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2018年02月23日01:56

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えふじーおー:2

『……』
目が覚める
アラームもマシュもまだ…と言う事はまだ早い時間帯なのだと理解出来た
『…ん?…ああ』
では何故目覚めた?
…簡単な話だ
一人用の、自分のベッドに、他人がいるからだ
『…(清姫…いつの間に…)』
清「…すぅ…ぅ…」
ロックしたドアをゆっくりこじ開けたのだろう
普通に開けば分かる、流石に音で気付く
『…(バーサーカーの力でこじ開けたか…壊れてないかなぁ…)』
しかしながら起こすのも悪い気がする、何だかんだで彼女にはとても助けられているのだから
『…(日頃お世話になってるんだから、これでご機嫌になってくれるのなら安いもんだと思う…が…思うが…思うんだよ?)』
とは言え、ロックがバカになった部屋で過ごすのは避けたい
別段隠すようなものもないが、プライバシーとかそう言うものが保障されていない空間と言うものが嫌だ
『…(むしろ、今の状況こそが誰かに見られたくない訳で)』
この鼻腔をくすぐるかくすぐらないかの計算し尽くされた甘い匂い、触れそうで触れない…そんな奥ゆかしさを120%で体現する絶妙な距離感を保った柔らかい肢体、そして遠慮がちに肩を撫でる可愛らしい寝息…そして、そしてそして寝返りひとつでひと一人簡単に殺すであろう筋力E
正直、こんな時にどんな顔をして良いかわからない…
にやけてないから!鼻の下のびてないから!だって清姫だよ!死にたくないよ!選択肢間違えたら熟睡が永眠になるよ!
『…(落ち着け、落ち着け、落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け)』
正気になり、冷や汗を流しながらベッドから逃げる、ゆっくりと、彼女を起こさないように
しかし、部屋から出てはいけない、逃げられたと思われてはいけない、演じろ、演じきれ、悟られるな

人の形をしたアナコンダが自分のベッドでとぐろを巻いている=完璧良妻四天王(もっと多いかもしれない)の一角が自分のベッドで寝息を立てている

演じろ、清姫に愛されて嬉しい男を演じ切れ…格好つけろ、油断するな
寒くなる背筋と熱くなる頬、震える膝と悶える頭
『……』
清姫(危険物)を警戒している男を演じるのか、清姫(超・美・人)の寵愛を喜ぶ男を演じているのか分からなくなる…なっている
『……』
急に、色々馬鹿らしくなって一人用のソファーに座った
目の前の机から本を1冊
『……ふぅ』
紙とインクの匂い、指でなぞる紙の質感が沸騰していた本能を覚/冷ます
『……』
小さなライトに照らされる本、本、本、そして幾つかの巻物
少しでも召喚した彼らの事を知りたいと思う内に、部屋はあっと言う間に本だらけになってしまった
別段読書家と言う訳ではないのだが、この古書特有の匂いはどうにも好きになってしまっている
『…(あの甘い匂い…媚薬か何かだったのだろうか…?)』
有効範囲外なのか、すっかり冷静になっている自分がいた
何にせよ、今日はもう眠れそうにない
あのベッドには近付いてはいけない
清「……」
暫くもしない内に清姫と目があった
『…起こしちゃった?ごめんね』
なるべく優しい笑顔で言い、彼女の舌打ちが聞こえないフリをした
どうやら間一髪だったようだ、やはり媚薬かなにかだったのだろう…耐毒スキル(仮)が無ければ致命傷になっていたかもしれない
お婿に行けない身体になるところだった
清「ますたぁは何を読んでらっしゃるんですか?」
寝起き(?)で体温が上がらないのか、シーツにくるまったままで清姫が近付いてくる
生憎ソファーは1つしかなく、彼女が座れそうな場…
『……ん』
膝に乗られては、万が一の時に逃げられないのでソファーの肘掛けを軽く叩く
清「…ふふ」
このシチュエーションにまんざらでもないのか、清姫は肘掛けに座り背もたれに体重を預けた

超いい匂いがする(錯乱)

『みんなのね、本をちょっとずつだけど読んでるんだ』
清「そう…ですか」
背後にあるはずの表情が沈む
何故か分かった、分かってしまった
『これ見てよ、金時さんの本』
そう金太郎である、日本の子供なら誰だって知っているであろう有名人だ
『凄いよね』
理由は…分かる、彼女の逸話だろう
知られたくないだろうよ…好いた男を焼き殺す話など
清「私は…」
『知りたいよ、清姫の事も』
敢えて言う
『綺麗な部分だけ集めて見せられても薄っぺらいし…さ』
紙だけに、ですか?と笑う清姫
『知られたくない事を知らないまま受け入れる事も出来るよ。でも清姫はそれが嫌なんでしょ?』
全部暴いた上で余すことなく飲み込みたい、永劫子宮に閉じ込めたい、そんな狂愛
清「蛇だけに、何の玉子かもわからないままそれを丸飲み…とでも?」
口を尖らせたかの口調、だが…怒ってはいないようだ
『…龍、でしょ?』
ソファーに膝立ち、ちょうど目の前にある清姫の瞳を覗きこむ
彼女の頬に触れると、手にひんやりとした柔らかさが伝わる
清「…ますたぁ…」
ねっとりと甘い、喘ぎにも似たそれ

だが、その目

その目は一切、微塵にも笑ってなどいない

深淵のようなその目、絶望の結晶を思わせるその目

…あなたはいつうらぎるのですか?

全力で愛し、全力で愛される事を願い、そしてそれが不可能と本能的に理解しているが故に、彼女は探す
裏切りの予兆を、見付けるまで探し続けるのだろう…安珍(マスター)の一挙一動から

『…ぅ…を…』
その暗さに、胃液が込み上げる
いや、耐毒スキル(仮)の限界かもしれない
とろけ切った顔でキスをせがむ清姫を汚さないようにするので精一杯だった
彼女がくるまっているシーツを、その下にある綺麗な着物を
『…ぅぇええええ…』
固形物の少ない吐瀉物が汚した
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