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2018年07月18日19:12

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江戸の悪PARTⅡ 後期

江戸の悪PARTⅡ。面白かったので後期展示も行きました。

前期の感想はこちら↓
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1966930311&owner_id=429476

江戸の悪公式ＨＰ↓
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/special/2018/edonoaku/

酷暑だから、いつもより人が少なかったような気がします。ゆっくり観られて良かった。

まずはイントロダクション。
歌川国芳『木下曽我恵砂路』中央に石川五右衛門。炎燃える釜で釜ゆでになりつつ五郎市を頭上高く掲げてる。沢山の野次馬が後ろで見ており、左には捕り手。三条河原の処刑の場。これは“木下曽我恵砂路”に取材した絵。赤茶の火煙の迫力が凄い。

歌川国貞(三代豊国)『東海道四谷怪談』伊右衛門が川に流れて来た戸板を引き上げると、そこにはお岩が。戸板返しの仕掛けがあり、岩の部分の紙を閉じると小平の死骸が出てくる仕掛け。歌舞伎では、早変わりでやるところね。右に直助権兵衛。左に与茂七。与茂七は財布を持って構え、権兵衛はキッと伊右衛門を見ている。伊右衛門役は仁左衛門。

月岡芳年『英名二十八衆句福岡貢』私、この絵、大好きなんだよねぇ。妖刀に憑かれた貢。女の首を斬り落とす。左下には女の生首。血濡れの妖刀を持つ貢。懐紙の舞い方が恰好良い。貢の体には血の手形が。ポージングの綺麗さな。

イントロダクションを経て盗賊コーナーへ。

同じく芳年『芳年武者无類源牛若丸熊坂長範』牛若丸が刀を振るう。ふわりと舞うように熊坂に斬りつける牛若丸。薙刀の柄でそれを受ける熊坂。グッと足に力を入れた熊坂のポーズ。空摺りの模様が入る熊坂の頭巾や牛若の袴も美しい。芳年の良さは、ポージングの恰好良さよな。現代の劇画にも通じると思う。

国貞(三代豊国)『三人吉三廓初買』右にお嬢吉三。刀を持ち火の見櫓に足をかける。中央に和尚吉三。卒塔婆を真っ二つに折り、それを両手に持って武器にして格闘中。相手をそれで叩いているらしい。左にお坊吉三。蓑を着て格闘中の和尚を見ている。周りは雪。国貞得意の芝居のワンシーンといった感じ。

同じく国貞（三代豊国）『鼠小紋東君新形』左に稲葉幸蔵（鼠小僧）。刀を持ち捕り手達と大立ち回り。捕り手の1人は、稲葉に投げ飛ばされたのか、梯子を持ちくるりと宙を舞う。捕り手達の動きが面白い。

次は侠客。
国貞（三代豊国）『助六由縁江戸桜』中央に助六。刀を持ち右にいる揚巻の方を見やる。右に意休。刀を抜き助六の刀の切っ先を凝視。助六は紛失した刀友切丸を求め、郭に通い、わざと喧嘩をふっかけ相手に刀を抜かせていた。その結果、髭の意休の持つ刀が友切丸と判明する。『助六由縁江戸桜』の水入りの場なので、後ろに水桶がある。頭上には桜。助六の名の由来は、京都島原の遊女総角（あげまき）と心中した万屋助六とも言われているそうな。

またもや芳年『天保水滸伝之内霧太郎太田原ニ於テ勢力ヲ救フノ図』夜の破れ寺（霧太郎の棲家）。中央に大岩に腰かける霧太郎。左に猿之伝治。生首を持ち首実検をしてるらしい。生首から滴る血がやけにリアル。右には仲間達。焚火が焚かれる。首実検の筋は本来の伝にはないらし。芳年の想像？

次は浪人コーナー。
歌川国貞『仮名手本忠臣蔵五段目』これ不思議な絵だった。背景がリアルで細かく重い。天保の名所絵ブームに乗った？“異時同図法”で描かれ、右には猟師となった塩治家浪人早野勘平と旅姿の塩治家浪人千崎弥五郎が街道で再開している。猟師姿の勘平はしゃがみ、それを立って見ている弥五郎。中央左では、金を狙ってニヤリ顔で追う斧定九郎。逃げる蓑笠姿の与市兵衛。怯えた顔だ。リアルな背景が浮いてて妙だった。

