歯から牙が生えてくるこない
つむった芽を見開いては待った
棘のある空気感浴びて月を呼んだ
なまえの思い出せない夜
きみの声から膨らみだす虹を
渡ろうと脚をもつれさせては
疾風のように渡る風に巻きついた
もうどこへも行けないいける
真空のゆりかごをゆらすのはいつ
呼吸をしている
なぜだろう
呼吸をさぼってしまえないのは
風船が中で息づいている
どんなふうにきみは
呼吸をしているのか見せてほしくて
しぼんだ朝に水をかけては
存在が悲しくてねむりたい
車輪がきしんだ音を立てて廻るから
過去も未来も明滅させっぱなしで
両手を広げて翳してみせるから
はばたきを模倣したゆらぎを報せて
もうひとまわり命を周遊していよう
もう戻ってこれないことを知りながら
旅に出てしまう
なぜだろう
宿を宿してしまおうとするのは
草の根を掻き分けて見つけた安らぎ
においを辿って巡る季節と話して
ぼくの中にぼくを見つけてしまう
知りたくもない瞳の奥を見つめて
きみの中に這入ってこうしていたい
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