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2015年03月02日13:59

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続(4)・川崎事件

■18歳、中1殺害容疑認める供述「暴行チクられた」
(朝日新聞デジタル - 03月02日 05:09)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=3297766

まとめ用として。なんかこの事件の検閲がやたら厳しいので、裁判実務関係のものの線だけをまとめます。


1.父親の犯人隠匿説

2ちゃんねるまとめサイトですごい勘違いが起こっているんですが、親父はふつうに犯人隠匿罪に問われます。親族特例が適用されないのは、北海道の女子高生が母親と祖母を殺害した時の女子高生の姉が犯人隠匿で逮捕され送検されたのを忘れておられることでしょう。また、こんな話もありました。

http://alfalfalfa.com/archives/7725052.html


交通事故、44歳男の身代わりで母出頭 容疑で親子逮捕

事故を起こした身代わりを母親に依頼したとして、道交法違反(事故不申告)と犯人隠避教唆の疑いで、神戸市灘区内の会社役員の男(44)を逮捕。犯人隠避の疑いで、同居の会社社長の母親(69)を逮捕した。

 逮捕容疑は、男は同日午前1時20分ごろ、中央区布引町2の県道で、信号柱に衝突する事故を起こして逃げ、母親に身代わりを依頼した疑い。
母親は同2時ごろ、事故現場に現れ「私がやりました」と署員に告げ、男の容疑を隠そうとした疑い。2人とも容疑を認めているという。

http://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/201412/0007624094.shtml


>第百五条  
>前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、
>その刑を免除することができる。

韓国の法律の場合にも似たようなものがあるんですが、免除が罰しないになっています。「罰しない」は普通は違法性または責任が阻却されるため処罰されないことを指します。つまりそもそもその行為の刑法的評価は「不可罰(無罪)」ということです。また「〜できる」とされていませんから「常に」処罰されません。
これに対し「その刑を免除することができる」はまず、「〜できる」としているので免除するかどうかは「裁量的」です。またそもそも免除が認められても、免除判決は「一種の有罪判決」とされています。というのもつまりそもそもその行為の刑法的評価は「可罰」だからです。免除判決とは「にもかかわらず」刑罰を科さないという宣言というわけです。

要するに日本は「刑の免除ができる」わけで、親族による犯人隠匿は刑法上処罰できます。にもかかわらず、裁量的に刑を科すことを免除できるのです。日本では処罰されるかどうかは公判になってみないとわからない(裁判官の裁量一つだから)ので、理論上は「逮捕」も可能、となります。

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2.少年法雑感

少年法について少し書きます。

少年法は社会が責任の一端を担っているから、というものは、不思議だと思いませんか。社会に責任を帰属させるのは簡単だけど、それは固有名に於いて責任を帰属させる者が不要、即ち誰も(加害者に於いてをや)責任を取らない無法地帯化な訳ですよ。

「自分の体で起きることを身体の所有感覚としてもてないことがあるのと同様に、自分のまわりで起きる社会的出来事を所有感覚としてもてるかどうかは自明ではない。
ときに家族は家族として感じられなくなったり、国を国として感じられなくなる。家族愛や愛国心は自明ではない。だが、責任を要求することによって、自己は統合され、自らを合理化して制御し、それを通じて組織や国家に尽くすことができるようになる。こうして、社会的責任を通じて一貫した自己が生まれる。
分人民主主義が否定するのはこうした自己の結晶化である。身体が生み出す矛盾した声を、矛盾したまま吐き出すことができれば、分人たちの新しい民主主義の可能性が顕在化する。」(鈴木健『なめらかな社会とその敵』(勁草書房、2013)P174)

個人的に「更正派」の中でも嫌いなタイプがいる。「更正」を脅迫の為に使うような輩のことだ。社会がさらにだめになる、だから被害者が踏み台にならなければならない、と。自分がその踏み台になるという可能性をゼロ査定しながら。その様な卑怯きわまりない言説をおれは絶対に認めない。?