芳年『東錦浮世稿談神田伯勇幡随院長兵衛』長兵衛が血みどろになりながら桶の水を飲む姿。着物は血の手形で汚れ、右太腿には刀が貫通。床には血刀も転がる。これは講談が元。長兵衛は水野十郎左衛門の館で騙し討ちにあい、湯殿で殺される。ここは湯殿なのだろう。上に湯気も見える。

悪僧・悪の医者コーナー。
落合芳幾『英名二十八衆句邑井長庵』妹婿重兵衛が借金の為、娘を吉原に売って得た50両。この金欲しさに重兵衛を殺す町医者村井（邑井）長庵。村井は笠ごと重兵衛を刀で斬る。血まみれの顔で刀を握りカッと天を見て、恨み顔の重兵衛。オレンジから黄色のグラデの雷がアクセント。後ろにいるのは白狐かな。彼らは“大岡政談”の登場人物。

ここから公家悪か？権力者な悪人コーナー。
国貞『菅原伝授手習鑑（車引）』珍しい凸型の4枚続の絵。車の上の藤原時平。紫の隈取で、恐ろしげに下にいる梅王丸達を見ている。下には左から桜丸、梅王丸、松王丸がいるが、時平の眼力により動けなくなっている。でも、梅王丸は余裕で見得を切ってないか？(^_^;) 梅王丸と松王丸には赤の隈取。４枚続なので大きくてかなり迫力がある。

豊原国周『前太平記擬玉殿平親王将門市川左団次』中央に馬に乗る平将門。薙刀やデカイ金棒（かな？）を持つ。後ろに薄墨で摺られた5人の偽将門達がいる。“前太平記擬玉殿”に取材した図で、将門が６人の部下に同じ格好をさせた偽将門が登場する。６人…あれ？絵の将門1人足りなくない？(^_^;) 将門は青い隈取。将門は市川左團次が演じる。オレンジ色の雷も恰好良く、偽将門も白抜きで彫ってあって手間かかってるなと。

芳年『平清盛炎焼病之図』中央に大仰なポーズで苦しむ清盛。将門の後ろには閻魔大王がいる。左には心配そうな人々。閻魔の後ろには獄卒達。司命と司録という書記官の姿も。後ろに老人と美女の頭がついた杖（老人は現世でした悪行を言って、美女は善行を言うんだっけ？）があるのだが、美女の方は盆に乗った生首に見え、サロメみたい。きっと芳年、サロメの絵から発想したんだと思うよ。

勝川春英『七代目片岡仁左衛門の高の師直』スケベ顔の高師直（吉良上野介）がいる。悪意あるんか？ってくらいニヤリと笑うスケベ顔なのだが。五三桐の白抜きの紋の着物を着ているが、これは吉良家の紋。

歌川国芳『東山桜荘子』中央に織越大領。沢山の蛇に絡まれ、周りには亡者と物の怪達。物の怪のお局は可愛いんだケド（笑）。左右に宙に漂う2人の亡者。佐倉藩の領主堀田氏の圧政に対し佐倉惣五郎が農民を代表して家綱に直訴し、磔に処せられたという伝承があり、それが芝居になった。これは、その絵。

次は悪女や女伊達コーナー
国芳『新造檷奇談』大雨の降る土手。お梶が刀を持ち儀平次お婆を斬りつける。血まみれで抵抗する儀平次婆のお虎。“夏祭浪速鑑”を女版・江戸版にした“女団七”がこれ。元ネタとは異なり、義母のお虎はお梶に無理難題を吹きかけ足蹴にし、お梶はそれでも我慢を重ねるうちに誤って刀の鞘が走り虎を殺してしまう。殺人を犯したお梶より、お虎の方が悪者っぽいよね。この絵の梶は決意の顔にも見える。睨むお虎の迫力と描写力の凄さな。流石国芳。

芳年『新撰東錦絵鬼神於松四郎三郎を害す図』私の大好きな絵！川の中ほど。鬼神の於松が夏目三四郎に背負われる。短刀で夫の敵の夏目を殺そうとする於松。夏目は異変を察知したのか恐怖した顔。この夏目の表情が何とも言えず良い。川の描写も上手い。状況に驚き飛び立つ水鳥も効いている。後ろは山と朱と藍色の空。殺人の場面なのに「恰好良い！」と思わせる、芳年の悪魔的所業（笑）。

