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2016年07月02日21:36

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田島作は「知恵の輪」か?

 もう皆さんのお手元にもパラ7月号が届いた頃だろう。私は今回から看寿賞の選考に携わり、そこで述べた意見もほぼ全てパラに載せられているのだが、どうやら紙面の都合で発言内容が端折られているようだ。
 具体的には「田島氏の作品は『知恵の輪』ではなく『微分系の剥がし』ではないか」という箇所。あれだけでは、何を言いたいのか全然伝わらないと思う。そこで、改めてここで田島作の構造を解析してみたい。これを読めば、『微分系の剥がし』という言葉の意味もお分かり頂けると思う。


田島秀男
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(詰パラ 平成27年度10月号、第54期看寿賞)

 趣向を成立させるロジックの分析が主目的なので、序の手順等は省略する。左右での開き王手によって角の位置を変化させ、それによって徐々に局面を変化させていくのだが、右端でターンする際に33とを取られない為に、先手は
(A1)77角にしておく(同玉なら55角以下)
(A2)14角にしておく(同玉なら32角成以下)
のいずれかが必要であり、また9筋で角の位置変換を行う為には、96合とされても詰むように
(B1)77角とする
(B2)69角を配置しておく
のいずれかにしておく必要がある。このことを念頭に置いて、以下の手順を見ていくことにしよう。

(56手目の局面)
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 この局面が趣向の出発点。まずは77角を59へ連れて行かなければならない。従って(B2)により、ここから69角、34玉、33と…と展開し、右角の位置を移動させる(これにより、玉は4段目を1往復する)。

(84手目の局面)
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 ここから16角、25桂、36歩、同玉、25角、35玉と進むのだが、25桂の捨合をせずに単に36玉とすると、以下37と、同と、25角、35玉、36歩、同と、16角以下詰。59角は、この手順中の37とを同玉を取られるのを防ぐ意味である。

 続いて59角を68へ移動させるが、14角のままでは左側でのターンができない。よって一旦14角-77角の形にしてから14角→69角とする(このため、玉は4段目を2往復する)。これでやっと68角型を得ることができた。

(146手目の局面)
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 68角型にする意味付けは分かり易い。47桂を同歩成と取られない為だ。しかし、同とに対しすぐに同角と取ると、25桂、同飛、34玉以下逃れ。この順を詰ます為に、今度は77角型を作らなければならない。(更に玉は4段目を1往復する)

(176手目の局面)
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 今度は47角に対して25へ捨合をされても大丈夫。ここから47角、34玉、25角、35玉で、やっとと金を一枚剥がすことができた。

 つまりこの作品の骨子は、桂-歩の持駒変換を使ってと金(成香)を剥がすという非常にシンプルなものであり、具体的には「A16角、25桂、36歩、同玉、25角、35玉、B47桂、同と、C同角、34玉、25角、35玉」という手順なのだが、これを成立させる為にはAでは59角、Bでは68角、そしてCでは77角の配置になっている必要があり、この角位置変換の結果として玉は4段目を4往復することになる訳。4サイクルで1枚の駒を剥がしているのだから、これは「1/4枚剥がし」ということになるのではないだろうか。

 勿論本作を「知恵の輪」に分類してもいいのだが、「知恵の輪」と呼ぶとこういう規則的な構造が見えなくなってしまうような気がするのだ。この件について、読者の皆さんはどうお考えだろうか?是非ご意見をお寄せ下さい。
 尚、本作を「知恵の輪」とした他の詰キストを批判する意図は一切ないことをここで付記しておく。
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