昔、Yahoo!知恵袋で少年法の話で、少年法は「少年法で厳罰化されて社会の隅に追いやられれば暴力団に入りそしてまた誰かが被害者になる、その被害者を生んだのは厳罰化した人間だ」とする論があった。何をふざけているのかと思ったね。頭にきたので追及する気も失せた。何をばかげているのかと。隅に追いやられたらなぜ暴力団に行くと仮定しているのか??

呆れるばかりだ。?人は更正など望んでいない。?望んでいるのは、生活保護を受けてもいいから、社会に二度と顔を出さないこと、そのまま侘びしく死んでいくこと、それだけです。

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3.アリバイの効力

○刑事裁判では、アリバイを証明するものが「家族の証言」だけの場合証言は採用されません。事実上「法的に認められない」のと同じ結果になります。
○捜査段階では、警察は、家族のアリバイ証言は無いものとして対処します。

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4.酒の効力

酩酊状態にある殺人は、殺意を追認する証拠となります。
2007年12月に、酔っ払いが猟銃で近隣の人を撃ち殺すという事件がありました。

2ちゃんねるまとめサイトでは、「酒を飲んでいたら、正常な判断ができない状態にある。したがって、刑事責任は問えない」とか、「お酒を飲んでしまってからは心神喪失または心身耗弱であり、泥酔者の行為は刑法39条により罰しないか減軽する」という話が度々出ます。

この話では、人を殺そうと思って、手元にナイフを用意した上で、酒なり麻薬なりを摂取し、結果的に殺害に成功した場合、処罰できないことになり、不合理です。

原因において自由な行為という概念があります。確かに殺害行為実行時には「心神喪失」状態ではあるが、その状態を作り出した時点(酒を飲んだり、麻薬を摂取した)では、完全な責任能力があります。このような事例では、心神喪失になった原因が完全な責任能力を有して行われたので、結果的に引き起こされた自体(殺害行為)にも完全な責任能力を問うことができ、第三十九条を適用しないことになります(通例、判例)。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=50838

S43.02.27、 最三決定棄却刑集第22巻2号67頁。

「酒酔い運転の行為当時に飲酒酩酊により心神耗弱の状態にあつたとしても、飲酒の際酒酔い運転の意思が認められる場合には、刑法第三九条第二項を適用して刑の減軽をすべきではない。 」

飲酒運転であれば、例えばバス運転士が業務直前に飲酒をしたのであれば、原因において自由な行為が適用される可能性は大きい。しかし、風呂上りに酒を飲み(この時点で運転の意志は無かった)、その後友人から呼び出され運転した(この時点で心神喪失なり心神耗弱であった)のであれば、原因において自由な行為とはならない。

これを本件に当てはめるならば、痛め付ける意思を持たぬ以前に飲まなければならなくなりますが、殺害の意思を有したのは8日前です(敵対者に家を取り囲まれてから)。それはあり得ない。

基本的には、
・動機が理解できない。
・飲酒量が相当多い、嘔吐下痢が見られる。
・普段の本人の人格と乖離している。

なんてケースで心神耗弱を認めているケースがあるにはありましたが、認めていない場合も多いわけです。どうやら18のボンボンはいわゆる酒乱という人ですが、こういう人たちに対しては「酒を飲むと暴力的になることを自覚しているなら、普通の人より厳しい飲酒に対する注意義務あり」って判例が出ております。ですから、まあこの戦術でなんとかしようとは、弁護人も考えておられていないとは思いますが。何しろ弁護人も、それを知らない訳はないので、「飲酒の際には、犯行の意思はなく、心神耗弱状態に陥ってから、犯行の意思が生じたので、刑法第39条第2項の適用がある」ということなのでしょうが、それもどうかという気がします。

5.殺意の認定

これから凶器の詳細などは出てくるだろうけれども、傷害致死なんて浮ついたことだけは言わせない為に少し書いておきたい。まあ、広島の件でも認定されているから、そうはいかねぇってか。

