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2017年09月13日00:50

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「隠蔽捜査6 去就」(今野 敏 著)

 
これまでの5作とも読書日記を書かずにはいられなかったほどお気に入りなのが、このシリーズ。 キャリアでありながら降格人事により大森署の署長として赴任してきた竜崎を主人公にしている。

今作も、安定の高レベルで、すいすい読め、頁を繰る手をなかなか止められなかった。
が、終盤近くに至るまで、” 書きたい!” というほど心を掴まれる瞬間がなくて。

日々 「湯布院レポ」 を綴っている時期だし、それはそれでいいか、などと思っていたら、胸が熱くなり、” 書かずにいられるか!”(笑)と心をたぎらせてくれる箇所が待っていてくれたのです。

それは、意外に早く事件が解決した後。
” まだ結構ページが残っているけど、何を描こうと言うのだろう?” と疑問に思っていたら。
―― 竜崎が、特別監察を受ける羽目になるのである。

今回の事件(殺人及び略取・誘拐)の指揮本部での、竜崎の現場への命令に越権行為があったのではないか、という疑いで。
実態は、隙あらば足を引っ張ってやろうと狙っている出世欲に溢れた、同じ指揮本部にいた者からの、面子をつぶされたことへの報復的な意味合いの訴えなのだった。

だからといって、竜崎は一切、慌てることをしない。
じたばたして余計な手を回したりもしない。
いついかなる時も信念に基づき、事件を解決するため最善と思われる方法を合理的に取ろうとしてきただけなのだから。
そして、こういう場合、相手が勝手に転んでいくことになる。
そのぶれない姿勢に、捜査を共にした多くの者が感銘をうけ、竜崎の名前を心に刻んでいく。

特別監査を担当した警視庁本部の梶警務部長は、指揮本部の責任者や、現場に出動していた機動隊やSIT(捜査一課特殊班)の長、大森署の署員などに確認を取った末、結論を出す。
それを告げた後、梶はこんな言葉まで口にする。 「今、おそらく日本中の警察が君のような人材を求めている」 と。

竜崎の異動は、そう遠くないだろう。
地方の警察署へ? 
そうではなく、警察庁か警視庁へ引き上げられる可能性高し。

どこにいても国のために全力を尽くすだけの男、竜崎。
どこへ行こうと竜崎は竜崎であるが、小説として面白く描けるのは、現在の立場での彼であろう。
あと何作、大森署長としての竜崎の物語を読めるだろうか。

次作も、こうして、またまた読書日記を書くことになるのだろうか。

新作の刊行を、じたばたせずに待ちたい。
出たら、読む――。
ただ、それだけのことである。

 
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