からそう信じていたのだとすれば、ある期間、高名な研究者をも含む上司たちが実際にそうであったような受け止め方になるのも、理解できないことではないからだ。

笹井の場合はそこに、傍系の出身の後輩山中教授に先を越された無念をこの実績で上回り、自分をバイオと再生医療で日本を代表するキーパースンにすることが出来るとの野望が重なったのだろう。このところ私はずっと、ライフサイエンスの最前線を追う仕事で多くのその分野の人間たちに会っているのだが、米国ではその分野の研究者で、笹井の死を、あれは日本にとって大きな損失だ、自分たちはミスター・ササイを、日本の過去でそれがもっとも欠落していた、大きな戦略眼で研究ターゲット決定と研究費配分の指示が出来る、将来のノーベル賞は間違いない傑出した人物と見ていた、と語る人間が多いのですとの証言を、何人もの相手から、聞いたのだ。
そのことも、印象的であった。
そう見てくると、笹井の小保方宛の遺書のなかに、「STAP細胞を、ぜひ実現させてください」とあったことの意味も、あらためて浮かび上がってくる。

ただ、その時点ですでに提出論文に多く存在していたにもかかわらず、画像捏造や切り貼りの指摘や厳しい指導をしないで小保方に博士号を与えた早大、東京女子医大、ハーバード大の指導教官たちの責任と罪が、もっとも大きいのではないか。この3つの大学の名誉失墜は避けがたい。自業自得だ。

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