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2018年05月18日01:00

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2018年 5月 7日(月) バイエルン州立劇場 「ルクレツィア・ボルジア」

カールスルーエ中央駅10:05発のIRE19037で10:58にシュトゥットガルト着。11:13発のICE 593に乗り継ぎ13:27ミュンヒェン中央駅着。カールシュタット地下で食事をとって、アラベラパークのシェラトン・アラベラパーク・ホテルにチェック・イン。
演出 クリストフ・ロイ、美術、ヘンリック・アール、衣装 バーバラ・ドロシン、照明 ヨアヒム・クライン、指揮 フリードリッヒ・ハイダー。配役 ドン・アルフォンソ フランコ・ヴァッサーロ、ドンナ・ルクレツィア・ボルジア エディタ・グルベローヴァ、ジェンナーロ ホアン・ディエゴ・フローレス、マフィオ・オルシーニ テレサ・イエルヴォリーノ、ジェッポ・リヴェロット ジョシュア・オーウェン・ミルス、ドン・アポスト・ガゼッラ クリスチャン・リーガー、アスカーニオ・ペトルッチ アンドレア・ボルギィーニ、オロフェルノ・ヴィテロッツォ マシュー・グリルス、グベッタ アレクサンダー・ミレヴ、ルスティゲッロ ディーン・パワー、アストルフォ カラム・ソープ、プリンチペッサ・ネグローニ Annika Bystrzycki。
開演19:00。席はパルケット10列目385番。€163.00。このプロダクションは2009年9月に一度観ている。その時はジェンナーロがパヴォル・ブレスリク、マッフィオがカルメン・オプリサヌで、ルクレツィアとドン・アルフォンソは今宵と同じだった。
プロローグ。ヴェネツィア。すでに幕は上がっており、黒の上下、ただしズボンは膝まで、を着た若者たちがたむろしている。その中に実に陰気な顔をしたジェンナーロがいる。最初この男がフローレス演じるジェンナーロだとは気づかなかった。それほど今までの彼の明るい顔とは異なった暗い顔をしていた。9年近く前に観たときにはジェンナーロはこんな暗い顔をしていなかった。演出が変わったのだろうか。やがて彼らはルクレツィァに対する憎しみを歌う。リミニの戦いで瀕死のマフィオをジェンナーロが助け、二人は共に生き、共に死のうと誓い合ったとマフィオは皆に話す。ジェンナーロだけは特にルクレツィアに恨みを持っておらず、彼らが去り一人になるとそこに横になって眠りだす。そこに真っ赤なドレスのルクレツィアが後ろのドアから登場し慈しみの表情で彼を観る。それをドン・アルフォンソの手下が。グルベローヴァは美しいピアニッシモで歌い出す。ピアニッシモのコントロールは素晴らしいが、以前に比べるとこねくり回しすぎだ、やがてジェンナーロは目を覚まし、ルクレツィアと手をつなぐ。そして自分の身の上を語り始める。その間に彼は転び膝小僧をすりむいてしまうと彼女は優しく自分のハンカチを取り出し手当てする。この間グルベローヴァは以前とは比べ物にならないほど小さい声だが、昨年の日本でのあの貧弱なフォルテッシモ(フォルテとも呼べないか)とは比べ物にならない声量で歌った。日本の聴衆は本当に井の中の蛙だ。たくさんの歌手に騙されている。と言うか高名な歌手が出てくると盲目的に拍手喝さいする。そろそろ自分たちの馬鹿さ加減に気付いてほしいものだ。話がそれたが、気が付くと先ほどの若者たちが周りにたむろしている。そしてマフィオを先頭にルクレツィアに自分が何者か名乗る。彼らは彼女に危害を加えそうになるのでジェンナーロは彼らに警告する。ルクレツィアは無事逃げおおせる。
第1幕。フェッラーラ。アルフォンソが小さな机を、家臣ルスティゲッロが椅子が持って登場。この舞台は全幕を通じ後ろに「Lucrezia Borgia」とイルミネーションの光る文字を持つ壁があるだけである。ルスティゲッロからのルクレツィアが若い男との逢瀬を重ねているとの報告を受け、アルフォンソは2人の仲を疑っている。このフランコ・ヴァッサーロがすごい迫力だ。
