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2016年07月04日23:05

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楽しいレトロプロブレム(29)

(60)Gerd Wilts(Europe Echecs 376 01/1991)
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黒Rh8の初手は?(14+12)

 まずは、この局面から1.0手戻してみよう。白はチェックをかけているSをSa3-c4+と戻すしかなく(それ以外の場所がダメな理由は、以降の手順で明らかになる)、対する黒もSg1の成を戻すしかない。

(1.0手戻した局面)
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 ここから局面を分析してみよう。白のなくなった駒はRBの2枚で、黒はBSPPの4枚。白の駒取りはa,b筋でPによるものが1枚ずつで、残りはあと2枚。また、黒Pg2,h2はそれぞれf,g筋から1枚駒取りをしてここに潜り込んだと考えるのが自然で、これで黒の駒取りは尽きている(g2で取られたのが白Rで、h2で取られたのが白B)。すると白Ph3はh2から来たものなので、e,h筋の黒Pはいずれも成ることができず、直進途中で取られていることになる。白側の駒取りもこれで尽きている。

 ここで左側に目を向けてみよう。この黒駒の塊をほぐすにはPb2xc3と戻すしかないが、当然その前に白Bをc1に格納する必要がある。また、左側を経由して白Kをe1へ運ぶのは不可能であるから、白はQ,Kを初形位置に戻し、白Bg4をf1に戻してやっとPg2-g3とすることができるのだが、その間の黒の待ち手を作る為に白は適宜黒Pをuncaptureしなくてはならない。では、どういう順でそれを行えば良いのだろうか?
 どうしても最短距離で動かしたくなるが、白Kをまっすぐに引いてf2を通そうとする順は途中で手数が足りなくなる。一見遠回りのようだが、白Kを使ってまずは最も遠いh筋の黒Pを戻し、次いでe筋の黒Pを戻す。これらの黒Pを利用すれば、黒がretro-stalemateに陥ることなく白Bをc1に戻すことができる。具体的には、次のような手順だ。

Retract:1.Sa3-c4+ Pg2-g1=S2.Qg1-d4 Pd4-d3 3.Kf6-e7 Pd5-d4 4.Kg5-f6 Pd6-d5 5.Kh4-g5 Pd7-d6 6.Kg5xPh4 Ph5-h4 7.Kf4-g5 Ph6-h5 8.Ke3-f4 Ph7-h6 9.Kf2xPe3 Pe4-e3+ 10.Ra1-d1 Pe5-e4 11.Qd1-g1 Pe6-e5 12.Ke1-f2 Pe7-e6 13.Pf2-f3 Pf3xRg2 14.Rg1-g2 Pf4-f3 15.Bf3-g4 Pf5-f4 16.Bg2-f3 Pf6-f5 17.Bf1-g2 Pf7-f6 18.Pg2-g3 Pg3xBh2 19.Sb1-a3 Pg4-g3 20.Bd6-h2 Pg5-g4 21.Ba3-d6 Pg6-g5 22.Bc1-a3 Kb4-a5 23.Pb2xSc3+

(22.5手戻した局面)
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何と、ここまでの逆算手順は完全限定!そしてこの局面をよくよく見ると、作者の意図が浮かび上がってくる。

 右上がこのような配置になるには、
(1)黒Rh8をg8に寄せ
(2)白Sg6をh8に入れて
(3)黒Pg7をg6とし、黒Bf8を外に出す
の順に指さなければならないことがすぐ分かるだろう。よって設問に対する解答は「Rh8-g8」ということになる。

 全く黒駒の影も形もない出題図からの意外な展開。上手い人が手掛ければ、オーソドックスなレトロにもまだまだ可能性は残されているのだ。

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(62)Niels Høeg(Aarsskrift DSK 1939)
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黒駒を1枚追加し、黒が1手戻して、それからH#1にせよ(12+12)

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