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2018年02月16日20:37

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人生に疲れたらスペイン巡礼 (光文社新書) Kindle版 小野 美由紀 (著)

カミーノという、全ルート800キロの「スペイン版お遍路」の魅力。
サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路、800キロの道のりをひたすら歩く。
4、5本のルートがある。どこからスタートでもOK。
無神論者でもイスラム教徒でも歩いていい。乗り物を使うのも可。
至る所に矢印があるが、道に迷うこともある。
100キロだけ踏破しても、巡礼完了の証明書がもらえ、
途中で中断し、後日再チャレンジしても構わない。

観光も可能だが、基本はただ歩くだけなので、エゴが剥き出しになりやすい。
人間の本性が表に出てくる。
パニック障害で退社した著者は、道に迷った先で知り合ったマリオ似の男性に、
「僕だってライオンからは逃げる。あなたにとって仕事はライオンと同じ。
本当に辛いなら逃げてもいい」
と励まされ、大泣きする。
厳格な父と障害を持つ兄を連れて旅する若き経営者は、
行く先々で父とよくケンカをしていた。
だが、だれとでも仲良くなれて、旅を一番楽しんでいる兄を見て、
頑なな気持ちを捨てる。
かと思えば、タクシーで悠々と観光気分で移動するババアに宿を独占され、
キレるバックパッカーも。
トラブルもあるが、巡礼者達はそういうものも全部受け入れて旅を満喫している。

ファンタジーモノの資料として、プライムリーディングで読んでみたが、
これは面白かった。
名産、文献など、資料的価値は、もちろん高い。
それ以上に、「なぜ旅をするのか」という問いかけが、重要だと思えた。
この本の目的は巡礼だが、自分探しを目的として歩く人が多い。
その回答として、誰もが「答えなんかない」のだと悟る。
ただ歩くだけでは、何も変わらないし、かわる必要も、自分を曲げる必要もない。
ただ、視野は広くなっていくのだろうと思う。
体験者のコラムで「カミーノは軌道修正」と語っていた。
これがもっとも適切なのではないかと思う。
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