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2017年03月01日22:51

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「カピタン」研究(89)

2.Change「構成の変換」

Change(構成の変換)はチェスプロブレム特有の興味深いテーマである。前号で述べたように、オーソドックスな解答者はSet(初形からの玉方応手に対する詰め方)をまず検討し、それを手掛かりに「初手」を見つけようとする。これが一番早い詰め方だからである。ところが、老練な作家はその解答者のウラをかいて、なかなか尻尾を掴ませない。すなわちSetの中で、わざと面白いそうな詰め筋をチラつかせて、「これこそ作者の狙い筋に違いない」と思わせておいて、本手順ではその筋を外してしまう。解答者はその筋を活かすことばかり考えるので、なかなか正解が見つからぬと云う構成がChangeである。
 Changeは元々、解答者を苦しめるために考案された高級戦術であるが、現在ではむしろ美しい構成として作者が好んで手掛けるテーマとなっている。

(E)Janos Kiss
Probleemblad 1953, 3rd Prize
フォト
#2(12+11)

Set
1...Rb6 2.Sxc5#
1...Bb6 2.Bxc6#
1...Re2 2.Qf3#
1...Be2 2.Qe3#
1...Bxc2 2.Qf3#
1...Bf3 2.Qxf3#
1...Sxe5 2.Sd6#

1.Qxc5! zz
1...Rb6 2.Qd4#
1...Bb6 2.Qxc6#
1...Re2 2.Sf6#
1...Be2 2.Re3#
1...Bxc2 2.Sf2#
1...Bf3 2.Rd4#
1...Sxe5 2.Qxe5#
1...Bxc5 2.Sxc5#

 b2とe2に玉方BとRの干渉地点がある。ここにそれぞれSelf-interferenceの弱点を衝いた詰みが仕掛けてあるので、その形を大事にするように考えるのが自然だが、初手Qc5はそう云った先入観の裏を突く。Setで読んであった有力な手順が全部白紙になってしまうのだから、Qc5は随分指し難い皮肉な手と云うべきである。

 次の問題はもっと悪質な(素晴らしい出来栄えの)作品である。

(F)Frederik Willem Nanning, Jan Hartong
Tijdschrift van den NSB 1952, 1st Prize
フォト
#2(9+6)

Set
1...Rxd4 2.Bb7#
1...Bxd4 2.Sc3#
1...Qxd4 2.Sf6#

1.Ra5 (2.Qe3#)
1...Rxd4 2.Bf5#
1...Bxd4 2.Sd2#
1...Qxd4 2.Sxg5#

 Setの手順は何れもSelf-pin。これを調べた解答者なら、誰も本題のテーマがSelf-pinであること、少なくともSetの手順が変化の含みになっている事を信じて疑わないだろう。所がその確信の支えをはずす初手Ra5!
 本手順にはSelf-pinの影もなく、作者はニヤリとしながら「本題のテーマはSelf-blockです」!


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