［メディア 米国のいま］「興味満たすデマ番組」
◇広がる分断
◆ユーチューブ 流布の温床
米国では「ＹｏｕＴｕｂｅ」をニュースの情報源とする人が急増している。
米東部コネティカット州の小学校で２０１２年１２月に起きた銃乱射事件では、児童２０人を含む計２６人が犠牲になった。
当時６歳だった長男を失ったレニー・ポズナーさん（５０）は、「今も心の傷が癒えることはない」という。
事件は「でっち上げ」で、我が子を奪われ悲嘆に暮れる親たちは「俳優による演技だった」などと、遺族感情を逆なでする事実無根の批判が後を絶たないからだ。
インターネットサイト「インフォウォーズ（Ｉｎｆｏｗａｒｓ=
https://www.infowars.com/）」は、こうした根拠に基づかないデマを「ニュース」だとして報じてきた。
サイトを運営するアレックス・ジョーンズ氏（４３）は、動画投稿サイト「ユーチューブ（ＹｏｕＴｕｂｅ）」に専用チャンネル（
https://www.youtube.com/user/TheAlexJonesChannel?hl=ja） を持つ。
番組はスタジオ内のセットで収録しており、見た目はまるでニュース番組のようだ。
だが、乱射事件は「銃規制の強化をもくろむオバマ政権の謀略だ」と論評するなど、荒唐無稽な内容は報道とはほど遠い。
首都ワシントンにあるピザ店が、昨年の大統領選で民主党候補だったヒラリー・クリントン元国務長官が関与する児童売春組織の拠点だというデマを、繰り返し主張したのもジョーンズ氏だった。
昨年１２月にはデマを信じた男が自動小銃を持って店に押し入る事件に発展した。
ポズナーさんは、「自分が当事者になるまでは気付かなかったが、米国ではユーチューブなどで、こうした『曲論』の勢いが明らかに増している」と憤る。
曲論とは、ありもしないことを事実であるかのように主張することだ。
◇
ニューヨーク・タイムズ紙は今年８月、ジョーンズ氏の番組を例に、「ユーチューブは『曲論』をふりかざすサイトの温床となりつつある」と警鐘を鳴らした。
懸念が高まるのは、米国ではスマートフォンの普及で、ニュースの情報源を新聞やテレビなどではなく、フェイスブック（ＦＢ）やツイッターなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス（ＳＮＳ）や、手軽に動画を共有できるユーチューブなどのサイトとする人が増えているからだ。
調査機関ピュー・リサーチ・センターの今年８月の調査によると、ユーチューブでニュースを得ていると答えたのは利用者の３２％で、前年から一気に１１ポイント増えた。
ツイッターを上回り、ＦＢに次ぐ２位となっている。
ワシントン・ポスト紙のマーティー・バロン編集主幹（６２）はジョーンズ氏を名指しして、「フェイク（偽）ニュースを流し続ける存在だ」と語気を強める。
それでも、ユーチューブに開設されたジョーンズ氏のチャンネル登録視聴者数は今や２００万人以上。
トランプ大統領も影響を受けているとされ、就任前の１５年１２月には「番組は素晴らしい仕事をしている」と同氏にメッセージを寄せた。
◇
問題の背景には、自分に都合のいい事実しか信じないという傾向が、米国内で強まっていることがある。
米ネイバル・ウォー・カレッジ教授で作家のトム・ニコルズ氏（５６）＝写真＝は、「メディアの選択肢が増えたことで、多くの人は新聞やテレビのニュースより、事実ではなくても自らの興味を満たす情報にしか関心を払わなくなってしまった」と嘆いた。
ニューヨークの公共ラジオＷＮＹＣの人気番組「メディアについて」のキャスターを務めるブルック・グラッドストーンさん（６２）は、新聞やテレビには、デマや虚報から社会を守る「防波堤」の役割もあるとして、ニュースの担い手にこう呼びかける。
「メディアの責務は実直、正確かつ公正に事実を伝えること。フェイクニュースだから、曲論だからと無視せずに、もっと積極的にそうした存在を否定すべきだ」
（2017年12月2日読売新聞）
「ゲリラ・ジャーナリスト」が日本に上陸する日
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=40&from=diary&id=4903058
（2017年12月14日 08:23 ITmedia ビジネスオンライン）
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