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2018年08月11日09:19

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8/10 ローエングリン@バイロイト

Musikalische Leitung Christian Thielemann
Inszenierung Yuval Sharon
Bühne und Kostüm Neo Rauch & Rosa Loy
Licht Reinhard Traub

König Heinrich Georg Zeppenfeld
Lohengrin Piotr Beczała
Elsa von Brabant Anja Harteros
Friedrich von Telramund Tomasz Konieczny
Ortrud Waltraud Meier
Der Heerrufer des Königs Egils Silins
1. Edler Michael Gniffke
2. Edler Eric Laporte
3. Edler Kay Stiefermann
4. Edler Timo Riihonen

休暇後編チロルの旅の帰り道、ニュルンベルク近郊のPlaymobil Funparkなるテーマパーク家族をドロップオフ、自分は一路バイロイトへ。

バイエルン州内の高速が混雑気味で、到着は30分前。着替えてズーを試みたものの、とても取れそうな状況ではない。久し振りの需要大幅超過。新演出公演が僅か5公演、その最終日、加えてワルトラウト・マイヤーのオルトルートとしての最終公演とあらばまあ当たり前か。大人しく、予め確保していた最上階3列目に座る。
久し振りのガレリーだったが、後ろの方だと意外と音響は悪くない。遠くて小さいが、バランスは良いし、声は克明に聞こえる。メトの最上階立見席両端が実は音響優良というのと同じ原理か。

音楽は、自分の(それほど多くはないが)ローエングリン実演体験の中でベストの一つ。ベチャワ(という表記で本当にいいのか分からんが…)は、代打としてRDSとかKFV掛け持ちを覚悟していたので大感謝、そもそもこれ以上に良かった実演ローエングリンはザイフェルトとボータくらいしか記憶にない。ただ一方で、「ターボチャージャー」の欠如は気になるし、ワーグナー業界外からの参戦という「異種格闘戦」の付加価値が何なのか最後まで分からなかった。ハルテロスはそつなくまとめたが、マイヤーと並ぶと「格」の違いは明確。両者とも、贅沢ながら若干「軽量級」という印象を免れなかった。
しかし、マイヤー。ここでオルトルートを終えると決断したのは正しかったのでは。声の衰えは明らかだが、まだ何とかなる。そして舞台上の存在感は、晩年のリザネック、シーリアの域。彼女で一番好きだったのはオルトルートだっただけに、観ていて胸が熱くなった。かくも高貴で色気のあるオルトルートは彼女だけが創り出せる人物像。彼女が今後どのようなキャリアを進んで行こうとしているかは知らないが、もしまだワーグナーの舞台に関わり続けるつもりなら、是非フリッカに戻って欲しい。マイベストフリッカも彼女なので。
そしてティーレマン。前奏曲の冒頭から振幅が大きいのは彼の好演のサイン。彼の本領はやはり楽劇の方なのだろうが、それでもこれでも丁寧で自在な世界を操る。本当に細かいところまで硬軟自在に成熟した指揮が出来るようになったものだ。
そしてこれにてティーレマンのワーグナー主要10作品聴取(同時に彼のバイロイト10演目指揮も聴取達成)。01年のマイスタージンガーとパルジファルは現在のレベルでは全くなかったので、これらで是非2周目に入って欲しい。
オケは、必ずしもこの作品に適した音響条件ではないが(というか、合うのはそもそもパルジファルと黄昏くらいか)、安心の音色、繊細な反応。合唱は、精度は完璧ではないは、当たった時の壮麗な威力は流石。
なお、ツェッペンフェルト、シリンズはそれぞれこれまでの彼らの実演体験ではベストか。コニュチェニ(確か新日本ローエングリンでハインリッヒ王?すっかり出世したなぁ)は声は立派だがいささか一本調子。

こういった音楽の妨げになったのが演出。3方に「壁」のある舞台だったので、音響的にはむしろ歌手を助けていたのだが、真面目に演出の真意を考えようとすると、ただでさえ無理のあるドラマなだけに(そしてその無理を問答無用で納得させる圧倒的なローエングリンが居ないだけに)、余計なことを考え始めてしまい、音楽への集中が妨げられる。以下の点、ウダウダと考えているうちに公演が終わってしまった。

ー 世界が青いのはいい。ただ、オレンジの使い方はもう少し積極的でも良かったのでは。そしてゴットフリートの緑はどう解釈すればいいのか?
ー ローエングリンの物語を「おらが村にも電気が来た」物語にするのは一概には否定しない。ただ、エルザの解放、テルラムントの感電死等、これは流石に一回見ただけでピンとは来ない。(二回以上見てピンと来るかも分からない)
ー 主要登場人物がなぜ昆虫の羽?
ー エルザの拘束等から、シャローンはこの作品における女性の男性への隷属とその解放を描きたいのだと想像する。当然の視点とは思うが、一方で、この方向に進んでもこの作品には出口は無いのでは?エルザがドラマ全体の展開の過程で捨てられていく存在なのは避けようがないのでは…オルトルートのエルザへの接し方に解釈の鍵があるような気がするが、音楽に囚われている自分の頭ではうまく咀嚼できなかった。

現時点では傍迷惑な演出でしかないかもしれないが、来年の手直しの過程で改善の余地はまだあるかもしれない。
(ただ、自分がリピートするかどうかは…うーん。もちろん行けるものなら行きたいが、キャスティングと、他の(バイロイト内外の)諸公演の様子と、後は自分の(というより家族との)休日・休暇日程との兼ね合い次第ですな。)



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