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2017年07月17日21:10

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マスターができるまで 久々 1381

俺が
『どしたん
先に帰ったんじゃねかったん』
と言うとカワタカはニヤニヤ笑いをしつつ
『あがなバカ、相手にしとれん
ソフトやこ子供っぺいわ』
と言った。
俺が
『ふうん』
と頷き、
『よう言うわ。
自分じゃってレモンの店でジュース飲んどるくせに
レモンの店なら大人で、かっさんの店なら子供っぺいんか?』
と言うとカワタカは
『レモンの店って、、、
誰から聞いた。
そがなはなし。』
と少し慌て、
『どうせミツヒロあたりからじゃろ
そうじゃろ!』
と早口でいった。
俺はその言い方からミツヒロのはなしは本当なんだなと思った。
俺が黙っていると
『そがな事より、ボロさん、さっき見とったろ』
と、声のトーンを落とし、カワタカが俺に迫って来た。
レモンの店の事ばかり考えていた俺は、カワタカの言っている事がすぐには理解できなかったが、すぐさま理解でき
『え?』
と聞き返した。
俺は狼狽の極になった。
それは更衣室での事をさして言っているのだった。
俺は
『バカいいね!
見とらんわ。』
と抵抗し
『あんたこそ、見られたかったんじゃろ
じゃからこそああやって隠しもせずに着替えたんじゃろ』
と逆襲した。
カワタカは
『ふふん』
と笑った。
『ご大層にぼっけい毛が生えとったがな
それが自慢じゃったんじゃろ』
とさらにはなしを継いだ俺は自ら語るに落ちた。
カワタカはそれがクセの、口の片方だけを持ち上げる笑いかたをし
『ほーん
見とりもせんもんがよう知っとるな
俺のチン毛の事
そんなに多かったか、俺のチン毛?
ボロさんの好みか?俺のチン毛』
と言った。
俺はカワタカ自らの口から出た「チン毛」という言葉に、サトシなどが口にする以上の陰微さを感じ、
『やめねぇ
チン毛、チン毛ばぁ言うて
ええが、そがなはなし』
と遮った。
カワタカはポンと俺の肩を叩くと
『そがな事より、な、
久しぶりにアレ、せんか?
ボロさんじゃって、やりたかったんじゃろ?
俺はバリバリしたかったよ
じゃから、今度の日曜、「あそこ」で待っとるわ』
と言った。
俺が
『え?』
と聞きかえすよりはやくカワタカは
『ほな』
と言い、身を翻し去って行った。
俺はしばらく動悸が収まらなかった。
いきなりのお誘いだったからだ。
もうないと思っていたお誘いだったからだ。
俺の動悸が収まったのは校庭の向こうから下級生が俺を呼んでいる声が聞こえてきたからだった。
みると俺の足元にボールが転がっていた。
下級生はしきりに
『お願いしまーす』
を繰り返していた。
いつから呼びかけていたのか判然としなかったが、ボールは少し前から俺の足元にあったに違いなかった。
下級生達に我の狼狽を悟られたような気分になった俺は
『なんでぃ
アンタら』
と言うとこれ以上ないという下手な蹴りかたでボールを彼らの方に蹴った。
蹴られたボールは、ようやく盛りの過ぎはじめた夏空の下、彼らとはほど遠い位置に向かって飛んで行った。
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