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2018年03月22日23:27

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私のベストテン(第2回)

(2) 高坂 研(Problem Paradise 15, 1999)
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Proof Game in 19.0 moves (13+14)

1.h4 e5 2.Rh3 Ke7 3.Ra3 Kf6 4.Ra6+ bxa6 5.h5 Bb7 6.h6 Bf3
7.gxf3 Ba3 8.Bh3 Se7 9.Be6 dxe6 10.f4 Qd3 11.cxd3 Rhd8
12.Qa4 Rd6 13.Qe4 Sd7 14.Qg6+ hxg6 15.h7 g5 16.h8=Q Kg6
17.Qh1 Rh8 18.Qa8 Rh7 19.Qh8 Sg8

 橋本哲氏の諸作品を解図してみることでプルーフゲームの何たるかを学んだものだから、当然のようにルントラウフやスイッチバックが好みのテーマとなった。「一見不動に見える駒が、実は動いていた」というテーマは分かり易いし、大駒が長距離の軌道を描いてくれるとそれだけで嬉しくなってしまう。我ながら単純すぎるのではないかとも思うが、「三つ子の魂百まで」と諺にもある通り、最初に刷り込まれた嗜好というのは恐らく死ぬまで変わらないのだろう。

 橋本氏の作品を一つ引用しておこう。2枚の白Rが同一軌道を一回転するという大傑作である。この作、大阪のチェス喫茶「アンパサン」でプロパラの会合が開かれたときに若島さんから出題され、会合の最初から最後まで延々考え続けて、漸く解いた記憶がある。多分7時間ぐらい考えたんじゃないかな。当時はまだレトロに関しては全くの初心者だったけど、若さと根性だけは今の100倍あったのだ(笑)。

(2-a) 橋本 哲(Problem Paradise 12, 1999)
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Proof Game in 21.5 moves (13+14)

1.a4 Sc6 2.a5 Rb8 3.a6 bxa6 4.Ra4 Rb3 5.Rh4 Rc3 6.dxc3 g5
7.Qd6 exd6 8.Be3 Qf6 9.Sd2 Qf3 10.exf3 g4 11.Bd3 g3 12.Se2 xh2
13.Sg3 h5 14.Ke2 Bh6 15.Ra1 h1=R 16.R1a4 Ra11 7.Rh1 Ra2
18.Ra1 Sd4+ 19.Ke1 Sb5 20.Rh4 c5 21.Rh1 h4 22.Bf1

 自作に話を戻すと、テーマである「Qの大回転」というのは、プロパラ9号の名局鑑賞で引用されていたW.Paulyの名作を見ていて思いついたもの。もっとも、見て頂ければお分かりのように、「思いついた」なんて格好いいものではなく、単なるパクリである(笑)。

(2-b) Wolfgang Pauly(Eskilstuna Kuriren 1922)
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S#9 (5+6)

1.Qg5 Ke3 2.Qc5+ Kf3 3.Qg1 f6 4.Qg7 Ke3 5.Qa7+ Kf3 6.Qg1 f5 7.Qg6 Ke3 8.Qb6+ Kf3 9.Qg1 Bb4#

 実は当初のアイデアはもっと欲張ったもので、「白Qがテンポムーブとして大回転する!」だったのだが、流石にこれは実現させることができなかった。(出題図において、Q以外の白駒ではテンポムーブが不可能であるところに、その試行錯誤の痕跡がかすかに認められるだろう)

「どうせなら、最大の軌跡で表現しよう」と考えると、初形位置のQではダメなので、必然的に成Qでやることになる。なので、作っているときには全然意識していなかったのだが、どうやらこの「成駒によるルントラウフ」は、西欧のプロブレム界にとっても割と新鮮な表現だったらしい。というのは、拙作が発表されてから数年後に、同様のテーマで創作コンクールが開催されているからだ。では、そのコンクールの優勝作を引用しておこう。作者はご存知M.Caillaud。

(2-c) Michel Caillaud (G.Donati 50th JT 2003, 1st Prize)
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Proof Game in 15.0 moves (13+15)

1.a4 d5 2.Ra3 Bh3 3.Rb3 Kd7 4.Rb6 axb6 5.f4 Rxa4 6.f5 Re4
7.f6 Re6 8.xe7 f5 9.e8=S Bc5 10.Sd6 Bd4 11.Se4 Qh4+
12.Sg3 Qe4 13.Sh5 g5 14.Sg7 Sf6 15.Se8 Rxe8

 巨匠Caillaudとは神戸で世界大会が開催された時にお会いしたのだが、そのとき私はこの作品を名刺にして(清水の舞台から飛び降りる思いで)渡している。その際に通訳して下さった小林さんによると、彼は名刺の拙作を見るなり「ああ、これ知っているよ」と言ったらしい。
 それを最初に教えられたときには「単なるリップサービスなんだろう」と思っていたのだが、あとになってよくよく時系列を考慮してみると、拙作が彼の創作意欲を刺激した可能性が全くない訳でもない。いや、可能性がゼロでないなら、それは十分ありうることなのだと(←実にレトロ的な発想だ!)、今でも私はこの作を見る度に幸せな妄想に浸っているのである。
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