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2016年08月18日23:01

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楽しいレトロプロブレム(40)

(73)橋本 哲(Probleemblad 2004, 2nd Prize)
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Proof Game in 22.5 moves(14+15)

 なくなった駒は白がQBの2枚で、黒はP1枚のみ。黒はf筋で1枚駒取りをしているので、残された駒取りはあと1枚。このことと、白がb3で駒取りをしていることから、d筋の黒Pは成っていることが分かる。成った場所はe1であり、白Kの配置からR成だろうと見当がつく。盤面配置を作るのに黒は15手かかり、これに成Rをb3に捨てる7手を加えると22手。これで黒の手は尽きている。
 対照的に、白の方はかなりの余裕がある。盤面配置を作るのには9手しかかからず、黒にQBを取らせる手を考慮してもあと3手あれば十分だ。余った11手は何を意味しているのだろうか?しかし、よくよく考えてみると、事態はそれほど簡単ではないことが分かってくる。

 まず、黒はPf5,Pg7xBf6としてからBf8をg5に出し、その後漸くPh6と突くことができるので、白Bf1がd3-h7と最短距離で入ることはできない。つまり、この白Bはe2-h5-g6-h7と4手かけて入らなければならないのだ。すると、ここに新たな問題が生じていることに気付くことになる。黒Pf5の形だと、白Bh5の瞬間、黒Kにチェックがかかってしまうのだ!しかし黒には1手の猶予もないので、自力でチェックを防ぐことはできない。また上記の通り、Pf5の前にBh7とすることは不可能。以上より、白は黒Kにチェックをかけないように何か遮蔽駒を入れる必要があることが判明した。よって、序は以下のようになる。

1.e4 d5 2.Be2 d4 3.Bh5 d3 4.Qe2 xe2 5.d4 Qd7 6.Bg5 Qh3 7.Kd2 e1=R

(図1)
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ここまではほぼ必然の流れ。問題はここからだ。まずは遮蔽駒をg6に挟まなくてはならない。白Sを使うことがすぐに思い浮かぶが、ここで使うのは白R。(何故かは、以降の手順で明らかになる)

8.Sf3 Re3 9.Se5 Rb3 10.axb3 Bg4 11.Ra6 Sd7 12.Rg6 f5

(図2)
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 無事Pf5とできたが、このままでは白Bがh7へ入ることができない。ここで白Sも連れ出した意味が明らかになる。g6に白Rを挟んでおいてPf5とさせ、それから更にf7に白Sを挟み込んで白Bをg6-h7と動かすというのが作者の構想だったのだ!

13.Sf7 Rd8 14.Ra6 Sdf6 15.Bg6 Sh5 16.Bf6 gxf6 17.g3 Bh6+ 18.Kc3 Bg5
19.Ra1 h6 20.Bh7 Rd6 21.Se5 Ra6 22.Sf3 Kf7 23.Sg1

 役割を果たした2枚の白駒はいずれもswitchbackして、物語が完結する。ラインの二重遮断(doubled shielding)という独創的なテーマを鮮やかに表現して見せた作者の手腕には、感嘆する他ない。

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(75)Thierry le Gleuher(Phenix 12/1993, 2nd HM)
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Proof Game in 25.5 moves(11+16)
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