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2017年01月28日22:25

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米国国内への工場投資を促すトランプ大統領の政策姿勢は、貿易赤字を拡大する逆効果となる可能性が高い(長文注意)(2/3)

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 なお、経済学の基礎理論から分かることとしては、保護貿易よりも、自由貿易の方が実は各国共に豊かになることが挙げられます。国際経済学の上では、比較優位の理論や、実証研究の結果当てはまらない事例が多いという指摘もあるもののヘクシャー・オリーンの定理等により、自由貿易が望ましいとされています。この点について詳しくはここでは触れませんので、野口 旭『グローバル経済を学ぶ』(筑摩新書,2007)や、基礎的な国際経済学の教科書をご参照下さい。
http://mixi.jp/view_item.pl?id=819149

 また、国際政治学の見地からも、自由貿易は国際平和のためにも重要であるとされています。その理由は、第一次世界大戦第二次世界大戦の間の戦間期の、例えばスムート・ホーリー法ブロック経済化等の保護主義の応報が第二次世界大戦の遠因の一つになった経験則に立った反省からは、自由貿易は国際平和のためにも重要である旨が分かったからです。この経験則が戦後のGATT(関税及び貿易に関する一般協定(General Agreement on Tariffs and Trade))締結の契機になり、やがて、今日のWTO(世界貿易機関(World Trade Organization))の設立になりました。

 ここで、貿易摩擦が起きる理由について考えてみましょう。ここでヒントは、産業構造の変化です。前段落の話は、保護主義は経済学上是とされないということですが、実は例外的に、これから成長する産業の後押しを是とするドイツ歴史学派の幼稚産業保護論という学説はあります。しかし、衰退産業の保護を是とする経済理論はありません。ですが、実際には保護主義が湧き起こるのは、経験則上、先進国では衰退産業の保護である場合の方が多いです。

 それは、野口『前掲書』にも載っているように自由貿易にはメリットだけでなくデメリットもあり、産業構造の変化によって輸出競争力を失って衰退産業と化す産業が発生し、そこでは倒産や失業の痛みが伴うからです。ですから、政策的課題としては、新たな産業を創出して、そこに雇用を移して痛みを和らげることにより、デメリットをメリットで相殺(そうさい)することが、「政策=あるべき処方箋」になります

 余談ながら、「経済学は何の役に立つのか?」と訊かれる場合が多いですが、このように、世の中の動向を読む場合に役に立つと、私は思います。我が国(日本)自体の経済動向の行く末も我が国の政策で異なり得る以上、私達一人一人の一般の日本国民の立場では、選挙における投票の際に判断ミスを行わないようにする際に、役に立つ学問であると言えます。民主主義は、意思決定手続きの正統性を保証するものではあっても、意思決定結果の妥当性を保証するものではないので、我々が適切な投票を行わない場合には、民主主義は容易にポピュリズム(populism)に陥ってしまいます。ポピュリズムを回避するための複数ある手段の中の一つは、様々な学問分野を「単に覚えるだけでなく、それをツール(道具)として使って、『事実に基づいて理論的に分析する』ことができるようになる」であり、そのための学問分野の中の一つが、経済学であるという訳です。

 話を本題に戻します。さて、米国が日本からの貿易攻勢にさらされているとするトランプ氏の認識は事実どおりでしょうか?トランプ大統領の対日貿易観は、1980年代〜1990年代半ばの日米貿易摩擦時代の対日観のまま、固定観念的にこり固まっているように見えます。東経数字で検証してみましょう。

 上述したOECDのデータと、さらに我が国(日本)の対米数字を財務省ホームページ地域別国際収支の推移(国際収支マニュアル第5版準拠:平成25年まで)で参照すれば、我が国の状況は以下のとおりとなります。

日本
年             2011年  2012年  2013年  2014年  2015年
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
輸出(単位:米ドル  )  790,941 776,445 694,931 699,830 622,169         
輸入(単位:米ドル)    795,433 829,900 784,575 799,730 627,379         
家計貯蓄          2.6%  1.4%  0.0%  -0.5%
(可処分所得比貯蓄率)
対米経常収支(単位:億円) 59,179  72,596  89,137
対米貿易収支(単位:億円) 41,078  50,429  59,735

 驚かれる方もおられるかも入れませんが、上記の統計数字からは、米国だけでなく他国も含めた全体での日本の貿易収支は、2010年代の今日、赤字になっています。先述した国際経済学の基礎理論のモデルに基づいて考えれば、貿易赤字(X−M<0)であるということは、投資超過(I−S>0)であることを意味します。日本人が高貯蓄率であるという巷間よく言われてきた話は、家計貯蓄の貯蓄の絶対額や貯蓄率は別にして、家計以外の貯蓄も加えた上で投資Iとの相対比で見れば、今日では投資を上回る程ではないということになります。このことは、「日本が輸出立国(注)である」という概念が今日では過去の遺物と化したことを意味すると同時に、人口の急激な高齢化が進む我が国において今後どうすべきかという見地からは重大な状況変化であり、さらに、政府の膨大な財政赤字がこのままで良いのか、という課題も示唆するものと私は考えます。
(注)輸出立国という発想自体が重商主義的であるか否かは、また別儀。

 日本の国内事情はさておき、このように貿易収支が赤字と化した日本において、個別の国単位に二国間関係で見れば、対米貿易収支は黒字であることが、上記の統計数字から分かります。したがって、トランプ大統領の重商主義的発想が経済学の見地から見て誤りであるとは申せ、同大統領が対日貿易赤字を指摘している点については、米国の対日貿易収支が赤字である旨自体は、事実どおりであることになります。

