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2017年02月22日23:00

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「カピタン」研究(84)

4)玉の逃げ道に関するテーマ

 玉の逃げ方も興味深いテーマである。
 玉の逃げ道の数が多いのが狙いと云うだけの作品もあるが、テーマとして美しいのは玉の逃げ方に趣向性を持たせたもので、例えば、玉が斜め4方向に逃げ道を持つ場合(Star-flightと云う)とか、タテと横の4方向に逃げ道を持つ場合(Plus-flightと云う)等がある。(それぞれ違う手で詰め上らねばならない。又それがテーマであるから、詰め方の最終手にも別詰の存在は許されない。)

(D)J.J.Gill 1967
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#2 b)Sf5→e7 (8+3)

a)1.Sh5 zz
1...Kd5/Ke4/Ke6/Kxf5
2.Re3/Rc5/Rb5/Re2#

b)1.Re3+
1...Kd4/Kd6/Kf4/Kxf6
2.Sf5/Se8/Sfd5/Qxb2#

a)とb)はtwin(双生児局)である。a)でStar-flight、b)でPlus-flightを構成した傑作。

5)攻方の最終手に関するテーマ

 同一の攻方駒が、玉方の防手に応じて別の手で詰めに参加するのを、テーマ的に表現する。最も華麗なのは「八方騎」や「12クイーン」である。八通りの変化で1枚の攻方のSを八方跳びさせるのが「八方騎」(Knight-Tour)、12通りの変化で攻方のQを12通り(これが理論的最大値)に振り回すのが「12クイーン」(Queen's cross)である。

(E)Murray Marble, 1907
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#2(7+9)

1.Rc4(2.Qxh5/Qxg2#)
1...xc4 2.Qxc4#
1...Sbc6 2.Qd7#
1...Sdc6 2.Qg8#
1...Rd4 2.Qxd4#
1...Be4 2.Qxe4#
1...Se6+ 2.Qxe6#
1...Bf3 2.Qxf3#
1...Rf5+ 2.Qxf5#
1...Sf7 2.Qxg2#
1...Bg3 2.Qxd1#
1...Rg5 2.Qxg5#
1...Bh1 2.Qxh5#
1...Re5 2.Rd6#

Queen's crossの一例。変化はやや無機的だが、作るのは大変だろう。

(F)Antonio Bottacchi
Amerikanischer Schachkongress 1921, 1st HM
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#2(8+4)

1.Rg4(2.Rg8#)
1...Qb2+ 2.Sd2#
1...Qc3 2.Sxc3#
1...Qc5 2.Sxc5#
1...Qxd6 2.Sxd6#
1...Qxf6 2.Sxf6#
1...Qg5/Qh5 2.Sxg5/Sg5#
1...Qg3 2.Sxg3#
1...Qh2+ Sf2#
1...Qxe4+ 2.Bxe4#

 攻方2.Rg8迄の狙いを防いで玉方Qは大活躍するが、攻方Sの八方跳びに屈する。Sの八方跳びを、全部玉方Qのデフェンスに対応させ、簡素な配置で表現したのが作者の腕前。
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