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2016年05月08日20:38

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楽しいレトロプロブレム(16)解答編

(46)Hans Heinrich Schmitz(feenschach 11-12/1963)
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#2 Proca Retractor(3+4)

 すぐに思いつくのは、-1.Kg8-h7?と戻す手。これにより、黒は-1...0-0-0と戻さざるを得ません。そこで、-2.Bh4-g5としてから1.Pf7とすれば詰んでいるように見えますが、これは誤解です。何故かというと、-2.Bh4-g5と戻した局面は白番の筈ですが、更にその直前の黒の手を考えると、黒の0-0-0がillegalとなるからです。

(図1)illegal!
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 正解は、-1.Kg8-h7(+R)と黒Rを戻す手。こうしておけば、先程と同様に戻しても黒がcastlingの権利を保持していることを正当化できますね。以下は-1...0-0-0 -2.Bh4-g5 and 1.Pf7#となります。
 尚、黒Sを戻してしまうと、-1...Sf8-h7+とされて全然詰みませんのでご注意を。(Proca RetractorはDefensive Retractorなので、白の思い通りに戻してはくれないのです)

 ちなみに、ほぼ同様の筋を表現した次のような作もあります。

Bernd Schwarzkopf(feenschach 8 03/1972)
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#2 Proca Retractor(2+5)

こちらの作意は -1.Kc8-b7 0-0 2.Rb8-a8(+B) & 1.Kxc7# となります。RとBの微妙な差異が興味深いですね。


(47)Michel Caillaud(Problemesis 8 04/1999, 1st Prize)
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Proof Game in 17.0 moves(13+13)

 なくなった駒は、白黒双方ともP3枚ずつ。黒Ph4は少なくとも2枚駒取りをしていますが、直進途中の白Pを取ることはできませんので、2枚の白Pが成っていることが分かります。盤面配置を作るのに白は5手かかりますから、残りは12手。ということで、Pronkinには手数が足りません。よって、2枚の白Pはいずれもd8でBに成り、それをg5とh4に移動したということが、手数計算のみで判明しました!
 最初の白Pは、成った後に1手で移動する為に黒Pe7も取った筈です。従って、d筋の白PがPe7とQd8を取ってBに成り、h4に移動することになります。2枚目の白Pは1枚しか駒取りができませんから、これはc筋のものと決まります。そしてc筋の黒Pは筋を変えなければならず、更にd8に何か駒を補充しないと白Pがd8で成ることができませんね。よって、c筋の黒Pは白Pb2を取ってb1でQに成り、d8に移動したことも分かりました。後は、再度b筋の黒PがQに成ってd8へ戻ればよい訳です。
 作意は 1.d4 c5 2.d5 c4 3.d6 c3 4.xe7 xb2 5.Sc3 b1=Q 6.xd8=B Qb6 7.Bh4 Qd8 8.Sa4 b5 9.c4 b4 10.c5 b3 11.c6 b2 12.c7 b1=Q 13.xd8=B Qb6 14.Bg5 f6 15.g4 xg5 16.Bh3 xh4 17.g5 Qd8となります。

 詰将棋の趣向作のような美しい反復手順を、全く無理なくしかも平易に表現しているところに、Caillaudの卓越した創作力を感じますね。


(48)George C. Alvey(The Chess Amateur 05/1924)
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#2 Høeg Retractor(4+5)

 見た瞬間1.Rg7と指したくなりますが、このままだと1...Bf4という受けがあります。これをどうやって防げばいいのでしょうか。まず白は、-1.Kc3-d3(+P)と戻します。Høegでは、駒取りの有無やその種類を決めるのは取られた側なのですが、黒がQとRで白Kc3に両王手をかけるにはen passant captureしかないので、黒にはこの戻し方を拒否する権利はありません。すると、その後の戻しも -1...Pc4xd3 e.p.(+Pd4) -2.Pd2-d4となるのが必然ですね。これによりBc1の利きが止まったので、1.Rg7#迄となります。
 en passant captureを強制する筋はRetractorでは頻出ですが、本作はそれがスマートに表現できているのではないでしょうか。

 ちなみに、通しで作意を書くと、Retract: -1.Kc3xPd3 Pc4xPd3 e.p.+ -2.Pd2-d4 &1.Rg7# となります。

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