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2016年10月11日22:56

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楽しいレトロプロブレム(55)

(88)Michel Caillaud(diagrammes 51 05-06/1981, 1st Prize)
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#2 Retro-Volage, PRA(10+9)

 ピンされていない黒駒が3枚あるが(Sb1,Rb4,Rb5)、これらはいずれもvolage性を持っている可能性がある。従って現在、黒はstalemateに陥っている(∵これらが動けばself-checkがかかってしまう)。しかし実は、白が初手1.0-0とすることでこの状況を打破できるのだ。以下でそれを証明しよう。

 黒のSb1,Rb4,Rb5がいずれもvolage性を持っていると仮定する。この場合、Sb1とRb5はいずれも初形位置から来たものではないので、これらがvolage性を持っているとしたらいずれも成駒である(特に、Sb1はここで成った後動いていないことになる)。
 初手のキャスリングがlegalであることから黒Rが成った枡はb1以外ないが、このRが白Kにチェックをかけず、なおかつ黒枡を踏まずにb5に到達できるとすれば、白Pb2が初形位置から居座っていた筈がない。つまりこれはPb3-b2(=w)と変色したPなのだ。
 次に、駒取りについて考えてみよう。黒Pがvolage性を失わずにb1で成る為には最低でも4枚の駒取りが必要である。従って、2枚成駒を作っているとすると8枚駒取りをしていて、更にb2にいる元黒Pはb3にいたときvolage性を持っていたので、これも少なくとも2枚駒取りをしている。黒はここまでに計10枚も(それも全部白枡で)駒取りをしているのだ。なくなった駒は全部で13枚だから、残された駒取りはあと3枚だ。従って、双方ともこれ以上はvolage性を持った成駒を作ることができないことに注意しておこう。
 残り3枚の駒取りについても、それが起こった場所はほぼ確定できる。Pb6とPe3は、それが元々白であったにせよ黒であったにせよ、1枚駒取りをしている。また、h筋の白Pは白のままであったなら、成駒を作るのに寄与することなく黒に取られているし、黒に変色したのならg筋で1枚白駒を取って成っている。つまり、いずれにせよあと1枚駒取りがあったことになり、駒取りはこれで尽きている。
 すると残ったPb3とPe2、それにPd5はいずれも駒取りをしていないのだから、Pb3は白Pb2がb2-b4-b5(=b)-b4-b3と動いたものであり、またPe2は動いていないことが明らか。そしてPd5は、白Pd2がd2-d4-d5(=b)と動いたものである。何故なら、もし黒Pd7がd5に動いたものだとすると白枡で駒取りをした3枚の黒Pのうち1枚はh7にいたものということになるが、h7からb1に到達するには6枚も駒取りをしなければならないからである。同様の理由から、Pe3が変色した黒Pではないことも分かる。
 元の色が分かる駒はまだあって、Qc1,Sa7,Sd7がいずれも元黒駒、Sc3が元白駒であることはいずれも明らかだろう。ここ迄で、盤上に配置されている駒の本来の帰属がほぼ確定できた。
 未確定なのは3枚のB及びPb6くらいだが、ここは仮にBは全てオリジナルであり、またPb6は黒だとして、駒を本来の色に塗り直してみよう。すると、次のような局面になっていることが分かる。

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 さて、ここからは黒Pに取られた駒について考えてみよう。ルール上白駒が黒駒になったり、黒駒が白駒になったりするのでややこしいが、黒Pが取った駒は
(1)元々白駒で白枡のみ移動したもの
(2)元々黒駒で白駒になったもの
のいずれかである。そのそれぞれについて考察してみよう。

 初形で白枡にいる白駒は8枚あるが、そのうち3枚(Pe2,Bg8,Rh1)はまだ盤上に残っている。またPg2は黒Pに取られることはない。従って、黒Pが取ることのできる白枡の白駒は4枚しかない。よって、残りの6枚は黒駒が変色したものを取ったことになる。
 ここで、先程の局面を見て頂きたい。なくなった黒駒はRBPPPPの6枚で、一見帳尻が合っているように見えるが、実はそうではない。何故なら、黒Bはどう動こうと変色できないではないか!Pb6が白の場合、或いはBg8が元黒Pだった場合なども、よく似た矛盾に到達する。(詳細については、各自ご確認下さい)従って、黒のSb1,Rb4,Rb5のうち少なくとも1枚はvolage性を失っていることが示された。

 これより作意は、
1.0-0!
if Sb1 is not volage, then 1...Sxa3 2.Qxc3#
if Rb4 is not volage, then 1...Ra4 2.Se5#
if Rb5 is not volage, then 1...Rc5 2.Se5#

となる。

 retro-volageというルールの特性を極限まで追求したような、緻密で息の長い論理の連鎖。流石はレトロの第一人者Caillaudの作品である。

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(90)Michel Caillaud(Die Schwalbe 66 12/1980, 2nd Prize)
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H#4.5 (7+9)
Circe, A Posteriori

Circe:駒を取るとき、取られた駒は初形位置に再生する。R及びSの初形位置は、取られた場所の桝目の色によって決まる。Pの初形位置は取られた筋の2段目。取られた駒の初形位置が他の駒によって占領されているときは、その駒は通常通り盤上から消える。再生したRはキャスリング可能。

A Posteriori:「直前の着手がPのdouble stepであることは直接証明できないが、castlingが可能ならば、直前の着手はdouble stepしかない」という状況において、en passant captureすることが可能。但し、それを「正当化」する為、後で必ずcastlingしなければならない。
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