 しかし、1980年代〜1990年代半ばの日米貿易摩擦時点の対日観そのままに、「日本には非関税貿易障壁があるから、米国車が売れない」とするトランプ大統領の我が国(日本)の自動車市場観は、事実どおりではないという意味で間違っていると思います。その理由は、我が国ではベンツやBMWの車がよく売れている旨の事実が示すとおり、むしろ一定の確率で輸入車志向があるからです。米国車(いわゆるアメ車)が米国自動車メーカーの思うとおりに売れない理由は、日本市場が輸入車(外国車)を非関税障壁で締め出しているからではなく、日本市場の消費者ニーズに応えられる商品開発を米国自動車メーカーが行えていなかったからだと思います。経済学だけであく経営学やマーケティングの見地から言い換えれば、厳しい言い方をすれば、米国自動車メーカーが日本市場攻略に失敗してきた理由は、日本市場に対するマーケティング戦略で失敗してきたからであると、言えると思います。

 したがって、トランプ大統領が日本の自動車市場に関して政策を立てるとすれば、トランプ大統領にとっての最も適切な手は対日圧力的交渉を行うことではなく、真っ当なマーケティング戦略を立てるようにするべく、米国自動車メーカーのケツを叩くことであろうと、私は思います。もちろん、ここでマーケティング戦略とは商品開発にまで含めてのことです。

 何はともあれ、1980年代〜1990年代半ばの日米貿易摩擦の時代とは異なり、1980年代〜1990年代半ばのバブル景気が崩壊して以来の「失われた20年」で日本企業がガタガタになった今日では、日本人としては、トランプ大統領の対日貿易観は、「1980年代の対日観のまま、固定観念的にこり固まっている」、言い換えれば「日本企業が過大評価されている」ような違和感を感じざるを得ません。有り体(ありてい)に申し上げれば、困ったものだと思います。

 さて、冒頭で述べたとおり、「(平成28年(2016年)に)私が、トランプが大統領になってしまうであろう可能性を否定できないと、事前に予測していた(注1)」理由は、日米共にメジャーなマスコミが、トランプ氏の支持母体が白人貧困者労働階層である旨だけを強調していたことと、「白人エスタブリッシュメント層に『隠れトランプ・ファン』がいる」旨が新聞紙で申せば「1面トップではなく、真ん中のページに出ていた」こととのAND条件だったたからです。最近の若い人達のマスコミ不信感の文脈と同一のものではない旨を前提として読んでいただきたいのですが、日本のマスコミは、自分が報道したい方向性にとって都合が悪い事実を隠す傾向があります(米国については、また別儀)。ところが、日本のマスコミの行動パターンにはおもしろい経験則があり、この場合に合致するニュースでは、1面トップには載せないのに100%完璧に隠し通すこともせず、真ん中のページに載せる場合があることを、経験則で私は知っていました(注2)。
(注1)これは客観的な予測の問題であり、私がトランプ氏を支持していたことを意味する訳ではありません。誤解を避けるべく念のため。なお、当日記は学問についても述べる場ではあっても政治ネタのブログではありませんので、平成28年(2016年)の米国の大統領選挙でトランプ氏とヒラリー・クリントン氏のどちらの方に大統領になって欲しいと望んでいたかについては、言及を行わないことにいたします。
(注2)具体例については、「この場は政治ネタの場ではない」旨の当日記編集方針に抵触するので、明らかにしない旨を許して下さい。

 平成28年(2016年)の米国の大統領選挙においては、「白人エスタブリッシュメント層に『隠れトランプ・ファン』がいる」旨は、正にこのモデルに当てはまった報道が行われていました。このことは、実は、「白人エスタブリッシュメント層の中の『隠れトランプ・ファン』」の存在が、実は軽視できない確率で存在する可能性を示唆する「報道に関する現象」だと、私は思いました。したがって、白人貧困者労働階層だけに注目して、「白人エスタブリッシュメント層の中の『隠れトランプ・ファン』」の存在を無視した分析を行うと、読みを間違えるリスクが生じると考えた訳です(注)。このことが、私が、平成28年(2016年)の米国の大統領選挙の投票日以前の時点で、トランプが大統領になってしまうであろう可能性を否定できないと、事前に予測していた理由です。
(注)どうやら米国国内の報道でも日本同様に、トランプ氏の支持母体については「白人貧困者労働階層からの支持」偏った報道を行っていた模様ですので、詳しい事情は存じ上げませんが、日本のマスコミと同様であった可能性を否定できません。

 もちろん、トランプ氏の主要な支持母体が白人貧困者労働階層であったであろう旨は事実どおりであり、上記の分析は、この点に対するアンチテーゼでは、ありません。私が注目した点は、「支持母体は、それ以外にもあるだろう」という点ですので、問題は支持母体の構成上の比率の問題であるに過ぎません。この点については、誤解無きようお願いいたします。

 なお、米国の白人貧困者労働階層の窮状を、トランプ大統領のように「他国からの貿易戦争で職が奪われている」という見地からではなく、「米国内には、異常なまでの所得格差がある」という見地から捉(とら)えた場合には、当日記の趣旨からは外(はず)れますので詳しい解説は省略しますが、トランプ大統領の経済政策は、「所得格差の解消を目指したもの」ではなく、かつ「社会のセーフティ・ネットを無くす」方向のものという印象を抱いておりますので、逆効果なのではないかと予測します。「不法移民のために、何故俺たちのカネを使わなければならねぇんだ?」という米国の白人貧困者労働階層の心情的な不満に近視眼的に応えるものにはなっているのかも知れませんが、格差が拡大して白人貧困者労働階層がさらに経済的に困窮していくような状況をもたらすリスクが高いのではないか、と思います。この点については、さらなる言及は避けます。


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