1.創傷の部位

☆四肢以外の身体の枢要部分(胸部、頭部、顔面、腹部、頸部等)に攻撃を加え、創傷が生じた場合、人の死の結果を発生させる現実的な危険性が高いので、「殺意」が認められやすくなる。

→「上村君の首には深さ数センチに及ぶ切り傷があった」
読売新聞、川崎の中1遺体、首に深い傷…複数の刃物使用か2015年02月23日 07時14分

○もっとも、創傷の部位が四肢以外の身体の枢要部分であっても、被告人がその部位を認識して、そこを攻撃していないと、「殺意」があったとは推認できない。例えば相手から押し倒され組み伏せられた状況下(東京高判昭和29年4月28日東高刑時報5-4-147)や、襟をがっちり掴まれ首を絞められた状況下においてそれぞれ被害者の身体の枢要部分を突き刺した事案(東京高判昭和37年10月20日東高刑時報13-10-246)などで、「殺意」が否定。

→「河川敷で見つかった結束バンドは数本で一部は遺体のすぐそばにあったことも判明、殺害される前に手足を縛られ、激しい暴行を受けた可能性がある」。よってこの留意点は不要。
スポニチアネックス、川崎の中1殺害 結束バンド数本発見 遺体に複数のあざ、激しく暴行か2015年2月25日 23:59

「殺害直前に「被害者を川で泳がせた」と話していることも判明した」

【川崎中1殺害】「カッターで殺害」と供述 18歳少年、殺害直前に「川で泳がせた」
産経新聞2015.3.2 11:12

http://www.level4.jp/carp_fly/data2.htm

フォト


多摩川の2月の水温は5.5℃くらいです。どのぐらい川にいたかはわかりませんが、低体温性との兼ね合いが問題になります。

http://www.asa-japan.com/safety/hypothermia/

によれば、低体温症による、水中での「大人の」平均生存時間は、
水温0℃から5℃の疲労又は意識不明となる時間は15分から30分、水中での生存可能時間は30分から90分です。割り引いて考えてみれば、抵抗できる体力はまず残っていなかったと考えてよいはずです。殺意を追認する証拠となります。

○四肢に攻撃を加え、創傷が生じた場合は、最初から出血多量を狙って攻撃を加える場合を除けば、人の死の結果を発生させる現実的な危険性が高いとはいえないので、「殺意」は否定されやすくなる。

→リンチ殺人ではよくある話なので除外。
http://www.geocities.jp/masakari5910/satsujinjiken02.html

2.創傷の程度

☆創傷の程度は、一般的には、加えられた打撃の強さの程度又はその回数と比例する。創傷が、社会通念上、死の結果を招来する可能性が大きい程度に達していた場合は、加えられた打撃が相当強度に、又は多数回にわたってなされたと推認できるので、「殺意」は認められやすくなる。

→「顔や腕などにカッターナイフによるとみられる切り傷が多数あった上村くん。傷口の特徴などから、首を別の鋭利な刃物で深く刺されるなどしたことが直接の死因とみられ、死亡したのは遺体発見のおよそ4時間前、今月20日午前2時ごろとみられています。」
川崎・中1男子殺害、複数の刃物使用かTBS2月23日(月)11時44分

3.凶器の種類

☆刺殺の場合、相手に致命傷を負わせるに足りる形状及び性能を有する刃物を使用した場合は、「殺意」が認められやすくなる。

→腹だと、17cmも刺されば殺意バリバリです(たとえば吉祥寺強殺。ふつう、その辺に売っているナイフを人体に刺そうと思っても、普通の力では17cmも入らないわけで、一度腕を引いて思いっきり刺さなければありえない深さです)。頸椎の場合、とても本件の3名が手馴れているとは思えない(衝撃に耐えられずにカッターナイフが折れているくらいだから、よほどの力を入れている)。軟骨に刃を当てるような技術は到底持っておらず、無理矢理に深さ数センチ、頸動脈近くまで押し込んだ。

