mixiユーザー(id:10857363)

2016年03月06日15:57

695 view

楽しいレトロプロブレム(08)解答編

(22)Henry Anthony Adamson(The Problemist Fairy Chess Supplement 1932)
フォト
#2(11+12)

 まずはなくなった駒を調べておきましょう。白がBPPPPの5枚で、黒はBSSPの4枚ですね。白の駒取りはb筋のPによるものと黒Bf8の2枚。黒の駒取りはb筋のPによるものとPe6による2枚が判明しています。
 さて、ここで黒のcastlingが可能だと仮定します。現在白番ですから、直前の手は黒によるものですが、それは何でしょうか?黒はcastling可能と仮定したのですから、直前の着手はPc6xb5,Pd7xe6,Pf7xe6のいずれかですね。そしてPc6xb5及びPd7xe6ならBa4が、Pf7xe6ならRa7がそれぞれ成駒であることが判明します。例えばPd7xe6の場合、Bc8に加え黒Qもb8-d8のいずれかで取られています。従ってb筋の白Pは黒Sを取ったことになり、これで白の駒取りは尽きています。つまり、白のなくなったPはどれも成ってはいないのです。
 一方、f筋の黒Pはf1でBに成っていますが、白Kにチェックをかけずに成ろうとするとPg2xf1=Bとするしかありませんね。ところが白のなくなった駒は黒桝BとPですから、これは不可能です。(∵f1で取るべき白駒がない)よって白Kは不動ではあり得ないので、白のcastlingは不可能であることが分かります。Pf7xe6の場合もほぼ同様の推論により、同じ結論が得られます。
 ちなみに、Pc6xb5という逆算は、「黒の0-0-0が可能」という条件下ではillegalです。(白が成駒を2枚発生させる必要がある為。詳細は各自確認して下さい)
 以上より「黒がcastling可能ならば白はcastling不可能」ということが証明できました。この対偶を取れば「白がcastling可能ならば黒はcastling不可能」という命題も真であることが分かります。つまり、この局面は白黒どちらか一方にしかcastlingの権利がないのです!(こういう状況をmutually exclusive castlingと呼びます)
 そこで作意はこうです。1.0-0!! Kd8 2.Rf8#
白が先にcastlingしてしまえば、黒のcastlingの権利が消滅してしまう訳です。(勿論、1.Rf1??だと1...0-0-0!で逃れです)

 本作はこの筋の一号局。しかしどうしたことか、Dawsonはこの投稿作を25年も放置しておいたそうです。(その為に、発表時期はHavelに先を越されてしまいました)何となく、AbelとCauthyの確執を思い出しますね。


(23)Mark Kirtley, Michel Caillaud(Die Schwalbe 178 08/1999)
フォト
Proof Game in 9.0 moves (15+12)
2sols.

 なくなった駒は白がP1枚のみで、黒はRPPPの4枚。また、黒は盤面配置のみで8手かかっていますから、なくなった駒のうち3枚は不動のまま取られています。これらの黒駒を単純に白Qで取りに行くのは手数が足りませんから、白Pが直進途中で駒取りをし、更に成ってからも駒取りをしていることが容易に想像できます。ではまず、Ceriani-Frolkinを目指してみましょう。
 黒はPを1手動かすことができますから、しばらく眺めているとPxe6-xd7-d8と進んでSに成り、それからSxf7-xh8と取る筋が浮かんできます。h8で黒Rを取ったら、最後はg6に跳ねて黒Qに取ってもらうのです。これで白の手は8手ですから、最初にsingle stepすればちょうど9手になりますね。ということで、一つ目の作意は 1.d3 e6 2.d4 Ke7 3.d5 Kd6 4.xe6+ Kc5 5.xd7 Qe8 6.d8=S Be7 7.Sxf7 Bg5 8.Sxh8 Sf6 9.Sg6 Qxg6となります。
 Ceriani-Frolkinの解はこれしかありません。よって2解目は、Pronkinということになりますね。すると、Qxd7+と突入してからPがQに成る筋が自然に見えてきます。二つ目の作意は 1.d4 e5 2.xe5 Be7 3.Qxd7 Kxd7 4.e6 Kc6 5.xf7 Bg5 6. f8=Q Sf6 7.Qxh8 Qd3 8.Qd8 Qg6 9.Qd1 Kc5となります。
 2解でS成のCeriani-FrolkinとQ成のPronkinとを描き分けるという離れ業。作者二人の創作力をまざまざと見せつけられる作品です。


(24)Thomas Rayner Dawson(The Chess Amateur 02/1927)
フォト
現在黒番である。黒が必ず指している手は何か?(15+16)

 動いた可能性のある駒はRとSのみ。双方ともプロモーションはありませんから、白の2枚のSは合わせて偶数手動いていることが分かりますね。又、白Ra1もやはり偶数手動いていますから、白の着手の総計はこの時点で偶数です。
 同様に考えると、黒もやはりRとSの着手の合計は偶数です。このままだと現在白番となりますから、白はなくなったRh1が奇数手着手していることになりますね。つまり、白Rh1はg1で取られたということが証明できました。従って、黒が必ず指している手はSh3xRg1ということになります。ちなみに、上の議論自体は双方のQを取り去ってもそのまま成立します。恐らく作者は、白Rを取る直前の黒Sの位置が非限定になるのを嫌ったのでしょう。

 本作はparityの問題としてはほぼ原理図ですが、こういった数学的構造をチェスの中に探そうとする試みの延長線上にtempo moveというテーマが姿を現すのは、殆ど必然でしょう。では、将棋盤にこういうparityを見出すことは可能なのでしょうか?みなさんも考えてみて下さいな。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する