真保裕一「赤毛のアンナ」読了。
いやあ、これは傑作! と思ったが、やはり最後の最後でちょっとだけ……。
母親が事故で死に、児童養護施設に来た8歳の志場崎安奈那は、「赤毛のアン」のようにふるまう。少し、いやだいぶ芝居がかったセリフをしゃべり、明るく、前向き。施設はそれまで暗い雰囲気が漂っていたが、アンナによって児童たちも次第に明るくなっていく。
物語は、十数年後、アンナが男性を刺して逮捕されたというニュースで始まる。
それを聞いたアンナの友人たちの視点から、過去を振り返りながら、真実を探っていく。
同じ施設で育ち、学校でいじめられていたこずえは、アンナが主導した助けによって、いじめられなくなり、アンナと同じ学校へ通うようになる。が、自分だけ養子にもらわれていったことが心苦しく、次第にアンナと連絡をとらないようになる。
高校の同級生、理世は、施設育ちを気にせず、友人の菜々美と楽しい時間を過ごすが、男子生徒との淡い恋愛が原因で心が離れ、大学へ進学すると、高校を出て就職したアンナとは疎遠になる。
アンナに助けられたリした、多くの友人が、なぜアンナが傷害事件を起こしたか、高校を出て働き始め、そして男性と付き合い、自らの過去と向き合いながら必死で生きるアンナの軌跡を徐々に見出していく。
21世紀の現代に、赤毛のアンになりたい少女の姿を、リアルに描いているのがまずスゴイ。リアリティのために、あくまで第三者からの描写にとどめること、さらに芝居がかった言動を浮かせないためにアンナの過去を重くシビアにしていること、そのテクニックがうまい。
ただ、さすがに、ラストで現実の(?)アンナがしゃべり始めると、ややリアリティが薄くなってしまう。が、非常に楽しめたことは間違いない。
今日も徒歩出勤。風は冷たいが、天気が良く陽ざしがうれしい。
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