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2017年09月24日10:21

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お彼岸とキツネの嫁入り

 お彼岸前後、郊外の田んぼや土手のあぜ道には、彼岸花が咲き乱れる。色は主に朱色だけれど、白い花をつけるものもあり、近年では黄色の花も見られる。それまでは何もないところに、いきなり茎が生えてきて、花をつける。葉は冬になると出てくるのだけれど、春先には枯れてなくなるので、私たちが知る彼岸花は文字通り、花そのものということになる。

 この彼岸花が物語を演出するものとして登場したのが、新見南吉の『ごんぎつね』である。登場人物のひとり、兵十の母親が亡くなって、墓地に行くところに彼岸花が咲いているという描写がある。昔は、婚礼も葬式も家で行っていたから、婚礼に向かう花嫁行列、墓地に向かう葬列と、人の生き死には家を行き来する人の列があった。
 婚礼も、花嫁は白無垢姿だけれど、葬儀もかつては白装束も一般的で、『ごんぎつね』でも白い着物姿の葬列をごんが見送っている。私もさすがに、そのような婚礼や葬儀に参加したことはないけれど、いつのことだったか、あぜ道を歩く葬列を見たことがある。田舎や郊外の集落では、まだ一部そうした風習も残っているのかもしれない。

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 ここでは、「キツネの嫁入り」を文字通り、キツネが嫁ぐ行列と捉えているけれども、私の郷里では同じ表現で、天気雨のことをそう言っていた。陽射しがあるのに、パラパラと雨が降っている様子を「どこかでキツネの嫁入りでもしているのかしら」という風に言うのである。

 どうやら、「キツネの嫁入り」といっても各地で意味合いが異なるらしい。といっても、東西でくっきりと違いがあるわけでもないらしく、これを婚礼という地域は、東北から北陸、関東、甲信、東海、近畿、山陰にもあるようだ。一方、天気雨は関東から西の各地でそう言うらしい。東北や北陸が少ないのは、曇りの日も多くて冬には雪が積もりやすいという気象条件も関係しているのかもしれない。

 もちろん共通するのは、キツネを化かすものという意味合いと同時に、どこか神聖な存在として扱っている点だろう。キツネは妖怪としてだけではなく、神や神の眷属(従者)と位置づけられてもいる。どこか美しく、儚いイメージもある。
 これがタヌキだと、単にバケモノ扱いが専らなのだから、見た目というのは大切である。キツネと比べると、タヌキはその昔、人家にもよく表れていたから、それほど神聖視されなかったのかもしれない。もちろん、神として扱う地域もあるのだけれど。

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■キツネ顔で嫁入り行列 岐阜・きつね火まつり
(朝日新聞デジタル - 09月23日 23:44)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=4780418
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