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2017年10月30日23:58

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貴族ごっこの仏料理、楽しめなければ苦行の体力勝負2時間半 (1/2)

用事後の建物から徒歩30秒圏にあるから、と選んでおいたフランス料理店。その土曜の夜の3日前に電話した。こちらは1名と言っているのに、「お祝い事ですか、そうではないお食事ですか」と訊かれ、わたしは笑いをこらえるのに必死。声質がオカマちゃんなので、なおのこと。

お店は激戦区・神楽坂のフランス料理部門で食べログ6位(2017年10月現在)。星3.73を誇る。さて、開店3分前に扉を開けると、給仕が後頭部をぼりぼり掻きながら歩いてきた。嫌になったよね。

テーブルは10卓あるが、先客の男女の横に通された。2名はびっくりして話をやめ、わたしも座りにくいことこの上ない。着席したら実に、その女性の肩に寄りかかれるほどの間隔。男女は結婚式を終えて日が浅い夫婦らしい。20代中盤。あとの会話で、「二次会でうしろ見たらサ、二次会のあとにサ、二次会のときサ」と何遍も口にするからそうなんじゃないかと思われた。どんな場にも対応して楽しめる気質の奥さんと穏やかなご主人。

わたしはドリンクメニューを差し出されると、「飲み物イラネ、水さえアレバ」と断れそうもなく、白ぶどうジュース(831円)を求めた。発酵前のドイツワインなんだそう。けだるい甘さで、とろみも量もたっぷり。

隣のご主人がトイレに立った。「緊張しておなか痛くなったの?」と心配されながら。奥さんは給仕に、
「緊張しておなか壊したみたいです」
と知らせた。給仕は、
「いじめたんでしょう? いけませんよ」
と返す。

わたしは前菜とメインの2皿でお店を出る予定だったが、用意は3通りのコース料理のみ。長々しい説明が、隣の夫婦とわたしに向けて行われる。3人が一括りに扱われるのだ。テーブルは独立していますけどね!? わたしは夫婦に先んじて、値段の真ん中の、プリフィックスのコース(7,722円)と決めた。前菜、魚料理、肉料理、デザートだそう。実際には皿数はもっと多い。一番安いコースはプリフィックスであるものの、メインが魚料理か肉料理のどちらか。

前もってデザートを断ると、チーズを出してくれるって。満腹になってから大好物を食べるなんて。チーズはたしかに消化を助けるが、助けがいるほど食べるのは享楽がすぎる。コース料理の通例でもチーズは肉料理のあとと決まっている。それじゃおいしくもなんともないに違いない、とわたしは常々疑っていた。予想は裏切られなかった。隣夫婦は一番高い、すべておまかせのコース(10,692円)にした。

ご主人が落ち着かない様子で耐えるなか、給仕はビシッと立ち、こう宣言した。
「緊張するとしても、この型は崩しません!」

パン(握りこぶし大)が1個とバターがサーブされた。1種類だったのでわたしは気落ちする。ご主人は、
「この配分を調節しないといけないはずだな」
と触るだけで、口にはしない。フロアの席は5卓が埋まった。小綺麗にした女性と、ラフな格好の男性の若いペアばかり。給仕によるメニューの説明が大声で何遍もくり返される。
「あの同じのを何回も聞かされるだね(笑)」
と隣の奥さんはウキウキしている。スペイン風の音楽がギターをかき鳴らすと、みんなの話し声も騒がしく。

テーブルには前菜の前の突き出しが登場した。知らなかったよっていうのはこのこと。わたしはナプキンをまだかけておらず、促された。お皿には、チーズ味のサブレ(厚くて甘いクッキー)と、「フォアグラを産みだす鴨であるマグレ鴨の胸肉の生ハム」と、「磯つぶ貝の塩茹でを岩塩に付けて」。どれもナイフとフォークじゃ食べられない形状だが困惑は無用。手解きしてもらえるから。

給仕というのは、雑用(係)やメードとは役割がまるで違うものであるらしい。料理・素材、ワインに精通し、抜群の記憶力と気配り精神を備え、食べ方やマナーを若いお客に逐一教え、しつけ教育まで担当する。隣のご主人は突き出しのきれいになったお皿をして、給仕に、
「きれいに召し上がれましたね!」
と褒められた。

次のお皿までの時間は、連れ合いと会話でもしないと手持ち無沙汰である。わたしはパンをバクバク食べては1個ずつ追加された。バターのとろみ・つやは病みつきに。手を休めるためにわたしは本を読み始めた……。

前菜は、「夏ブリ(日高産)のマリネ、野菜グレック添え」。野菜は、インゲン・カリフラワー・小たまねぎ・にんじん・パプリカ・ヤングコーンなど。野菜をオリーブオイル・香草・レモン汁を合わせた煮汁で煮てから冷ましたもの(と見られる)。ヴィネガーが強い。酸味を嫌う人には耐えられまい。途中で飽きて、給仕が寄ってきて、
「量が多いですか」
と。刺し身に慣れた日本人には、ブリがすっぱくて刺激的なオイルまみれなのが不思議なの。それにコレ、なんだか和風ドレッシングの味がしちゃうんだよ……。もしかしてこのお皿が魚料理だったっけ? わけがわからなくなったものだ。
「きれいに召し上がっていただいてありがとうございます」
そう言われるとムッ。わたしは水を手前に置きたいが、定位置にしておかないとその都度直される。

くだんのパンを猛然とほおばる。補填されると前のめり。ただ、眠気を否定できなくなってきた。
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