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2018年05月16日01:05

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2018年 5月 6日(日) バーデン州立劇場 「ワルキューレ」

演出 ユーヴァル・シャロン、舞台美術 セバスチャン・ハナック、衣装 サラ・ロルケ、照明 シュテファン・ヴォインケ、指揮 ジャスティン・ブラウン。配役 ジークムント ピーター・ウェッドゥ、フンディング アヴァタンディル・カスペリ、ヴォータン レナトゥス・メツァール、ジークリンデ カスリーネ・ブロデリック、ブリュンヒルデ ハイディ・メルトン、フリッカ カタリーネ・ティーア、ヘルムヴィーゲ ダニエラ・ケーラー、ゲルヒルデ クリスティーナ・ニーセン、オルトリンデ イナ・シュリンゲンジーペン、ワルトラウテ カタリーネ・ティーア、ジークルーネ ルイーゼ・フォン・ガルニエ、ロスワイセ ティニ・ペータース、グリムゲルデ アレクサンドラ・カドリーナ、シュヴェルトライテ アリアナ・ルーカス。
席はパルケット左5列目167番。€46.00。舞台の左側には4台のハープ。
第1幕。演奏が始まり幕が開くと左右に広いこの劇場の舞台が黒い幕で狭められている。さらにすぐ後ろに壁があるものだから舞台の奥行きはざっと3m。この空間で第1幕は演じられる。後ろの壁にはドアーがついており、その壁が左右に動く。通常3つ、多い時には4つのドアーが見える。ここに黒シャツにジーパンをはき、黒の毛皮のチョッキ状のコートを着た金髪細身のジークムントが逃げ込んでくる。緑と紺の中間色のロング・ドレスを着たジークリンデが介抱する。そこにオーストリアの軍服用コートのようなものを羽織ったフンディングが現れる。このアヴァタンディル・カスペリがすごい声量で驚く。この人はほとんどここの劇場のみで歌っているバスだ。未だ他の劇場にはほとんど出ていないようだがなかなかの逸材と見た。狭い空間での演技なのでテーブルも何もないのでフンディングとジークムントの食事は立食で行われる。トネリコの木さえ見えない。フンディングとジークリンデが寝室に引き下がったのち一人残されたジークムントが助けを求め「Wälse! Wälse!」と叫ぶ時のピーター・ウェッドゥの声量もなかなかのものだ。トネリコの木がどこにもないのにノートゥングをどうやって入手するのかと思っていたら、ジークフリートはドアーの中に消えた。そして出てくるときには女の子を肩に乗せて出てきた。その子がノートゥングを捧げ持っており、ジークリンデに渡すのだ。フィナーレで二人が逃げ出すところでは二人は左側のドアーから退出する。するとその右側のドアーに二人が右の方に走っていくのが見え、次のドアーでは遠方に逃げ去る二人がそれぞれ映像で表示される。(幕)
第2幕。この幕の舞台もおかしい。ヴォータンとブリュンヒルデ、ヴォータンとフリッカのやり取りは左から右に上る狭い階段の上で行われる。幕もその階段の傾斜に合わせ切り抜かれている。その階段がなんとエスカレーターのように上下するのだ。これはドアーが行ったり来たり動くのと関連がありそうだが、私には理解不能だ。ここではきりっと美しいカタリーネ・ティーアがなかなか良い。どんどんヴォータンをやり込め、ジークムントを倒させることを同意させる。
舞台は転換し(階段が見えなくなって)元のドアーの前となる。ジークムントと既におなかの大きいジークリンデが逃げてくる。逃げ疲れてジークリンデが寝てしまうとブリュンヒルデが少し高いところにある額縁のような場所に登場する。気づかなかったのだが壁が移動してそのような位置まで動いたのだろう。彼女はヴァルハラにジークムントを連れて行こうとするが失敗し、逆に彼を守ると約束する。フンディングが現れ戦いになるとヴォータンはドアーより高い位置に現れノートゥングを打ち砕くので、ジークフリートはフンディングに敗れ、殺されてしまう。ブリュンヒルデは急いでノートゥングの破片を集め、ジークリンデでの手を引いて左に逃げる。ヴォータンはブリュンヒルデの裏切りに怒り彼女を追いかける。(幕)
第3幕。この幕になって初めて舞台全体が使われた。白一色である。中心部に直径3−5m位の舞台状のものが立ち上がり、それから6−7本の足状の踏み板(通路)が放射状に延びる。その下は舞台床より一段下がっている。タコのような装置といってよいだろうか。そこに稲妻が光り、雪が降っている。オレンジ色のスキー・ウェアを着、オレンジ色のゴーグルをつけたヴァルキューレたちがあるものは空飛ぶスノー・モビル(映像)に乗り、あるものは走り回り雄叫びを上げる。ブリュンヒルデがジークリンデを伴って助けを求めてくるが、ヴァルファーターの恐ろしさをよく知っている彼女たちはブリュンヒルデとジークリンデを助けるのを躊躇する。しかしジークリンデが死にたいと言い、またおなかの中の子供のことを言われ(このプロダクションではすでにおなかが大きいのであるから、ここで妊娠を知らされたとは解釈できない)て、急に「母を助けて」と言われ、彼女を深い森に逃がすことを手伝う。残ったブリュンヒルデを隠し、また自首するようにヴォータンの前に出てきた彼女に対しあまりにも父の怒りが激しいので、反抗の声を上げもする。しかし最後には蹴散らされるように逃げてゆく。二人残ったブリュンヒルデとヴォータンであるが、ブリュンヒルデは自分のとった行動を説明するが彼には全く聞く耳がない。それでも二人の懐かしい思い出を思い出してか、次第にヴォータンに優しさが出てくる。当初彼は誰でもブリュンヒルデを目覚めさせたものが彼女を得ることができるようにするつもりであったのを、恐れを知らぬ勇者のみが彼女に近づけるようにするなど思いやりを見せた。そして彼女はその一段低いところに降りてゆくとさらに下に消える。そしてローゲに命じこの頂の周りに勇者のみが越えられる火の壁を作らせる。やがて低いところから氷柱が上昇してくる。その中にはブリュンヒルデは美しく眠っている。(幕)
このプロダクションでは筋書きはおおむね原作通りであり、突拍子のないすじはない。ちょっと変わっているのはジークリンデが2幕ですでにおなかが大きいこと、ノートゥングをトネリコの木から引き抜く場面がないこと、そして最後のブリュンヒルデの氷漬けだ。しかしその氷漬けについていえばまことに理にかなった解決法だと言えないこともない。彼女が眠らされてからジークフリートに目覚めさせられるまでに15年はたっているだろう。氷詰めであればその間腐りもせずに眠っていることも可能だろう。
オーケストラは「ラインの黄金」よりはるかにダイナミックな演奏を聞かせてくれたし、最後の幕のハイディ・メルトンとレナトゥス・メツァールの掛け合いも素晴らしかった。このサイクル段々盛り上がってきて面白くなってきた。
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