宮沢賢治の本というのは古本で安く売ってるとうっかり買ってしまうもので、ちくま文庫の宮沢賢治全集の全10冊をすべて持っているにも関わらず、いろんな文庫でたくさん持ってたりするのだ。だもんで知らず知らずのうちに宮沢賢治の本がうちのあちこちにあるわけだが、僕は昔から宮沢賢治に対していまいち理解出来てないんじゃないか感があって、これも好みの違いによるものだろうくらいにしか考えていなかった。
が、先日なんとなく手に取った角川文庫クラシックス版の「注文の多い料理店」を読んで、今までの「どうも理解出来ていなんじゃないか感」の理由が分かった。宮沢賢治の理解の鍵はこの本の「序」にあったのだ。僕はこれまでこれを読みきれていなかった。
そもそもこの「注文の多い料理店」という本の原本は9話からなる短編集であって、これは宮沢賢治が生前に出した唯一の童話の本だった(生前出たのはこの本と詩集の「春と修羅」の2冊だけ)。本当はこれは全集の第一弾として自費出版で出したもので、この後にも出す予定だったはずが、これが全く売れなかったから1冊しか出さなかったとか。
なので、この序文は童話「注文の多い料理店」だけの序文ではなくて、宮沢賢治のすべての童話の序文となっているわけで、かなり大事なものとなるのだ。僕はこれにずっと気づかなかった。角川文庫クラシックス版の「注文の多い料理店」は原本そのままに編集されて出ているもので挿絵もオリジナルのものだそうな。
これまで短編のひとつひとつをバラで読んでいたし、そもそもどの本もそういう編集になっているのだ。これはかなり問題があるのではないかなあ。この序文をきちんと読まずに宮沢賢治の話を読むというのは片手落ちみたいなものなんじゃないか。すべての宮沢賢治の本にこの序文をつけるべきだと思った次第。
というわけでこの序文を読んで、これまでの「いまいち理解出来てないんじゃないか感」はスーっと消え、これまでのモヤモヤがすっかり晴れたのであった。とにかくいろんなことが頭の中でビシッと整理された。おまけに宮沢賢治の圧倒的な凄さが今更よく分かった。
ひょっとしてこんなの常識だったのかな?いい歳して今ごろ何言ってんだという話かもしれないが、とりあえず僕はこれを自力で発見したので嬉しいのだった(笑)。
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