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2018年08月06日00:21

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戦場と、恋文

  新宿にある経王寺で、朗読劇「戦場と、恋文」を観劇。戦場に妻からの手紙115通を携えていった男の実話を舞台化。男が生まれた明治40年から復員した昭和21年までを、男女が夫婦に扮し、手紙を読む。それにもう1人のナレーションが加わり、その年にあった出来事を語る。それに加えて、折々の流行歌をパーカッションの生演奏で入れる手法。
 男は小作人の六男であり、昭和3年に徴兵されると、元の貧乏暮らしに戻らないため、軍にとどまる。その後曹長から陸軍士官学校へと進むのだから、優秀な軍人である。
 妻は和裁を習い、その技術で東京の富裕層家庭の下働きをする。福井から単独で東京へ出るのだから、独立心があったのだろう。
 2人は見合いして結婚。夫は陸軍士官学校を出て中国へ。徐州から昆明まで転戦する。この間頻繁に行われた手紙のやり取りがメイン。何度か帰国し、幸せな時期もあったが、太平洋戦争勃発で東京へ夫は南方へ。ここで夫は昭和12年から13年までの妻からの手紙の束を持って出征する。
 なぜこの時期なのか。おそらく夫はここが最もきつい時だったのではないか。日中戦争が始まると、捕えた現地人を殺すよう上官に命令される。虐殺直後の南京に入り、凄まじい惨状を目の当たりにする。ここで妻の手紙によって心の平穏を保ったのではないか。
 面白いのはナレーションの効果。夫婦の手紙が個の視点なのに対し、戦争全体を俯瞰する。嘘とねつ造で戦線を拡大し、戦略不在で敗北しても、上層部は処分されない。今にも通じる状況への徹底した批判がいい。
 夫は復員するも、幸せには見えない。生き残った負い目か、上層部の好き勝手のしわ寄せは現場に来る。最後は認知症を患いながらも、平和を訴える。
 朗読劇で2時間はきついかと思ったが、朗読と芝居、音楽を交えた面白さで時間を感じさせなかった。妻役は和田光沙さん。夫役の人が沈痛に演じているのに対し、和田さんは妻を明るく演じる。「二人は若い」を歌う場面など、ピンク映画の賑やかし演技を思わせ楽しかった。

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