ところで解説読んで「あれ？」と思ったんだけど、悪婆の土手のお六も鬼神於松もどちらも蛇遣いなの？悪い女は蛇遣い？

悪の妖術使いコーナー
芳年『袴垂保輔鬼童丸術競図』縦に2枚続の絵。下に鬼童丸。紙（呪符？）を咥え印を結ぶ。鬼童丸は炎と蛇の妖術を使う。上に保輔。大蛇に絡まれるもキッとした表情で悠然と下の鬼童丸を見る。保輔は水と大鷲の妖術を使う。鬼童丸の周りには、保輔が術で召喚したのであろう水と大鷲が描かれる。これも、構図の恰好良い1枚。NARUTOにもありそうな構図。

これも芳年『鼠の贔屓三幅対』何かポップ！左に仁木弾正。右に大きく荒獅子男之助。鉄扇を振り上げている。煙と共に出てくる弾正。弾正は鼠に化け、御家転覆を狙う。弾正は一味連判の巻物を持ち出そうとするも、男之助が鉄扇で巻物を咥えた鼠を叩くとあら不思議！弾正が現れた。そして、煙と共に弾正は消えてしまう…。

国貞(三代豊国)『初代坂東しうかの瀧夜刃姫四代目中村歌右衛門の平親王将門二代目市川九蔵の大宅太郎光国』右に滝夜叉姫。行燈で中央にいる平将門を照らす。左に大宅太郎光国。手に巻物を持っている。その巻物の端は滝夜叉が握ってる。滝夜叉は将門の娘という設定。妖術が使える。場所は相馬内裏だろう。ボロボロの廃墟の館と飛ぶ蝙蝠もおどろっぽくて効いている。これは各々を役者で描いてる。国貞らしい。

さっきもあったが、悪の権力者。悪臣。
国貞(三代豊国)『見立三光之内日平清盛』テンションアゲアゲで扇を振る清盛。後ろに太陽。清盛の表情はちょっとイッちゃってる(^_^;)。神社の造営工事で陽が落ち完成が間に合わないとなった時、清盛は檜扇を翳して沈む夕陽を招き返したという伝説があるらしい。こうなると清盛も妖術遣いのようだ。色も派手でカラフルなの。

芳年『東錦浮世稿談旭堂麟翁小笹原政尾の局』無数の蛇に絡みつかれる政尾の局。政尾の局は加賀騒動を題材とする講談に出てくる浅尾のこと。浅尾は毒殺の実行犯で、数百匹の蛇の穴倉に閉じ込めれらたそうな。毒殺がバレたんだな。蛇から逃れようと必死の形相の政尾。見方によっては色っぽい絵にも見える。

楊洲周延『東錦昼夜競玉藻前』玉藻前が金毛九尾白面の狐に変わる場面。玉藻から光が放射状に出て、驚く侍女と侍。上には白い九尾の狐の姿。その狐は追い詰められ矢を受けている。これも同時で違う場面を描いてる絵かな。

芳年『和漢百物語仁木弾正直則』弾正の足元に巻物を咥えた鼠がいる。「ご主人、はい、これぇ～」みたいな感じで可愛い

　その鼠を見る弾正。弾正は印を結んでいる。術で鼠を出したのだろう。

荒々しくて強い者も悪と呼ぶ。そういう人コーナー。
歌川芳房『清盛布引滝遊覧義平霊難波討図』悪源太の亡霊が天空の中央で炎を吐き火焔に包まれている。ビームのように出る雷光。その雷光の直撃を受ける難波経房。断末魔の叫びを上げ、目玉は飛び出て（この目玉の飛び出し具合が凄い）顔は真っ青で火だるまだ。他の一行も驚いている。

前回もあった、悪玉善玉。
山東京伝／北尾政美『心学早染艸』悪玉達が、理太郎の手を引き吉原へ連れて行く。人の心の善悪を善玉、悪玉というキャラで表現したもの。可愛い。心学講釈が流行しており、これは芝居にもなった。悪玉と善玉が踊ってる絵もあった（そういう舞踊劇があったらしい）。

落合芳幾『善悪思の案内』中央に男女。悪玉が釣り針を持ち男を釣ろうとしている。他の悪玉は男の帯に紐を付け、何処かに連れて行こうとしている。周りには無数の悪玉。右には泣く子供やそれを宥める女。呆れ顔の男。中央の女と一緒の男の親族だろう。左に扇子を持つ男と楽しげな女。遊郭の関係者で、中央の男を遊郭に連れて行こうとしてるのか？ってコトは中央の男と一緒の女も遊郭の関係者か？善玉は男の着物の裾を引き、男を身内の元へ連れ戻そうとしている。健気だぁ。悪玉と押し合っている善玉もいる。芳幾って、英名～のイメージが強いから、「こんな可愛い絵も書くんだ～」って意外に思えた。
この善玉＆悪玉、キャラグッズ作ったら可愛いから売れると思う。マステとか手ぬぐいとかね。

