天才的な戦略で大胆な仕掛けをくりかえす冷徹な女性ロビイスト…いまこういう役柄を演じきれるハリウッド女優は、ジェシカ・チャスティン以外に誰もいないと確信した。このところは宇宙船に乗ることが多かった彼女、スーツをきめてさっそうとオフィスを歩くすがたはこのうえなくクール。今回演じたエリザベスは架空の人物ながら、実際の事件をベースにした社会派サスペンス。
タイムリーというべきかどうか、ラスベガスで悲惨な乱射事件が起きてすぐの日本公開。そう、エリザベスは所属するロビー会社が銃擁護団体と組むことに反発、部下を引き連れて飛びだし銃規制法案を可決するためにさまざまな仕掛けをたたみかける。銃社会アメリカをめぐっての攻防、この部分をもっと見たかったのは時節柄というやつかも。
後半に進むにつれて、さまざまな裏切りや暴露がくりかえされ、エンディングに用意されたいくつかの逆転劇はかなりの緊張感。ただアメリカの司法に関する基礎知識や、ロビイストという仕事の職域というか権限みたいなものをもっとよく掴んでいたら、ひとつひとつのセリフの切れ味や、ラストに待つどんでん返しの爽快感をよりいっそう味わえたような気もする。
それにしてもアメリカ映画におけるこの手の主人公が口にするセリフ、引用するたとえ話とか、ちょっとしたジョークとか、どうしてこうもカッコいいのだろう。もちろん何度も練られたものとはわかっているけど、そのエッジの効いたセリフの波状攻撃をいつまでも浴びていたいと、なにやらマゾヒスティックな気持ちにさえなった、エリザベスのクール・ビューティーぶりでした。
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