アルデガン本編第1部を今の目で見ると、いろんな意味で余裕がなかったのだなあと痛感します。今のところ第1話はガラリアンについて、第2話はリアについての語りきれずにいた部分を追記する形になっていますが、第3話は名前は出ていたものの実際の描写はないも同然だったケレスについてかなり大幅に追記することになりそうです。僕のイメージ中で彼は魔術に関する天分には恵まれていないものの、アザリアの元での研鑽により数も限られ威力も乏しい術しか使えぬ自分や仲間の魔術師たちを束ね、術をかけるタイミングを見極めることにより非力な術を最大限に活用する戦い方をしていることになっていて、第5話にはそんな風に弟子を育てたアザリアへのボルドフの賛辞まであるにもかかわらず、肝心の本人の描写がまるでない状態だったので、アラードの視点だけで通している現状の形にケレスの視点が混在する危険はあるものの、コボルトと戦うアラードのこともケレスがきちんと見ていることは書き加えておくべきだろうと考えています。
このケレスについては穴混んだ様の未完の傑作『塞翁』が若き日の姿を周囲の多くの人物ともども活写しておられ、原作者としてはありがたいやら己の不備がお恥ずかしいやら複雑なところですが、こうして彼のことを考えていると、その後の彼のこともあれこれ頭に浮かんできます。アルデガンの崩壊以後はアラードたちと行動を別にしていたケレスですが、術者というより賢者としての道を歩んだとおぼしき彼がやがてアラードと再会し、闇姫を倒した英雄として混迷する人間界のしがらみに絡め取られたアラードを補佐することにもなるのではという気が漠然とし始めているところです。
ログインしてコメントを確認・投稿する