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2016年04月18日22:47

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楽しいレトロプロブレム(14)

(40)Michel Caillaud(Diagrammes 1979,dadicate to G.Yacoubian)
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SH#15 (5+10)

 Series系では基本的に一方だけが連続して着手し、最後に1.0手で詰める(あるいは詰められる)ことができる局面を構成することが目標となります。最終手を除き、連続着手の途中でチェックをかけてはいけません。Series Help(SH#n)の場合、具体的には「黒が(n-1)手連続して着手し、それからH#1として詰める」ことになります。とりあえずは「黒がn手連続して着手し、最後に白が1手指して詰める」と考えて頂いても構いません。
 これだけだとレトロと全く接点がないように見えますが、実はSeries系にはもう一つ重要なルールがあります。それは「連続着手の途中で、不可能局面を生じてはならない」というものです。通常、不可能局面というと「実戦において生じえない局面」を指しますが、Series系において「不可能局面」という言葉は少し違った意味を持ちます。黒が連続して着手するということは、黒番が続いていることになりますが、この「黒番であること」を常に正当化するために、任意の局面において直前の(勿論合法な)白の手を用意しなければならないのです!

例題を一つ紹介しましょう。

Cedric C.L.Sells(The Problemist 1976, 2nd Recommendation)
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SH#5(2+8)

 一見、黒Kを1-4.Kc6-c7-d8-e8-f8と動かしてから5.Qe8 Qg7#とすれば良さそうですが、実はこれは誤解です。どこが不味いか分かりますか?実は、上の順では4.Kf8の瞬間、直前の白の手が存在しません。従って「任意の局面において直前の(勿論合法な)白の手を用意しなければならない」というルールに抵触することになるのです!
 作意順は 1-3.Kc6-d5-e4-f3 4.Qg2 5.Bg4 Qd3#というもの。これなら常に直前の着手として白Qの手が用意されています。このように、実際には指されることのない白の手を常に考慮に入れることにより、Series系の作品はレトロの要素を含むことになる訳です。
 Series系における局面の合法性とは、このような意味です。お分かり頂けたでしょうか?

(41)Gianni Donati(Probleemblad 01/2000)
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Proof Game in 14.5 moves(14+15)

(42)Michel Caillaud(Diagrammes 09-10/1979)
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SHC#6(6+7)

 Series Help Consequent(SHC#n)とは、SH#nに「連続着手中のそれぞれの局面を全て独立したものと見做す」という一文を付け加えたものです。言い換えると「それ以前の着手についての情報が全くないものとして、それぞれの局面の合法性を判定せよ」ということです。そうすると、どういったことが起こるのでしょうか?
 例えば、成Rとcastlingすることが可能になります!何故なら、それ以前の着手の情報がない場合、そのRが初形から不動である可能性を否定できないからです。

(例題1)
Jacques Dupin(Rex Multiplex 1985, 7th Prize)
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SHC#7(2+5)
b)Pa2→b2

作意は
a)1.Be5 2.a1=R 3.Ra8 4.0-0-0! 5.Bb8 6.Rc7 7.Bd7 Sd6#
b)1.b1=R 2.Rh1 3.Rh8 4.0-0 5.Bh8 6.Rg7 7.Bf7 Sf6#
となります。

 勿論、散々動き回ったKやRが初形位置に戻ってきてから、素知らぬ顔をしてcastlingすることも(それも複数回!)可能です。

(例題2)
Claude Wiedenhoff(Rex Multiplex 1985, 6th Prize)
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SHC#8 (5+3)

例題2の作意は
1.Kf8 2.Ke8 3.0-0! 4.Rxa8 5.Kf8 6.Ke8 7.0-0-0! 8.Rd7 Ra8#
となります。

 en passantについても同様で、直前の白の手がPのダブルステップ以外にない局面を構成すれば、その時点でen passant captureが可能になります。

(例題3)
Michel Caillaud(Diagrammes 09-10/1979)
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SHC#6(4+9)

例題3の作意は
1.Qf2 2.Qb6 3.Kd4 4.bxc3 e.p. 5.Qg6 6.Qe4 Bb6#
ですね。
3.Kd4の時点で、白の直前の手がPc2-c4以外ないことを御確認下さい。

 普通はcastlingもen passantも、ある局面において不可能であればそれ以降も不可能です。ところが、このルールでは、手を進めると不可能であったものが可能になるのです!面白いと思いませんか?
 尚、この「それぞれの局面を独立したものと見做す」という条件は黒の連続着手にのみ(SHC#nならば、黒の初手から(n-1)手目迄)適用します。黒が(n-1)手指して得られた局面は通常のH#1として扱いますので、御注意下さい。
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