恋と悪。
国芳『木曽街道六十九次之内鵜沼与右ェ門女房累』与右衛門が妻である累の髪を掴み鎌を振り上げ殺そうとしている。累の顔は青ざめ胸から魂が出てしまっている。累の体は川の中だ。“新累解脱物語”という馬琴の読本が典拠。ここでは、与右衛門は、おうみを復讐から殺そうとするも、おうみが着ているはずの踊衣装を累が着ており、間違って累を殺してしまう。累も与右衛門も可哀想。

豊原国周『歌舞伎座中満久皿屋舗化粧姿鏡』縦３枚続の絵。菊の幽霊が上から下にいる浅山鉄山に向かい落ちている。鉄山の家臣も驚いた様子。三枚続きの二枚を使い菊の長い体を上手く表現している（これって、セット売りなのかな？1枚目だけだと何だか分からないよね(^_^;)）。鉄山は菊をキッと睨んでる。菊は五代目菊五郎で、鉄山は菊五郎のライバルの九代目団十郎として描かれている。皿屋敷も、鉄山が菊に惚れて起こったコトだから、恋と悪なのか。

国貞(三代豊国)『初代坂東しうかの清玄尼』元祖ストーカーの清玄。それを女体化（笑）したのが、女清玄。清玄尼を演じる坂東しゅうか。破れ笠を右手に持ち微笑む。これは、実はしうかの死に絵らしい。清玄尼の頭上には蝶も飛んでいる。死に絵なら、しうかの魂かなぁ。弔い絵だからか、可愛い女清玄に描かれてた。

国芳『恋模様振袖妹背』中央に馬に乗せられ処刑場へ連行されるお七。右にお七が恋焦がれた小姓の吉三郎がいる。左に伝吉。後ろは野次馬であふれかえっている。お七を連れて行く役人が何とも悲しそうな表情をしてるんだ。馬を引く男も「気の毒に…」という顔。お七は既に覚悟を決めたのか諦観の表情。放火は重罪だが、まだ16歳の娘で、理由が「愛する人に一目会いたかった」という事情から、役人や馬引きは、悲しげな顔なのかも知れない。

豊原国周『浮名の横櫛三筋の漆絵』与三郎が蝙蝠安に金を分けている絵。安が凄く悪そうに描かれている。対して与三郎はイケメン。色悪だね。

芳年『英名二十八衆句勝間源五兵衛』薩摩藩の早田八右衛門が、大坂曽根崎新地で遊女菊野ら５人を殺害した一件は、芝居等になった。この絵の薩摩源五兵衛は菊野の手紙を前に腕を組み思案顔。手紙は血が付き、横には行燈。その後ろに菊野の生首が布に包まれ置かれている。包布からは血がにじむ。源五兵衛は菊野に振られ彼女を殺害。殺害後、菊野の手紙と生首を持ち帰り、菊野の手紙でことの真実を知る。

芳幾『英名二十八衆句げいしや美代吉』舟の上で血みどろで殺される芸者美代吉。縮緬屋新助による芸者美代吉殺しを題材とした。実説は吉田勘之助（新助）が深川の芸者みの吉に惚れ、足しげく通い勘当されるも、みの吉には既に情夫がおり、勘之助の勘当を知ったみの吉は彼に冷たく当たり、勘之助は恨んだ末、夜舟でみの吉を殺し自身は入水したらしい。2代目河竹新七が芝居にした。この絵では、美代吉（みの吉）は手を上げ断末魔の叫び。舟の屋根に隠れ、新助（勘之助）の顔の下半分が見えないのも怖さに拍車がかかる。血もリアルだ。

こんな感じでした。悪と言っても、様々。意味合いも荒々しく強いという意味もあるし。
お土産は、図録（久々に図録買った～）。葉書3枚。でも、芳年の葉書持ってたような気がする。同じ葉書が4枚くらい出てきそう(^_^;)。

魅力的な悪人に浸りたい方は行ってみるのも一興かと思います。７月29日までやっています。

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