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2018年06月05日13:30

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国民の無力「感」と安倍政権の「全能感」

■財務省職員、国交省の文書改ざん後差し替え 確認に来訪
(朝日新聞デジタル - 06月04日 21:38)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=5141030

ゆがんだ国になったものである。首相の著書の書名が『美しい国へ』というのが完全にブラックジョークと化している。巷には「ポスト真実」なる用語まで流通しているほどだ。「ポスト真実」=虚偽・虚構であるから、これをして「美しい」と感じるのは、そのような虚偽によって何らかの得をする人間だけであろう。

民主主義社会には通常、こういった虚偽に立脚した権力腐敗を剔抉・糾弾する機構が備わっている。国家機構としては検察や議会における野党の追及がその役割を担い、民間の仕組みとしてはジャーナリズムが同じ役割を期待されている。

権力腐敗自体を防げればそれが一番であろうが、「権力は腐敗する」というのが政治学上の有名なテーゼになるように、権力腐敗は民主主義社会の流行性感冒のようなもので防ぐ手段はない。だからこそなおさら、剔抉・糾弾する機構が求められるのである。

立花隆の『論駁』には、ロッキード事件以前の10年間の権力腐敗について次のようにある。

「権力の腐敗が日常化していた時代だった。民主主義的法治国家でありながら、自民党政権があまりにも長期にわたってつづいたために、それが「絶対的権力」に近づき、ために権力腐敗も「絶対的腐敗」に近づいていったのである。汚職で捕まるのは、下級官僚の木っ端役人ばかりで、高級官僚や政治家には司直の手が及ばないことが常識化していた。・・・そういう時代であったから、「国民の間に著しい政治不信」が瀰漫していた。権力上層部の人間は皆同じように悪いことをしている、しかし、だれも捕まらないことになっているというのが、国民の常識になっていた」

田中時代に人々が抱いていた政治不信と、現在の安倍政権下における政治不信は質的にかなり似ている。「しかし、だれも捕まらないことになっている」という状況もよく似ている。国民がかすかな期待を寄せていた検察も、財務省への強制捜査は一切行うことなく、公文書改ざんについて不起訴を決めてしまった。

大阪地検特捜部は証拠改ざん事件で地に落ちた評判を取り返そうと本気だ、という観測もあったが、希望的観測に過ぎなかった。終わってみれば、むしろ改ざんへの心情的共感でもあったのではないかと思わせるほど、腰砕けの結論だった。これで官僚たちは知ったろう。この国では相当大掛かりに公文書を書き換えても刑事罰は受けないのだと。

強制捜査権を持たない野党の国会質問では、出来ることは限られている。そんな自明のことも理解せずに、「野党がだらしない」としてなぜか怒りの矛先を野党に定めて、「ほかに政権担当能力を持っている政党がないから」として自民党支持を続ける有権者にも困ったものである。

世間では日大の悪質タックル問題について日大上層部の対応に義憤が渦巻いているようだが、日大上層部の木で鼻をくくったような対応と安倍政権の対応は瓜二つである。なぜ日大には怒るのに、安倍政権には寛容なのか。

おそらく、日大の場合被害者が明確で、感情移入しやすいことがあるだろう。安倍政権の場合は、被害者が「国民」という観念的存在でしかないので、反応が鈍いのだ。もちろん世の中には強烈な「国民意識」の持ち主も多くいるが、そういう思想傾向の人々は積極的安倍政権支持者になるので、「憤り」の主体にはならないのだろう。こうした人々の「国民」観がうかがい知れて示唆的である。

もう一つは、日大ならば批判すれば状況が改善できる、動かせるという感覚があるからだろう。裏を返せば、安倍政権については、先の立花隆の引用にあったような「不信感」と「無力感」が漂っているわけだ。実際、国内で唯一、強制捜査権を持って事に当たれるはずの検察も、強制捜査をすることなく不起訴を決めてしまった。そのフラストレーションが「だらしのない野党」に向いて、一層安倍政権を強固にしているのだから何とも戯画的である。

実際には国民は無力ではない。その証拠に安倍政権を強固にしているのがほかならぬ国民なのである。それはあくまでも無力「感」なのだ。その感覚の上に安倍政権は寄生しているのである。内田樹は共謀罪が議論されているとき、次のように指摘した。「権力者が全能感を覚えるのは、不合理で、不適切なことをしても誰もそれを咎(とが)めない時である。」

「有力な国民」の無力「感」は、安倍政権の「全能感」と表裏である。日大を叩いて留飲を下げている場合ではない。
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