経験者が怖がらせすぎかもしんない

「オマエが無痛分娩がよかったら高くても無痛分娩にしてもええで」
「私たぶん痛みには強いから普通分娩でいくわ」
だって私は、手首の骨が折れているのに自転車に乗って高校へ行き、卒業式に出席して先輩に花束を渡したオンナ。先輩、あの時の花束ね、折れた右手で渡してました。

20年前、20歳の時に最初の出産をしたんだけど、その時にも選択肢として無痛分娩はあった。
でも出産に怖さを感じていなかったので、普通分娩を選んだ。
それが、若さということかもしれない。

「出産の痛みってな、男やったら失神するねんて」
「失神てどのタイミングでやろうな…」
陣痛が来て出産するまでに数々の失神ポイントがありそうな気もするけど。
「失神するほど痛いんやで？無痛やったらそれがないねんからそっちのほうがええと思うけどなぁ」
「私の人生で痛みで失神するっていう経験が何回あるんやろ。失神ってそんなに簡単な技じゃないよなぁ…普通でいくわ」
夫は自分が産むわけでもないのに私に無痛分娩を再三すすめてきた。
『たまごクラブ』を買ってきては、私に読めと言う。
育児書ならわかるけど、出産に関して予備知識とかって要るのかなぁ？誰ひとりとして同じ出産なんてしてないと思うんだけど。『生命の神秘』的なことだからカンでいこうかな〜て思ってるんだけど、本能任せで。

「あんな？産む時の痛みってな、鼻にリンゴ詰めるくらい、やって。無痛にする？」
「鼻にリンゴを詰めたことがないから、ピンと来んわ。普通でいく」

「出産の痛みなぁ、下唇を頭の上までこ〜〜〜〜やって引っ張るくらい痛いねんて。無痛にする？」
「下唇を上に引っ張るていうことがないから、ピンと来んわ。普通でいく」

それからも夫が集めてきた「産んだ人情報」の痛みの予備知識は披露され、出産直前まで「無痛にする？」「普通でいく」の不毛なやり取りが続いたんだけど、安産体質だったのか、鼻にリンゴが詰まったとも、下唇が頭の上まで引っ張られたとも感じなかった。痛くなかったということではなくて、分娩台にあがる直前の陣痛は痛かったし、出産も痛かった。助産師さんが「アンタ、出身はドコや？」と聞くので「宮崎です」と答えると、「あぁそうやろうなぁ、九州の人はみな辛抱がええわ、ホンマ九州の人は辛抱がええ」と言った。

たまごクラブで読んでいた「後産」というのを、これは経験としてしっかり体験しようと心に決めていたのだけど、２人の子供を出産をしても私は「後産」がどうだったかを知らない。「あれ？後産ってどれのことだろう？」と思ったけど、メインが我が子を産んだことなのに胎児を出産した後の胎盤の行方を医師に聞くわけにもいかない。我が子を腕に抱いて「私ってもう胎盤は出産してますっけ？」とも聞きづらい。

「帰るまでが遠足です」みたいなカンジで「後産までが出産です」と思っていたのに「バナナはおやつに入りません」くらいに「後産は出産に入りません」でした、私の場合はね。
失神もしなかったし、夫が集めてきた出産経験者の痛みの程度も、どれひとつ私には当てはまらなかった。それまで私の痛みのナンバーワンは骨折だったけど、それが出産に変わった。でも耐えられないほどの痛みではなかった。骨折した日の夜あまりの痛みに眠っていられなくて泣いた。出産も泣くほど痛いけどその涙の理由の半分は痛みではないと思う、骨折は泣くほど痛くて医者にかかるけど、出産は分娩台に乗ってから泣く。泣く前から医者にかかってるから、専門知識は医者や助産師さんに委ねて、母親は本能で出産したらえんちゃうかなぁ。出産の痛みに恐怖感があるなら無痛を選ぶのもよし、１回くらい経験しとこかなっていうチャレンジ精神で普通分娩でいくのもよし。

情報とか経験者談でいたずらに怖がらせすぎてもアカンと思う。
当然なかには大変な出産を経験した妊婦もいるだろうし、痛みの感じ方はひとそれぞれだから伝わり方もさまざまだろうけど、私は出産経験者として過不足なく適切な事実をいまの妊婦の皆さんに伝えたいと思う。

出産は痛いです。
でも耐えられないことはないな、と思う痛みでした。
翌年にまた普通分娩で子供を産もうと思うほど、出産の痛みは私に恐怖感は与えませんでした。
陣痛も痛いですが、出産の痛みに比べたらヘでもないです。
もしアナタが九州人なら、陣痛に耐えるチカラは人一倍みたいですよ助産師さんによると。


■釈由美子さんが無痛分娩！“無痛”っていうけど本当に痛くないの？
(mamagirl - 06月27日 16:10)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=249&from=diary&id=4064411