兵庫県出身でベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団のコンマスである日下紗矢子さんが
同楽団の仲間たちと凱旋公演です。是非聴きたい曲が３つもありまして参りました。
コンサートマスター＆ヴァイオリン独奏：日下紗矢子
ヨハン・パッヘルベル(1653受洗〜1706埋葬)作曲
カノンとジーク ニ長調
パッヘルベルのカノンは、とてもポピュラーな音楽で結婚式に使うカップルも居る。
Ｖｃの前奏にＶｎ１が提示した旋律をＶｎ２、Ｖａが追いかける３声のカノンとなっている。
３階から見ていると、その追いかけっこが、よく分かって面白い。テンポは速い。
ジークはイギリス起源の速い舞曲でバロック時代の組曲の基本要素の一つ、とプログラムノート
にあるが、そんな事を考える間もなく終わった。
アントニオ・ヴィヴァルディ(1678〜1741)作曲
ヴァイオリン協奏曲集「和声と創意への試み」第１集Ｏｐ．８より「四季」
コンサートの表題にもなっている曲。好きな曲で今回、２回目の生演奏。
秋の第２楽章がチェンバロのソロになっているのが今回の驚き。
テンポは本曲も速い。チェロとソリストの絡みに注目して聴いて欲しい、とプログラムノートに
あったが、成程あった。
茂木大輔さんが「春」の第３楽章 田園舞曲をパストラールな音楽という点に注目して先月、
本ホールで解説された。本曲も雷が鳴り、嵐が吹いて羊飼いが登場する点から共通の下地を
持つ音楽だと考えた。全12楽章、演奏時間は40分。
休憩
サミュエル・バーバー(1910〜1981)作曲
弦楽のためのアダージョＯｐ．11
アメリカの作曲家バーバーの代表作。原曲は弦楽四重奏曲である。そこにＣｂを加え、
今回は12名の室内合奏団での演奏である。追悼の催しでの定番曲となっているから「悲しい
音楽とされているが、それは各々の人の受け取り方ではないか」とレナード・スラットキンさん
は仰っていたけれども原曲の弦楽四重奏曲がロ短調で書かれている事、本曲も変ロ短調
である事を鑑みると追悼曲として書かれた訳ではないにせよ、聴衆が悲しい音楽と受け取る
のも至極当然かと思う。しっとりと聴かせて頂いた。名演。
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840〜1893)作曲
弦楽セレナード ハ長調Ｏｐ．48
チャイコフスキーが「モーツァルトへの愛情による内面的衝動」で1880年に作曲。ロシア音楽
の大家なのにヨーロッパ風な音楽だ、とロシアでは言われたという由縁。
小澤征爾さんが本曲を室内楽的な曲だ、と評したが改めて室内合奏団が演奏すると成程と
思う点がある。モーツァルトのセレナードは、かのアイネクライネを含めて大編成のオケを
想定して書かれていない。それに明らかに影響された本曲も同じ事である。
４つの楽章がバラバラでも演奏されるが、通しで聴くと終楽章で第１楽章の序奏が回想され
実は統一感を持たせている。
アンコール
シベリウス作曲
アンダンテ・フェスティーボ
一昨年はシベリウス・イヤーで、たくさん聴いたけれども、これは初めて。言われなければ
分からない。
ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756〜1791)作曲
ディヴェルティメント ニ長調Ｋ．136より第３楽章
モーツァルトの曲だ、というのは、すぐに分かったがＫ．136が出て来なくて、私はまだまだ修行
が足りない、と思った。チャイコフスキーが弦楽セレナードに限らずモーツァルトを尊敬
していたのは知られた話。四季を聴いた時に生演奏を聴いている。この曲目だと音楽的に
突出しない。好きな作曲家なので得をした気分。
13名と少数精鋭の演奏であったが何が良かったか、と言えば呼吸が合った演奏であった事。
であるからか１・２階席は完売であった。
終演後は日下さんがサイン会に応じて下さり、私はバーバーの弦楽のためのアダージョと
大バッハのゴルトベルク変奏曲、シューマンのピアノ四重奏が収録されたＣＤのジャケットに
各々サインして頂いた。
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