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2015年12月09日11:36

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book『チェルノブイリの祈り/未来の物語』(ズベトラーナ・アレクシエービッチ)

ズベトラーナ・アレクシエービッチ著(松本妙子訳)『チェルノブイリの祈り/未来の物語』(岩波現代文庫)を読んだ。この本は1911年3・11原発事故の直後に岩波現代文庫に入り、刊行(再刊)されて、買っていたが、話が重そうで読めずに置いていて、忘却していた。今年の夏にノーベル文学賞を著者のズベトラーナ・アレクシエービッチさんが受賞したので、記憶が蘇った。受賞当時、この本とそれ以外に数点翻訳が刊行されていたが、みんな品切れであったことを知り、日本の出版文化の貧困を感じた。このたび読み終えて、3・11後に読んでおくべきだったなと思った。著者は、1986年のチェルノブイリ原発事故の遭遇した人々の悲しみと衝撃をたくさんの人々の証言を丹念に聞き取ることによって浮き彫りにしている。本の中に登場する人々の声に引き寄せられ、さまざまな感慨が浮かんでくる。そんのいくつかを引く。「大惨事以上のものです。(中略)チェルノブイリ後、私たちの住んでいる世界は別の世界です。」「チェルノブイリは戦争に輪をかけた戦争です。人にはどこにも救いがない。太地のうえにも、水のなかにも、空のうえにも。」「発つ前に僕らは警告を受けた。国家の利益のために、見たことをいいふらすなと。」(「兵士たちの合唱」)「私が知る必要があったのは、娘の異常が私たち夫婦のせいじゃない、ふたりが愛し合ったせいじゃないということなのに。(こらえきれずに泣く)「最初の撮影は村の集会所でした。舞台にテレビが置かれ、住民が集められた。ゴルバチョフが演説するのを聞いていました。『すべて良好、すべて制御できている。』僕らはゴルバチョフが演説するのを聞いていた。」(映画カメラマン)こんな感じで長い聞き書きが続く。実に著者はすごい人だ。ベラルーシでジャーナリスト活動をしていた著者は、ルカシェンコ独裁政権の圧力や言論統制を避けるため、2000年にベラルーシを脱出し、西ヨーロッパを転々としたが、2011年には帰国し、今年ジャーナリストとしてはじめてノーベル文学賞を受賞したとのことだ。フクシマ後に生きる私たちにとって、ぜひ読んでおきたい本だと思う。
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