東京海洋大で荒俣宏さんが講演をするというので行って聞く。
現代ではあまり知られていない博物画家「伊藤熊太郎」展の講演だったのだが、荒俣さんが講演用に作ってきたパワポデータを、講演の直前に間違って消してしまったとのことで、ほとんど即興でのお話でした。
が、そんなトラブルがあってもさすがの博覧強記、お話がめちゃくちゃ面白い。
たとえば、博物画と絵画は違うのか、どこからが博物画なのかを、伊藤若冲や平賀源内、シーボルトコレクションの中の「鯛」の絵に着眼して並べていったり(そういう観点で江戸期の絵を見たことはわたしゃついぞなかったよ)。
たとえば、展覧会の主題である「伊藤熊太郎」という人は明治期にアメリカの海洋調査に参加した人なのだが、熊太郎が関わったであろう国内の同時代の有名無名の博物画家やアメリカの博物学や海洋学の著名な人々のエピソードが語られたり。
(エピソードは最後にはずっと時代を下り、ビキニ環礁の話にも展開する)
さすがの博学、博学というか連想雑学の王様みたいな人のお話は、話がどんどん広がり、時間がいくらあっても足りないような感じでした。
そもそもこの「伊藤熊太郎」というひとの博物画が多数海洋大に残っているというのは、つい先日荒俣さん自身が見つけたそうで、まだまだまったく詳しく調べられていないとのこと。
「人生の1/3くらいどうでもいいことで浪費してもいいという学生さんがいたら資料調査をしてください」とのことを、人生の2/3くらいどうでもいいことで浪費していると自身認めてる荒俣さんはおっさっていました。
まあ、でも、キチンとひとつのことを研究している、ちゃんとした研究者ではない荒俣さんならではの発見なのだろうなぁと思いました。
ちゃんとした研究者は、ぶっつけで、空想した「伊藤熊太郎」が辿った人生のイマジネーションを、おおやけの席で言ったりしないもん。
やー、楽しかった。
「伊藤熊太郎」のこの後の研究の発展にも期待です。
人生の2/3くらい、この人にぶっこんでみる価値がある気もします。
(というか、不老不死が手に入ったら、世界中のひとの物語に人生の2/3くらいまんべんなくぶっこんでみたいですな、などということをあらためて思いましたよ)
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