■元吉本新喜劇・花紀京さん死去
(産経新聞 - 08月06日 13:58)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=3&from=diary&id=3553481
復帰が難しいことは承知していた。
次に花紀さんの話題を聞くのは訃報だろうという予感はあった。
けれども悲しい。
歴代の吉本新喜劇の中でも最高の喜劇役者だった。
花紀さんの黄金時代を関東人は知らない。吉本新喜劇がTV放送されていなかったからだ。
みなもと太郎が上京した時、東京人が花紀さん他、吉本の喜劇役者たちを知らないことを知って驚き、それでギャグの何が分かるのかと嘆息したそうだが、その認識は正しい。
花紀京は日本喜劇人の中では珍しくも徹底してピカロ(悪漢)を演じてきた俳優であり、吉本の定番として最後には人情家としての面を見せて落ちを付けはするものの、正直、それは話を締めるための方便にすぎなかった。花紀京は、その落ちに至るまで、イタズラ、からかい、寸借詐欺にゆすりたかり、空き巣などなど、「非道でない悪いこと」なら何でもやった。関東で花紀さんに匹敵した悪漢役者となると、植木等以外にはいない。
岡八郎とコンビを組むことが一番多かったが、あまり芸が巧いとは言えず、奥目のキャラクターで笑いを取っていた岡さんとでは、正直、力量に差がありすぎた。もっとも、誰と組んでも花紀さんはその場を攫ってしまうのである。定番ギャグが基本だった吉本の喜劇人の中で、花紀さんだけが同じギャグを演じても、あくまで「間」で、「芸」で見せていた。演じながらうっかり吹いてしまうことを花紀さんは決してしなかった。
芸無し新人が、吉本の舞台を侵食するようになって、花紀さんはどんどん浮いていった。笑いの本道が異端に見えてしまうのだから皮肉なものである。孤高となった花紀さんが、吉本の大リストラに対して戻る意志を見せなかったのは当然の選択だったろう。
残念ながら、吉本新喜劇の東京進出が成功したのは、花紀さんが退団した後のことだった。面白さが半減してからのよしもとに、東京人が抱腹絶倒するのを見て、笑いのセンスの低さにこちらが失笑するしかなかった。
花紀さん唯一の主演映画『あゝ独身(チョンガー)』は、舞台ほどには花紀さんの面白さが発揮されてはいない。残る舞台の映像も断片的なものばかりだ。
花紀さんは、日本喜劇史に残る最高の役者として、今も輝き続けている。記憶の中だけで。
合掌。
ログインしてコメントを確認・投稿する