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2018年10月20日09:48

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安冨歩の『星の王子さま』論

読書の関心の中心が経済学にあった頃、森嶋通夫は特に興味を持っていた学者の一人だった。「マルクス」「リカード」「ワルラス」「ケインズ」など巨匠たちの諸理論を動的な一般均衡論の視点から統合しようという試みは、浅学の僕にとっても魅力的なものに思われた。
その森嶋の著作の多くは英語で書かれており、その日本語版は、森嶋自身によってではなく、より若い経済学者たちによって訳されていた。そうした訳者の中に安冨歩がいた。

最近になって、『誰が星の王子さまを殺したのか―モラル・ハラスメントの罠』(明石書店・2014年)という本を読んでいる。著者は安冨歩。経済学とは関係の無い本なので、同姓同名の別人だと思っていたが、著者紹介欄を見て同一人物だと知ってビックリ!

彼(と思っていた同氏)について少し調べてみて、更にビックリ!!
この本の著者として出てきた人物が女性(に見える方)だったのだ。
たしかに、「安冨歩」という名前は、女性であったとしてもおかしくはない。
しかし、同姓同名で、ひげ面のオジさんの写真も出てきたりする。

もう少し調べてみて、更に更にビックリ!!!
ウィキペディアに書かれた「エピソード」によれば「2013年より性自認が女性に近いことに気づいて以来、女性装して過ごしており、テレビ出演もしている」とのこと。

なかなか個性的な方のようだ。

性自認は(「趣味」ではなく)「個性」の範囲内の問題だと思うが、彼(彼女?)が展開する「モラル・ハラスメント論」には、個性的な見解と言うだけでは収まらないものを感じている。
安冨の論旨は、以下に自身によって要約されている。

◆星の王子さまは「モラハラ」で殺された!?
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/47704

「私の見るところこれ[=『星の王子さま』]は、家庭内における女性による男性に対する「モラル・ハラスメント」が主題であり、さらにそれを助長するおせっかいやきの外部者による「セカンド・ハラスメント」によって、王子が自殺に追い込まれる物語なのである。」

この安冨の主張について、僕は全面的に賛同できるわけではないが、貴重なものだとも思っている。特に、『星の王子さま』に描かれた男女(夫婦)の問題について考えるとき、晩年の著者サン=テグジュペリが抱えていたであろう苦悩について考えるとき、安冨の主張は示唆に富むものであり、また説得力もある。

ただ、「モラル・ハラスメント」を『星の王子さま』における唯一の主題であるかのように論じる安冨の姿勢には、賛同できない。『星の王子さま』には「中国とアリゾナ」問題をはじめとして、戦争論としての側面もある。この点については、あらためて論じてみたい。

安冨の「モラル・ハラスメント」に対する固執・執着には、尋常ならざるものを感じる。あえて言えば、それは「異常」ですらある。しかし、ある種の異常さを抱えた者にしか到達しえない「独創」というものもある。安冨の『星の王子さま』論には、そのような「独創」があることは認めざるを得ない。

今回、あらためて「安冨歩」について調べてみたら、Twitterで「歩」に「あゆみ」という読み仮名が振られていた。僕はずっと「あゆむ」と読むのだと思い込んでいたのだが、なるほど「あゆみ」と読むこともあるだろ。しかし、気になって見てみたら、2014年に出版された『誰が星の王子さまを殺したのか』の巻末の「著者紹介」では「あゆむ」となっていた。性自認が変わった頃から、名前の読み方も変えたのだろうか。

◆安冨歩(やすとみ あゆみ)@anmintei
https://twitter.com/anmintei?lang=ja

◆“女性装の大学教授”安冨歩、独自の人生観とは
https://www.oricon.co.jp/special/48158/
◆女性装の東大教授が明かす、この国の「病理の正体」
https://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/47501
「自分自身が「エリート」であるにもかかわらず展開する痛烈なエリート批判と、その装いによって視線をあびる安冨だが、彼は最初から現在のような自由な人生を歩んで来たわけではない。彼の人生には長い間、家族から植え付けられたと脅迫観念がつきまとっていた。」
◆女性装の東大教授が見つけた「新しい家族」のカタチ
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/47522

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