ワインをクンクンする… 飲食店でやった�犁勠瓩箸いΡ薺�
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レストランで料理とワインを注文すると、ソムリエさんがワインをテーブルまで持って来ます。ソムリエさんがコルクを抜いて渡してくれたら、香りを嗅ぎます。大概は良い香りがします。
次にソムリエさんは、誰かのグラスに少量のワインを注いでくれます。グラスの持ち主は、グラスを光にかざしてワインの色艶を見ます。赤ワインだったら、澱が舞っていないか確認。グラスをグルグルと回して香りを引き出したら、グラスに鼻を近づけて嗅ぎます。最後にクイっと口に含んで舌ざわりや味わいをチェック。
大概は何か問題が起きたりする事も無く、これらのプロセスは滞りなく進行します。いわばお約束の手順みたいなもの。
「めんどくせー！」と思うかもしれませんが、これから素敵な食事を楽しもうとしているなら、その極上な時間に向けて自分の気持ちを高めていく為の、大切な儀式です。そして食事を堪能しましょう。
そう、大概は何か問題が起きる事はありません。大概は…。
もう10年以上も前だけど、立川の某フランス料理店に年２回のペースで通っていました。結婚記念日と妻の誕生日に。元々その店は妻と姑の行きつけの店で、場所は少し分かりにくいけど、かなり美味しいお店でした。
ディナータイムは高額ですが、ランチなら手頃な価格です。前菜とスープ、サラダ、メインが肉か魚のどちらかで、食後にデザートとコーヒーか紅茶が付きます。
私たちはメインに例えば魚を選んだなら、アラカルトで肉料理と食後にチーズを頼みます。すると、ランチに少々上乗せする価格でフルコースがいただけます。前菜と魚料理で白ワイン、肉料理とチーズで赤ワインを飲みます。予算が厳しいので、白も赤もハウスワインです。たまに前菜の中にカモの油煮があったり、食後のチーズに白ワインが合いそうなカビのチーズがあったりしますが、そこは目をつぶります。
予約の電話では、必ず「結婚記念日のお祝い」または「妻の誕生祝い」と言い添えます。するとデザートが１品増えたりします。せこいですが、予算が厳しいので仕方がありません。
さて、その日も予約の時間に店を訪れました。にこやかな顔の店員さんに奥まったお気に入りの席へ案内され、いつものように料理とワインを注文しました。
若い女性のソムリエさんが、キンと冷えたハウスワインの白を持って来ました。霜の輝くラベルを見せて銘柄を確認させた後に、鮮やかな手つきで開栓。ソムリエナイフって、上手く使うとカッコいいですね。
差し出されたコルクの匂いを嗅ぐと、いつもならフレッシュで華やかな香りがするのですが、この日は少しボヤけたような、重たい香りでした。でも私は何も言いません。きっと私の嗅覚が疲れていたのでしょう。
でもテイスティングの時に、とうとう私はか細い声でソムリエさんに告げました。「あのー、いつもと味や香りが違います。すえて少し壊れた感じがします…」私の言葉に怪訝な顔をしたソムリエさんは、何処から出したのか別のグラスにワインを注ぎ、執拗なくらいクンクンと匂いを嗅ぎ、最後に口に含みました。
彼女はギョッとした顔をし、それから頭を下げました。「申し訳ありません。保管状態が良くなかったみたいです。ただ今、別のボトルをお持ちします」踵を返すと、１分と待たせずに新しいボトルを持って来ました。
しかし、そのワインも１本目と同じ状態でした。彼女は悲痛な顔で次々とセラーからボトルを持ち出し、４本まで開栓してテイスティングをしてから、押し殺すような声で言いました。「これは納入業者に何らかの問題があったのだと思います。提案ですが、別のワインは如何でしょうか？ お値段はハウスワインの代金で結構です」そう言って、値段がハウスワインの２倍くらいの白ワインを勧めてくれました。
今にも泣き出しそうな顔のソムリエさんに、何故だか私も申し訳ない気持ちいっぱいになり、コクリと頷き、その提案を受ける事にしました。
運ばれて来たのは、銘柄は忘れましたがギリシャだかキプロスだかのワインで、鮮やかな青いラベルが美しかったです。ワインの味わいは、フレッシュで若いながらもハウスワインとは別次元の美酒でした。私はソムリエさんに満面の笑みを浮かべて見せて、グラスを傾けました。でも残念ながら、この日は食事を心から楽しむ事は出来ませんでした。料理もワインも絶品なのに。
その後、色々あって妻とは離婚してしまい、あの店にもずっと行ってません。今もあるなら、ちょっとランチを食べに行きたいです。
思いっ切り話が脱線し、長々と思い出話を書いてしまいました。すみません。明日は早いので、もう寝ます。
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