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2017年01月28日22:16

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米国国内への工場投資を促すトランプ大統領の政策姿勢は、貿易赤字を拡大する逆効果となる可能性が高い(長文注意)(1/3)

 今年(平成29年(2017年))正月に、学部学生時代(慶應義塾大学商学部)の親友達と行った新年会で、平成29年(2017年)に合衆国大統領に就任した米国のドナルド・トランプ(Donald John Trump)大統領の話題が出ました(新年会時点では就任直前)。その際には、「トランプが大統領になってしまうであろう可能性を否定できないと、事前に予測していた」と言ったところ、、「事後に行っても後出しジャンケンだ」と指摘されてしまいました。ちなみには、ドクター・コース(大学院博士課程(高知工科大学大学院工学研究科基盤工学専攻起業家コース博士後期課程(注2)))で経営学を専攻する等、今日では経営学徒ですが、マスター・コース(大学院修士課程(東洋英和女学院大学大学院修士課程社会科学研究科(注3)))までは計量経済学(というよりはむしろ、実証理論経済学)専攻でした。以降の話は、経営学徒としての私ではなく、経済学徒としての私の意見になります(注4)。
(注1)これは客観的な予測の問題であり、私がトランプ氏を支持していたことを意味する訳ではありません。誤解を避けるべく念のため。なお、当日記は学問についても述べる場ではあっても政治ネタのブログではありませんので、平成28年(2015年)の米国の大統領選挙でトランプ氏とヒラリー・クリントン(Hillary Rodham Clinton)氏のどちらの方に大統領になって欲しいと望んでいたかについては、言及を行わないことにいたします。
(注2)東京と大阪でもサテライト・キャンパスで会社を休まずに土日に授業を受けられる社会人向け土日開講大学院です。
(注3)東洋栄羽は学部は女子大ですが、大学院は社会人向け夜間共学の大学院です。
(注4)経済学と経営学は、よく混同されがちですが、異なる別の学問です。平たく乱暴に一言で申せば、経済学は市場に関する学問であり、経営学は組織に関する学問です。もちろん、学際的な境界領域はあります。

 事前の予測理由は後回しにして、後年、「後出しジャンケン」にならないようにするために、トランプ政権で米国の経常収支、特に貿易収支がどうなるかについて、現時点の私がどのように予測しているかについて、当日記記事で述べておこうと思います。結論から先に申せば、貿易収支黒字化を目指す米国国内への工場投資を促すトランプ大統領の政策姿勢は、その思惑(おもわく)とは逆効果で、米国の貿易赤字をさらに増加させる可能性が高いと、私は考えます。

 当段落以降の数段楽で、前段落の予測についての理由を述べます。まず、前提となる予備知識として経常収支と貿易収支に関して解説すれば、両者の間の関係は、財務省ホームページ用語の解説から引用すれば以下のとおり定義されるものであり、国際収支統計における概念です。

経常収支 = 貿易・サービス収支 + 第一次所得収支 + 第二次所得収支
    = 貿易収支 + サービス収支 + 第一次所得収支 + 第二次所得収支

 マスコミ報道によれば、トランプ大統領は米国の貿易赤字を問題視していて、米国自動車メーカーや我が国(日本)の自動車メーカー(トヨタ)に対して、米国内での工場建設を促しています。まず、事実として本当に米国の経常収支や貿易収支が赤字であるか否かについて見てみましょう。関連する米国の統計指標として、OECD(経済協力開発機構)公式WEBサイト(http://www.oecd.org/)・Data(https://data.oecd.org/)のCurrent account balance(経常収支)Trade in goods(財の貿易)(Exports(輸出)とImports(輸入))Household savings(家計貯蓄)Investment (GFCF))(設備投資(総固定資本形成))によれば、以下のとおりです。

米国
年         2011年   2012年   2013年   2014年   2015年
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
経常収支(GDP比)  △2.97%  △2.76%  △2.20%  △2.25%
輸出(単位:米ドル)1,499,240 1,562,579 1,592,002 1,633,321 1,510,303
輸入(単位:米ドル)2,239,885 2,303,749 2,294,247 2,385,489 2,272,868
家計貯蓄        6.2%   7.9%   5.2%    5.8%   6.0%
(可処分所得比貯蓄率)
設備投資        3.7%   6.3%   3.0%    4.2%    3.7%
(総固定資本形成)
(対前年比成長率)

経常収支や家計貯蓄、設備投資が金額ではなくGDP比、可処分所得比、対前年比成長率だったりして単位が揃わないため軽々には指標間の比較がでいないのですが、経常収支が赤字だったり、輸入から輸出を引いた貿易収支が赤字だったりすることが分かりますので、米国の経常収支や貿易収支が赤字であるとするトランプ大統領の認識自体には、事実誤認や思い込みは無く、事実どおりであることが分かります。

