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十勝・上士幌町の糠平より奥は、峠を越えて上川町の層雲峡地区までの約60kmもの間に3世帯しか人が住んでいない。
集落は、ついに1世帯になってしまった幌加と十勝三股の2地区である。
かつては大雪山の豊かな森林資源で栄え、十勝三股には1500人もの人が住み、営林署も設置され、帯広から70km以上も入ったこんな山奥の十勝三股まで国鉄士幌線が敷かれ、たくさんの貨物列車が運転され、次から次へと木材を搬出していた時代もあったと言う。
幌加にも当時は製材所があり市街地と駅があったが、今は幌加地区は市街地から離れた幌加温泉で営業を続けている旅館が1軒あるだけで、幌加の市街地は消滅した。
限界集落の限界を越えたような地域だが、そんな十勝三股に食事ができる飲食店がある。
先々週土曜日、6月2日はクルマで名寄に行ったが、十勝三股を通る三国峠回りで向かった。
十勝三股には13時に着き、十勝三股にある「三股山荘」で昼飯を食べることに決めた。
かつて1500人が暮らしたという集落の「駅前の一等地」だが、今は廃屋も含めて5軒くらいの建物と、国鉄代替バスすら廃止されて使われなくなったバス待合所があるだけで、人々が暮らした集落もかなり自然に還っており、山奥に不自然にある広い平坦な草原になっている。
ログハウスの「三股山荘」の店内には、そんな時代の三股と幌加の地図も掲げられている。
「三股山荘」のメニュー。
今回は、「牧場のビーフライス(1000円)」を注文。
説明書きには「十勝清水・スロウフードさんの牛トロフレークをアレンジ! 牛ひき肉と長いもを練りこんだパテを和風味の丼にしました」などと書いてある。
食事とセットの注文で400円が300円になるというコーヒーも注文。
これだけ平らな草原があるなら何か作ればいいとも思うが、山奥で雪が多く寒いため農作物が育たないんだそうで、食材は十勝管内から広く仕入れていると言う。
「牧場のビーフライス」は、言わばハンバーグが乗った丼だが、ロコモコとは違ってあくまでも薄味でさっぱりした丼に仕上がっている。
カラダに優しい味の丼である。
量も多くはなく、当然完食。
木造の店内は禁煙で、たばこは外のテラスでとのことで、コーヒーを持って外に出る。
目の前に迫る残雪の大雪山を見ながら、新緑萌えるぽかぽか陽気の大自然の中で、時折通る車やバイクの音以外は鳥のさえずり以外聞こえない静寂の中、湧き水で入れたコーヒーをいただく。
最高の贅沢である。
自分を包む回りの全てのものが柔らかで、体中の毛穴が解放される感じになり、これは至福である。
飯だけ食べてすぐ帰るのはもったいない。
再び店内に戻り、手作りケーキ(豆のシフォンケーキ、単品450円)をケーキセット(750円)にして注文し、もう1杯コーヒーも飲むことにした。
「三股山荘」は、十勝三股が寂れた頃、奥様の出身地である三股に移住してきたご夫婦が始めた店で、娘さんと3人で切り盛りしている。
国鉄士幌線の利用者が減って糠平・十勝三股間が列車代行バスに切り替えになってから、そのバスも廃止になるまで運転手をしていたそうで、定期的に乗っていたのは糠平の病院に通うおばあちゃんと糠平の郵便局員、学校へ通う自分の娘の3人だけだったと言う。
今でも三股・幌加地区で年1回集まり食事する会が続いているそうだが、全世帯集まっても隣の北海道開発局の職員と幌加温泉の旅館鹿の谷の3世帯だけでやっているそうだ。
娘さんとも話をしたが、糠平の学校でも同級生はいなかったと言う。
それでも、娘さんは三股山荘の灯を消さずに後を継ぐ気は満々な様子で、後継者には恵まれているようだ。
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