3.5.凶器の用法

☆相手に強烈な打撃を与えるため、力を込めあるいは繰り返し凶器を使用した場合は、そうでない場合に比べ、「殺意」が認められやすくなる。例えば、ナイフで刺殺した場合、利き手で刺した場合と、利き手でない手で刺した場合とでは、前者の方が「殺意」が認められやすくなりますし、ナイフが根元まで刺さっていた場合と、根元まで刺さっていなかった場合とでは、前者の方が「殺意」が認められやすくなる。

→前段の通り。

4.動機

川崎中1殺害、逆恨みが動機か時事通信社 http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=3295542&media_id=4
2015年02月28日?05:01時事通信社

川崎市川崎区の多摩川河川敷で中学1年上村遼太さん(13)が殺害された事件で、事件の約1週間前、逮捕された3人のリーダー格とされる少年(18)の自宅に数人の別グループが押し掛け、上村さんに暴力を振るったことへの説明を求めてトラブルになっていたことが28日、神奈川県警への取材で分かった。県警捜査1課などは、上村さんが暴力について別グループに話したことを少年が逆恨みし、殺害につながった可能性があるとみて、詳しい経緯を調べている。

逆恨み事件で有名なものは日本たばこ産業OL逆恨み殺人事件でしょう。
http://yabusaka.moo.jp/jtol.htm

「東京地裁・山室裁判長は「筋違いの恨みを抱き、女性を殺害した犯行は、身勝手、理不尽で刑事責任は重い」としながらも、「被告人は人間性の一端が残っており、極刑がやむをえない、とまでは言えない」と持田に無期懲役を言い渡す(求刑は死刑)。検察側は控訴した。(・・・)東京高裁・仁田陸郎裁判長は「被害を警察に届け出るという当然の行為に対する筋違いの恨みから殺害に至った犯行は理不尽の極みで、動機や計画性、結果、重大性、社会的な影響などを総合的に評価すれば、やむを得ない」と一審を破棄、死刑を言い渡した。」

この様に逆恨みは殺意認定に強く働きます。

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☆殺人の動機が存在することは、「殺意」を認める方向に働く一事情となる。具体的には、行為前後の状況、被告人及び被害者の性格、両者の知己の程度、交際関係、特にその間被告人が被害者に対し鬱憤を抱きながら長い間これを抑えていた事情があったかなど。被告人が行為当時被害者に対し殺意を抱くに至ったと考えられるような深刻な怨恨ないし憤懣の念に駆られた形跡があったか否か。
☆被告人が瞬間的に未必的な殺意を抱いた場合や、飲酒酩酊の状態にあって理性的判断が低下した場合は、動機の深刻さの程度は低くても、殺意が認められる場合も多い。

→「18歳の少年は当時酒を飲み、他の仲間が殴った理由を詳しく問いただすと「別に関係ねーじゃん」と答えたという」
中1殺害「18歳少年が刺した」毎日新聞 http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=3296191&media_id=2
2015.02.28

殺意認定に働く効果がある。

☆動機が「殺意」を認める場合の決定打になることは、実務上はあまりない。創傷の部位、創傷の程度、凶器の種類、凶器の用法を総合考慮すると、「殺意」があるとの認定に傾きかけている場合に、「殺意」を抱く動機がなかったという事情が、「殺意」を否定する方向に働く場合が多い。

5. 犯行後の行動

☆被告人の攻撃によって被害者がその場に倒れ、放置しておけば間もなく死ぬことが明白であるにもかかわらず、被告人がなにもせずに傍観したり、放置したままその場から立ち去るなどした場合は、被害者の生命に対する配慮を欠き、死の結果の発生を望んでいると推認できる。通常死なない程度の攻撃を加え、それを認識しているのに、とどめを刺さない場合や、死の結果を回避するための救護措置を取っていた場合などは、「殺意」を否定されやすくなる。

→死体遺棄。遺体を90メーター引き摺り、証拠隠滅を図っている。

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結論より、殺人の適用に疑いの余地はない。


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