カミーノという、全ルート800キロの「スペイン版お遍路」の魅力。
サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路、800キロの道のりをひたすら歩く。
4、5本のルートがある。どこからスタートでもOK。
無神論者でもイスラム教徒でも歩いていい。乗り物を使うのも可。
至る所に矢印があるが、道に迷うこともある。
100キロだけ踏破しても、巡礼完了の証明書がもらえ、
途中で中断し、後日再チャレンジしても構わない。
観光も可能だが、基本はただ歩くだけなので、エゴが剥き出しになりやすい。
人間の本性が表に出てくる。
パニック障害で退社した著者は、道に迷った先で知り合ったマリオ似の男性に、
「僕だってライオンからは逃げる。あなたにとって仕事はライオンと同じ。
本当に辛いなら逃げてもいい」
と励まされ、大泣きする。
厳格な父と障害を持つ兄を連れて旅する若き経営者は、
行く先々で父とよくケンカをしていた。
だが、だれとでも仲良くなれて、旅を一番楽しんでいる兄を見て、
頑なな気持ちを捨てる。
かと思えば、タクシーで悠々と観光気分で移動するババアに宿を独占され、
キレるバックパッカーも。
トラブルもあるが、巡礼者達はそういうものも全部受け入れて旅を満喫している。
ファンタジーモノの資料として、プライムリーディングで読んでみたが、
これは面白かった。
名産、文献など、資料的価値は、もちろん高い。
それ以上に、「なぜ旅をするのか」という問いかけが、重要だと思えた。
この本の目的は巡礼だが、自分探しを目的として歩く人が多い。
その回答として、誰もが「答えなんかない」のだと悟る。
ただ歩くだけでは、何も変わらないし、かわる必要も、自分を曲げる必要もない。
ただ、視野は広くなっていくのだろうと思う。
体験者のコラムで「カミーノは軌道修正」と語っていた。
これがもっとも適切なのではないかと思う。
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