若い連中がジェンナーロはルクレツィアに恋したとはやし立てる。それにカッときたジェンナーロはこともあろうにエステ家の壁にある「Lucrezia Borgia」という表示から「B」をはぎ取る。これで「Orgia」となってしまうが、この意味は「乱痴気パーティー」、「乱交パーティー」はてや「レイプ」などと言うものである。
場面は変わりルスティゲッロが3脚の椅子を持って登場。続いてアルフォンソとジェンナーロ。そしてルクレツィアは自分の家名が汚されたと猛烈な勢いで登場し、犯人の死罪を要求し、公爵はあっさりと同意する。そして反対側に座っていたジェンナーロの新聞を取る。驚愕するルクレツィア。にんまりするアルフォンソ。彼女は何とかジェンナーロを助けようとするが、彼が自分はうそをつかない、自分がやったと進んでいうのでどうしようもない。アルフォンソはルクレツィアに「毒か剣か」と迫るので彼女は剣を選択する。血を流したジェンナーロが連れてこられる。そして和解のしるしとして彼は毒入りのワインを飲まされ、アルフォンソは勿論毒の入っていないワインを飲む。アルフォンソが去るとルクレツィアは解毒剤を飲ませ、すぐにこの町から立ち去るように告げる。(幕=休憩)
第2幕。難を逃れたジェンナーロは今夜中にフェッラーラから逃亡しようとしている。そこにマフィオがやって来てネグローネの宴に一緒に行こうと誘う。彼は宮殿での一件を告げ、身の危険を訴えてマフィオの誘いを断る。しかし彼に「共に生き、共に死のう」と誓い合ったことを持ち出され、また彼が夜明けには一緒にヴェネツィアに立とうと言うのでつい彼の誘いを受けてしまう。ネグローニはこのプロダクションでは少女だった。マフィオはグベッタと悶着を起こすが、皆になだめられて平静を取り戻す。そしてグベッタがシラクーザのワインだと言って若者たちにグラスを配る。ワインを一気に飲みほし、グラスを後ろに投げ捨てるとマフィオは「Il segreto per esser felici」と乾杯の歌を歌う。そして「Non curiamo l’incerto domani」という静かな合唱が聞こえて来、若者たちに戦慄が走る。マフィオは歌い続けるが、次第に異変に気付く。やがてトーチも消え、皆が逃げようとすると扉には鍵がかかっていて逃げられない。そこにルクレツィアが入ってくる。まさかジェンナーロがやって来るとはつゆにも思っていなかったルクレツィアはヴェネツィアでの恥辱を晴らそうと若者たちに毒入りワインを飲ませたのだ。彼女は何としてもジェンナーロを救いたいと思う。解毒剤は彼の分しかないという。ジェンナーロは全員助かるのでなければ、皆と一緒に死ぬという。彼女は彼がボジア家の人間だとあかし、早く飲むようせっつく。遂に彼女は彼の母だと明かすが、ジェンナーロは友人たちと共に死地に旅立つ。ルクレツィアは彼の上着を握りしめ、「Era desso il figlio mio, La mia speme, il mio conforto」と、アルフォンソたちの前で彼が息子であったこと、自分の希望、自分の慰めであったことを歌う。そしてかつらを脱ぎ退場する。(幕)21:45
やはり彼女の超絶技巧はすごかった。既に述べたように少しひねりすぎと言う感は否めないが。そして往時ほどではないが、声量もかなりあった。いったん暗転し、彼女のみ登場すると大歓声だった。一方ホアン・ディエゴ・フローレスのジェンナーロよりは以前見たパヴォル・ブレスリクの方が適役だと思った。ただし昨年のザルツブルグ音楽祭での演奏会形式でのジェンナーロは良かったので、指揮者と演出家のせいであまり満足できなかったのかもしれない。マフィオを歌ったテレサ・イエルヴォリーノも悪くなかった。
原作には忠実であるのだが、どういうわけかこのプロダクションは好きになれない。舞台美術と衣装のせいもあるだろう。グルベローヴァのミュンヒェンでの歌いぶりを確認できたのは成果であった。
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