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2016年03月15日23:00

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「カピタン」研究(16)

 今日読んでいるのはカピタン第8号(昭和52年3月号)。この号では、如何にもフェアリー専門誌らしく、冒頭から「フェアリー詰将棋の分類」と題して詰将棋を含めたフェアリー詰将棋を系統立てて分類・整理しようと試みている。では早速引用してみよう。

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フェアリー詰将棋の分類

1、詰将棋の分析

 フェアリー詰将棋は普通の詰将棋の一部を変えた将棋の詰物としてみることができます。例えば安南詰やネコ鮮詰は駒の動きを変えたものだし、円筒盤やドーナツ盤を使用する詰将棋もあります。(衝立詰はどこを変えたのでしょうか?)
 ところが、盤、駒の動き、ルールなどを変化させるのではなく「詰将棋」のルール自体を変えてしまったフェアリー詰将棋も存在します。(ばか詰、自殺詰などを考えてみて下さい)このようなものを分類するために詰将棋のルールを分析してみましょう。

1、詰将棋では、先手は必ず王手をかけ後手は王手をはずさなくてはならない。
2、目的は後手玉を詰めることである。
3、先手は2の目的に対し最善の順を選ぶ。即ち詰まない順よりは詰む順を、詰む順のなかではなるべく短い順を選ぶ。(実は現行のルールでは、後手がどう応手しても詰む順の中ではどれを選んでもよいとされている。しかし作品の集合が狭くなるだけで本質的ではないので、便宜上「最善」とした)
4、後手は2の目的に対し最悪の順を選ぶ。即ち詰む順よりは詰まない順を、詰む順のなかではなるべく長い順を選ぶ。

 主要なルールはこの4つ位でしょう。
 まず最初に3と4を変化させることを考えてみましょう。先手、後手とも最善(協力して後手玉を最短で詰める)とすると「ばか詰」になることはすぐわかると思います。それでは先手が「最悪」つまりできるだけ詰まないように、詰むとしても長くつめるようにするとしたらいったいどうなるのでしょうか。

最悪詰

 先手が詰めようとしないのだから、通常ではとても詰まないでしょう。そこでばか詰のように後手は「最善」(できるだけ早く詰まされる)としてみます。仮に「最悪詰」と呼ぶことにします。(先手は最悪だし後手も後手の立場からみれば最悪を尽くしています)

(1図)
フォト
最悪詰 9手

 1図。初手は36金か27歩しかありません。(王手をかけなければならないことに注意)27歩では16玉とされ34角の一手になってしまい、以下25金合!、同角、同角生!、26金迄と後手の妙防!?で詰んでしまいます。そこで36金ですが、後手も同角生!と抵抗、結局以下27歩しかなく同様に詰みます。
 36金、同角生、27歩、16玉、34角、25金、同角、同角、26金迄9手。
 玉方は詰められようとして詰方は詰めまいとする。こっちの方が本当の自殺詰のような気がするんですがどんなものでしょうか。

悪魔詰

 先手が詰めまいとするばかりではなく、後手も詰められまいとする。そんな詰将棋が果して可能でしょうか。
 後手玉の詰という目的に対し双方最悪の手順を選ぶにもかかわらず、まるで悪魔に罠を仕掛けられたかのように詰んでしまう。それが「悪魔詰」です。
 なにしろ双方がどんな手を指しても全て詰んでしまうのです!!(先手は王手をかけ後手は王手をはずすのはもちろんですが)
 双方「最悪」を尽くすのだから最長手順のみが正解です。(ちょうどばか詰と正反対ですね)

(2図)
フォト
悪魔詰 13手

 2図。初手は16歩の一手。後手も14玉の一手です。そこで15歩とすると詰んでしまうので36馬。詰将棋ならこれで詰ですが、まだ合駒の余地があります。25合に同馬は詰みだから15歩、24玉の一手で25馬は詰みだから25香、で34玉。ここで25の合が歩、香か銀だったら45金か45馬(か45銀)しか王手がなく詰んでしまいます。桂合は26桂、44玉、45金で詰。飛合は44飛、同玉、45金迄。または14飛、24合、45金迄いずれも3手で詰みます。金合ならば24金、44玉、34金、同玉、45金迄と5手かかるのでこれが正解です。
16歩、14玉、36馬、25金合、15歩、24玉、25香、34玉、24金、44玉、34金、同玉、45金迄13手。

ここでまとめておきましょう。
後手を詰めるという目的に対し

 先手 後手
 最善 最善 :ばか詰
(最善)最悪 :詰将棋
 最悪 最善 :最悪詰
 最悪 最悪 :悪魔詰

次に2の後手の玉を詰めるという目的を先手の玉を詰めるという目的におきかえた詰将棋―自殺詰の系統を考えてみましょう。

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