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2018年06月14日10:01

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高度プロフェッショナル制度を解説する

欠陥法として指摘が止まない高度プロフェッショナル制度について、私なりに問題点を解説してみる。ネット上には様々な角度からの指摘が既になされているし、それらはどれももっともなものだ。ただ、反対論の特徴はどうしても極端なケースをセンセーショナルに取り上げる傾向がある。ここではもう少しリアルな想定で、この制度がどう使われるか見てみたい。

「残業代ゼロ制度」とも呼ばれる通り、この制度の適用対象になると残業代が払われない。これは、誰しもよく知っているだろう。それに付け加えて本制度の問題点を指摘すると、次の2点が重要だと思う。

1 労働時間規制が外れる結果、「所定労働時間」を定め放題になる
2 1の結果、欠勤控除がしやすくなり、実年収が大きく下がる恐れがある

まず、「所定労働時間」について説明しよう。知っての通り、労基法上の労働時間の上限は1日8時間、週40時間だ。これを超えるなら残業代の支払いが必要となる。1か月に21日くらい働くとすれば、月の所定労働時間は大体168時間くらいに落ち着く。

高プロでは、この規制が外れるので、会社は労働者との個別契約で「所定労働時間は208時間」とか、大幅に増やした時間数を定めることもできる。208時間というと、168時間+40時間なので、大体40時間分の残業に当たる。

つまりこの人は40時間分の残業時間を「所定労働時間」に繰り入れられた結果、残業代なしで毎月40時間余分に働かなければいけなくなる。残業しろということではない。業務があろうとなかろうと「働かなければいけない」のである。所定労働時間とはそういう意味だ。

40時間分の残業代はいくらくらいになるだろうか。これは月給額で変わる。

高プロの対象者については最低年収が1075万円と言われているので、月給67万円・賞与271万円くらいが想定される。この月給だと40時間分の残業代は毎月約20万円なので、年間で240万円分の残業代がゼロになる。

もう一度言うが、残業しなくてよくなるのではなく、今まで業務が残ったから残業していた時間が、「働かなければいけない時間」に変わり、かつその分の追加給与は支払われないのである。月給67万円の中に40時間分の労働の対価が含まれているのだ。

労働者目線では何のメリットもない。経営者側は年間240万円の人件費が節約できる上、残業ではなく確実な労働時間として毎月40時間確保できる。

ここでは控えめに毎月40時間にしたが、もちろん80時間でも100時間でも「所定労働時間」に組み込める。労働時間規制が外れるとはそういう意味なのだ。

そして2の「実年収が大きく下がる恐れ」について。

所定労働時間の怖いところは、遅刻・早退・欠勤の場合にその分だけ給料から差し引かれてしまう点にある。だから、仕事が早く終わったからといって早く帰ったら、それだけ給料が下がってしまうのだ。悪用しようと思えば、やたらと長い所定労働時間を定めて、労働者が「そんなに働けない」として遅刻・早退・欠勤をすることを促し、結果として給与額を引き下げるという使い方もできる。

それでは1075万円の年収を下回ってしまうのではないか、と思うかもしれない。だが、高プロの対象労働者を決める際の年収は、あくまでも「見込み」でいいので、結果的に1075万円を下回ったとしても、相変わらず高プロ対象にし続けられる。欠勤などがなければ1075万円の年収が支払われる「見込み」だからである。

したがって、今現在年収が1075万円に届かない人でも、雇用契約を改めて1075万円の年収見込みにし、高プロの対象に繰り入れてしまうこともできる。見かけ上は昇給だが、残業代がなくなり、欠勤控除がしやすくなる効果を考えれば、書面上の年収が引きあがっても経営者にはメリットがある。

これらは明らかな「悪用」ではあるが、完全に「合法」なのである。私が常々指摘している「合法的不正義」がここにもあるわけだ。

残業代ゼロ、という点も大いに重要だが、極端に長い「所定労働時間」が定められるようになるという要素も極めて重要である。一応、制度上は労働者本人の同意が必須であるが、労働者側に十分な交渉力がない場合は断りにくいだろう。そして過労死は得てしてそういう断る力を持たない労働者において発生するのである。
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