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2018年10月18日21:42

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五香粉を買いに行く

 やはり、五香粉がなければルーローファンとはいえない気がしたのである。花椒を探していた折だったかに、五香粉を見かけ、「へえ、こんなのもあるんだ」と思った記憶があって、心当たりを再びまわってみたが見つからない。

 要は中華系ミックススパイスであって、配分は店ごとに異なるそうだから、とりあえず、八角だけ買ってきてそれで妥協しかけたが、そんなに買えないものか五香粉とも思い直したのだった。

 川崎区内にまだまわっていない大きなスーパーも残っているが、これまで当たったところとそんなに規模も変わらず、そちらは無駄足を踏むことになりそうだと思った。別にいつもなら気にならないその程度の無駄足が、なんだかどうも近ごろは億劫になっている。
 こりゃ、横浜の中華街まで足をのばすことになるかな、やっぱり、なかなか手に入らないか五香粉と思いかけたが、今おまえの目の前にある箱はなんじゃないということに気づき、川崎の中華食材店を検索してみたら、あっさり見つかった。

 横浜・池袋・新宿・蒲田などにもお店を構える、なかなかのスケールなチェーン店なのだけれど、特に川崎店は京急川崎駅の改札口を出てほとんど目の前にあるのだった。灯台下暗しとはこのことである。

 平日、仕事から帰ってすぐ出向いてみると、雑居ビルの二階といういかにもな立地である。ホームページからして繁体字(台湾系らしい)ばかりで日本語が見当たらないから、こちらに出てきている現地の人たちのためのお店であって、日本人が来ることはあまり想定していなさそうだった。

 実際、見た目だけでは判然としないながらも、店の入り口ですれ違った人とか、店内のお客は日本人ではなかったと思う。心なしか、部外者が店内に入ってきたせいで緊張させてしまったような気もした。

 コンクリート打ちっ放しとか、たまに倉庫っぽい雰囲気が売りのお店なんかがあるけれど、あれは基本的にそういう演出にすぎないと思う。あくまで小売店舗である以上、倉庫とは構造の上で明確な一線が引かれているはずである。しかし、このお店のレイアウトを策定した人間には、そもそも店舗と倉庫を区別するという発想そのもの(あるいは、両者が別種の存在であるという概念)が存在しなかったらしい。
 まず、商品を並べて客が見てまわるエリアと店員たちのためのスペースが区分されていない。

 店に入ると目の前で店員がなにかフライパンで炒めていた。サンプルの味見でもさせてくれるのかと思っていたら、なんとその店員はフライパンから肉片らしきものをじかにつまんで食べ始めたのだった。それは彼の夕食の調理と食事の光景だったのである。
 にしても、客にまわりを囲まれながら、平然とそれらをやってのける胆力に度肝を抜かれる。

 その他、店内には白いコンテナとおぼしき巨大な箱がいくつか置かれていた。最初は別になにとも思わず、注意すら向けなかったが、他の客たちがたまに開けて中を見ているので、こちらも横目でのぞいてみると、中には冷凍食品が入っていた。そういえば、一般的なスーパーにありがちなガラスドアの冷凍室などはなかったから、いわゆる冷食はこうして供されているらしい。

 棚を見ると、あるインスタントラーメンがすべて上下逆に陳列してあった。箱から出して並べる際、無意識のうちに天地をあわせてしまいそうなものだけれど、それも固定観念にすぎないと言われればたしかにそうではある。
 これについては、仕事が雑とかではなく、その融通無碍ぶりに、むしろ、感心してしまった。

 いくら感心できたにせよ、肝心の五香粉がなければまったくの無駄足だったのだけど、ごくあたりまえな感じにそれはあった。

 ちょっと毒気を抜かれて、ゆったり見てまわるような気持ちの余裕も持てないまま、早速レジに持っていくと、例の店員が口をもぐもぐさせながらやってきて(マジで)、清算してくれた。
 袋に入れてくれようとしたけど、五香粉だけ入った袋というのも間抜けな感じなので「いいです」と言ったら、少しでも手間が省けてうれしかったのか店員はにやりと笑い、こちらもつりこまれて少し笑ってしまって、わかったようなわからないような無言のやりとりがそこに成立したのだった。

フォト


 五香粉は80gが210円(税込)。イリーガルさはまったくないのに、なぜか『不夜城』の金城武気分が味わえるお店の雰囲気は、プライスレス。

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