 ここで、「赤字」という用語の語感が、(恐らくはトランプ大統領も含む)経済学を習得していない方々に与える誤解が、問題になろうかと思います。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 ・ 国際収支統計にも載っているとおり、国際収支統計は財務諸表における損益計算書(P/L)ではないため、経常収支や貿易収支が赤字であることは「損失」を出していることを意味する訳ではなく、単に輸入が輸出を超過している状況を指しているに過ぎません。「貿易黒字は良いことだ」とする重商主義的発想は、実は理論経済学の基礎理論では正当化し得ないのです。以前の拙日記「官僚たちの夏:日本の綿製品(繊維産業)の対米輸出自主規制(感想)」と重複する内容になりますが、詳しく解説します。中学レベルの数学があれば理解可能な説明ですので、我慢して読んで下さい。いま、Y:国内総生産(GDP),C:民間消費,G:政府財政支出,I:民間投資,X:輸出, M:輸入とすると、総支出面から表した国民所得は、

(1)  Y=C+G+I+(X−M)

となります。ここで、S:貯蓄とし、貯蓄は所得から消費を引いたものであるという定義を表す(2)式

(2)  S=Y−(C+G)

を変形した式

(2') Y=S+C+G

を(1)式に代入すると

Y = S+C+G
  = C+G+I+(X−M)
∴ S+C+G=C+G+I+(X−M)
∴ S=I+(X−M)

∴ (3)  S−I =X−M

となります。つまり、貿易黒字(X−M>0)は国際経済学の基礎理論の上では貯蓄超過(S−I>0)によって起きるのであり、輸出競争力で起きるのではないのです。もちろん、個別産業では輸出競争力がある産業もありますが、一方では無い産業もあり、「国全体では、輸出競争力によって貿易黒字が成り立つ訳では無く、貯蓄超過額と貿易黒字が一致する」ということになります。この貿易収支の黒字は国の(産業)競争力で決まるものではないという点が、重商主義的発想が誤りである理由になります。この辺りの発想は世間では余り理解されていないことですので、「世間知」と「専門知」との間のギャップが激しい内容になります(注)。
(注)ただし、自国通貨が基軸通貨ではない場合には、外貨保有高が不足すると輸入代金を支払えないという問題があり得ますので、この見地からの貿易黒字の必要性はあるかも知れませんが、米国の場合には自国通貨が基軸通貨ですので、この問題は、少なくとも短期的には無視可能です。

 言い換えれば、経済学の見地からは、国の競争力は、定義できないものだということになります。このことは、そのような概念の対象となる事象が絶対に存在しないということを申している訳では無く、「(他の見地から見ても、経済学上は)定義ができない」ということを意味しているに過ぎません(誤解を避けるべく念のため)。したがって、何らかの世の中の言説に遭遇した場合に、それが、真っ当な経済学徒の見解であるのか、「例えばエコノミスト等を自称してはいても、実は経済学の基礎理論に立脚していない人物」の見解であるに過ぎないかを区別して「だまされないようにする」ための切り分けポイントの中の一つは、「国に関して『競争力』の語を安易に用いているか否か」になりますただし、このようなことを踏まえた上で文脈上「競争力」の語を経済学徒が使う場合が「絶対に無い」とは言い切れませんので、この切り分けポイントは「傾向」に関する話ではあっても、絶対的な切り分けポイントではありません(誤解を避けるべく念のため)。

 ここで、トランプ大統領の対自動車工業所属企業に対する働きかけは、メキシコに工場を作らせず、米国国内に工場を作らせるというものですので、上記の(3)式においては、投資Iを増加させようとするものです。上記のOECDデータにおける投資Iや貯蓄Sが絶対額ではないため軽々には断言できないのですが、米国の貿易収支(=X−M)が赤字であるということは、米国国内では投資Iが貯蓄Sを上回る投資超過が起きていることになります。したがって、現状よりもさらに投資Iを増やそうとする政策ば、貯蓄Sの増加を伴わない限り、トランプ大統領の意図とは180度真逆の「貿易赤字が、さらに拡大する」効果をもたらす方向に作用するであろうことが、(3)式から分かるということになります(注1)。これが、冒頭で述べた予測の理由になります。
(注1)ただし、現実の経済は変数がこれだけではなく、かつ、各自動車メーカーの米国内工場増強表明が「実は以前からの計画どおりで、『作文』的にトランプ大統領に応えただけであり、その意味においてトランプ政策の影響は実は無い」旨の可能性も否定はできませんので、必ずこうなると言う訳ではなく、異なる結果になる可能性はあり得ます。実証科学のモデルに基づく科学的予測とは、「モデルにインプット変数を入れると、アウトプット変数が出て来る」類のものであり、この点で、「インプット変数が無くても結果が導き出される」占いや予言の類とは異なります(注2)。言い換えれば、科学的予測とはインプット変数(条件)抜きの予測であり、「この条件だったらこうなる」というシミュレーションには用いることは可能ですが、「想定条件はどうでも構わないから、結果だけ教えろ」という需要に応えることは、できません。
(注2)余談ながら、カール・ポパー流の(実証科学の)方法論の見地からは、いわゆる超能力としての予知能力は、実は否定されてはいませんが、逆に肯定されている訳でもない、と思います。「現時点の人類の実験・観察技術」ではこの手の現象に対しては、「反証可能な実験計画」を立てることができないため、現時点では実証科学の守備範囲ではない」というのが、最も適切な見方であろうと思います。言い換えれば、いわゆる超能力については、「現時点で人類が有する実験・観察技術の下では、「科学的好奇心の対象である」ということになります。


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