思いがけない事実
移動のため車に乗り込むや否や、開口一番、課長の口から
「なんでウチの会社を希望したの?」との問い
オレは慌てて、面接の時に言った言葉を思い出そうとした。
オレが直ぐに答えられずにいると
「俺は本社のお偉い方や人事の人間じゃないから、気にしない!」
「俺が察するところ、とりあえず就職したいの一念で何社か応募してたら、たまたまウチの会社に採用になった。そんな感じだろ?」
課長の言葉は核心を突いていた、ズボシだ。
高卒の37歳で、突起した資格や実績も無い、高望みは出来ない
それでも、社員としての採用だ文句は言えまい。
その事を課長に話すと
「はぁ?社員?契約社員だろ?」
「そうですよ、でも【正社員登用あり】と求人誌には書いてありましたよ」とオレは言った。
すると課長は「俺、長年この会社に居るけど、中途採用から正社員になった人間はいないよ」
そして「それに俺も契約社員だから」と付け加えた。
はぁ?課長なのに契約社員??そんなのあるのか??? オレは驚きを隠せなかった。
「まぁ、俺はプロ野球選手と一緒だから」と笑って言った。
? オレは全く理解できなかった。
そして課長のこれまでの経歴を聞く事になるのだ。
課長は東京の某名門大学を中退。その後、東京の企業に採用され働くが
上司と反りが合わず退社。地元の大阪に帰りバイトを転々とする。
そして今の会社に出会い、現場スタッフ(アルバイト)で働きだす。
そこで頭角を現し、1年後には契約社員になるのだ。
契約社員となって、しばらくすると会社の内情が見えてくる。
新卒でなければ、契約社員から正社員になれない事や
正社員でも、思っていた程の給料を貰ってない事など。
そこで課長は、社長と直談判する事にし
自分の待遇や賃上げの交渉をしたのだ。
そして課長の肩書きと、正規雇用の役職くらいの賃金と待遇を獲得するのだ。
当時、会社で契約率NO.1だった男の成せる技だ。
しかし会社も抜け目は無かった。
雇用契約の更新を毎年にして、給料は年俸プラス、出来高払い。
まさにプロ野球選手と一緒だ。
そんな話をしながら家電量販店まわりは続くのだが
課長の口から出てくる情報は、オレを不安にさせる事ばかりだった。
この日、一番ショックだったのは【正社員になれない事実】を知った事だった。
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