最初は弁当箱だった。弁当箱として使っていたタッパーのパッキンのゴムが切れたので、これを機にちゃんとした弁当箱を買った。
そしたら、3か月ほどで壊れたのだった。
ケチのついた製品ではあるが、安いので同じものまた買って今度は慎重に扱っていたのに、また同じところが1か月ほどで同じところが壊れた。
さすがに懲りて別のを買ったのだけれど、これが洗うためにパッキンのゴムを外すと、今度はなかなかはまらないのである。微妙に余ってしまう。もちろん、最初はちゃんとはまっていたのだから、時間をかけてあれこれやっていると、そのうちにきちんとなるのだけれど、いちいち弁当のゴムをはめるために毎日5分かそこらを費やさなければならないというのも、不経済な話であるので、これもお役御免となった。
別に高い要求をしているつもりはなくて、ふつうに使えればいいだけなのだけれど、案外にこの水準を満足させる弁当箱が存在しない。
意外と未成熟な市場で、安くてそこそこ使い勝手のいい弁当箱さえ市場に投入できれば、既存の製品を駆逐して巨万の富を得ることも可能かもしれないのだけれど、そんな先のことより、とりあえず休み明けから持っていく弁当箱が喫緊の課題である。
もう河岸からして変えた方がいいのかもしれないのだけれど、近所なのでまた同じホームセンターで、なんかそれっぽいのを、また買ってきた。今度はちゃんと使えてくれと思う。
もう一つは自転車である。
こっちに越してきてから買った自転車は1万円ほどの安物で、4年ぐらい乗っているけれども、酷使のためもあってか、かなりガタが来ている。全体にサビだらけだし、ブレーキの効きも甘くなってきた。特に後者は甚大な事象を引き起こしかねない案件ながら、これをショップへ持っていって修理してもらおうものなら、買った方が安くつくであろうことはほぼ明白である。
というわけで、太っ腹にも新しい自転車を買うことにした。今の自転車を買ったホームセンターの自転車コーナーと、調子が悪くなった時に見てもらった近所のショップ2軒はちょっと敬遠して、新しいお店を足を運んでみたら、なかなかに願ったりかなったりなものがあったので、さっそく購入した。
しかも、今度は2万円以上の大枚をはたいた超高級品(当社比)である。これは長持ちしてほしい。とりあえず、大森へはこれで出かけてみたが、調子はよかった。
ここまで、リニューアルと称しながら、心機一転などのポジティブさはあまりなく、騙し騙し使っていたのをせっかくの夏休みなので、やっとこさ重い腰を上げて更新に踏み切ったというような按配である。
そして、最後は包丁である。フライパン4つに中華鍋1つ、鍋は2つという過剰ぶりに反して、包丁はずっと1本だけでやってきている。月の法善寺横町にも、
包丁一本、さらしに巻いて……とあるぐらいだから、プロでも修行中ならそんなものだろう。
これに特に不足も感じていなかったのだけれど、先日、大師橋を渡って大田区を歩いていると、こんな貼り紙があった。
近くの工場にこまごまといろんなものを卸しているお店のようだったけれど、なぜか包丁も売っているらしい。売掛金を現物で回収したものの、捌けないのでとりあえず店頭に並べているのだろうかとか、妄想が広がりかけるけれど、考えても仕方がないので入って貼り紙のことを問うと、店主は奥に入ってブツを持ってきたのだった。
「これですが」
と言われたところで、こっちに包丁の良し悪しなどわかるはずもない。なんとなく非合法な取り引きっぽい雰囲気に気圧され、せいぜい平静を装いながら、
「じゃあ、これで」
と購入の意思を伝えると、レジを操作せずレシートもなしに包丁をビニール袋に入れて渡してきた。
「刃がついてますから、気をつけて」
って、そりゃ包丁なんだから当たり前なんだけど、あらためて念を押されて、店を出た。
左が今まで使っていた包丁、右が購入したものである。菜切包丁というぐらいだから、先が尖っていなくて、左より用途は限られている。あらためて買う必要ななかっただろうけど、なんとなくいわくありげで気に入っている。あと、なにより安かったので、仮に使えなかったとしても傷は浅い。
柄には麗々しく特撰品のシールが貼られているが、むしろ、身は鉄板を削って刃をつけたような武骨な作りになっている。試しに餃子の餡のキャベツやニラを刻むのに使ったみたけれど、別に問題もなかったので、切る工程で野菜しか扱わない日にはこっちを使うのもいいかなと思った。
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