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2018年07月19日05:57

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樺太紀行(1);戦前40年間の日本統治時代の遺産を探して

 13日から17日、4泊5日で南樺太(サハリン)に行ってきた。旧豊原のユジノサハリンスクの同一ホテルに4連泊し、名目はワイルドフラワーハイキングだが、僕にとってかつて(1905〜1945年)日本が統治し、樺太庁を置き、未開地を開拓した地を望見したいという願いからだ。

◎樺太鉄道に乗れず残念
 僕の参加したツアーは、最初はワイルドフラワーハイキングの他にかつて宮澤賢治も乗った樺太鉄道にも乗る、ということだった。ところが旅行社の何という不手際か、6月から9月まで軌道敷き直し工事で全面運休中という報が、出発直前に知らされて樺太鉄道に乗る機会を失した。
 ちなみに40年間の南樺太(北緯50度以南)の日本による統治で、無鉄道であった同地に全長736キロの鉄道網が敷設されたが、1945年8月のスターリン・ソ連の赤軍の不法侵攻・攻撃で南樺太はソ連の支配下に帰したけれども、スターリン主義者どもは南樺太を「化外の地」としてインフラ投資など行わず放置した。

◎70年近くも日本の鉄道にただ乗り
 つまり日本統治時代に敷いた鉄道網をそのまま使ったのである。ちなみに日本統治時代の樺太鉄道のレール幅は日本内地と同じ1067ミリだった。ところがシベリア鉄道などロシアの鉄道の軌道幅は1520ミリである。
 驚くべきことに、2003年から着手された1067ミリ幅から1520ミリ幅のロシア標準軌への付け替え工事まで、実に70年近くもスターリン主義者と後のロシア政府は日本敷設の鉄道のただ乗りをしていたのだ(写真=ユジノサハリンスク駅間近の鉄道レール。まだ日本時代の1067ミリ幅のままだ)。
 今回は、2019年完了予定の付け替え工事でかつて賢治も乗った鉄道に乗れなかったのは残念だった。ちなみに現在、サハリンではさすがにSLは姿を消しているが、全線未電化なので、ディーゼル車による運行である。

◎郊外には荒れ果てた農地や廃工場など
 相変わらずの雨男のためか、4泊5日間のうち完全に晴れたのは皮肉にも帰国の日だけで、後は1日は全面雨天、3日は曇りのち晴れという天気に恵まれない旅だった。ワイルドフラワーハイキングは、それだけ興趣が削がれた。
 しかし現在、南樺太を支配するロシアは、開発に本腰を入れているようにも見えない。首都ユジノサハリンスクは活気がなく、郊外に出ると放置された日本統治時代の工場跡や広い農場跡が目立つ。

◎旧王子製紙の9工場は1990年代にすべて廃墟に
 例えば、広大な針葉樹林の広がる南樺太では、戦前は王子製紙による製紙工業が盛んだった。赤軍の侵攻で、日本人技師や職工員は全員、工場を追い出され、あまつさえ着の身着のままで北海道に放り出された。ソ連が、その後を引き継いだ。
 ところが新規投資や更新投資もほとんどしなかったせいか、ペレストロイカとソ連崩壊後の1990年代早期に、旧王子製紙の9工場がすべて(!)破産により閉鎖された。ドリンスク(旧・落合)に行く途中、バスの車窓からその廃屋を望見し(写真)、日本の遺産を活かしきれなかったロシアの阿呆ぶりを笑ったのである。

◎南樺太を奪い返した後、関心を失ったスターリン
 前述の鉄道の例のように、ソ連が支配するようになってからの南樺太はほぼ放置状態だった。終戦の直前の8月、日ソ中立条約を一方的に破って南樺太に侵攻したスターリンにとって、南樺太は日露戦争で奪われた帝政ロシア領の失地回復のための復讐戦であった。
 だから南樺太を支配してしまえば、もう関心を失ったのである。

◎街に残る「遺産」
 僕は、日本統治時代の「遺産」を探し、早朝、ホテルの周辺だけだったがユジノサハリンスクの街を歩いたのである。例えばホテル(パシフィック・プラザ)から徒歩約15分、その名もコミニスティーチェスキー(共産主義者)大通りに面した旧豊原町役場(写真)である。1928(昭和3)年に竣工されたもので、南樺太に唯一残る旧町役場だ。築後90年でなおオフィスビルとして現役という。
 また僕たち一行が訪問・参観したが、翌朝、独りで歩いて行って外観を撮影してきたサハリン州立郷土博物館も日本時代のままだった(写真)。これは、1937(昭和12)年、樺太庁博物館としてオープンした当時のままだ。
 さらにそこからほど近い広大なガガーリン記念文化公園(旧豊原公園)の中にある「王子池」の碑(写真)。王子製紙が池を造ったのであろう。

注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
 写真をご覧になりたい方は、お手数ですが、https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201807190000/をクリックし、楽天ブログに飛んでいただければ、写真を見ることができます。

昨年の今日の日記:「秋の党大会を控え、中国共産党の権力闘争再燃、政治局員の孫政才が失脚」


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