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日記一覧

 第2部 洞窟の戦い  第3章 火口 その3 ラルダの言葉がとぎれた。 その顔が苦悶に歪んでいた。脳裏に去来するものに耐えるかのように固く目を閉じ、歯を食いしばっていた。伸びた牙が唇を食い破り、血がしたたり落ちた。 あまりにも無残な話に、ア

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 第2部 洞窟の戦い  第3章 火口 その2 甘美な香りにむせながら、ラルダは目覚めた。 自分が狭い場所にいることがわかった。四方どちらを向いても岩肌が見えた。三方は一つながりだったが一方の岩壁の周囲に細い隙間が見えた。岩の窪みを大岩で塞い

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 第2部 洞窟の戦い  第3章 火口 その1 ゴルツとアラードが辿りついたのは、それまでとは全く様子が異なる場所だった。 これまで洞窟の広がった部分はいくつもあったが、この場所はずばぬけて広かった。地面にはいくつもの亀裂が走り、赤い光が漏れ

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 第2部 洞窟の戦い  第2章 洞窟中層 その2 アラードは言葉にならぬわめき声をあげながら、からみついた触手をめちゃくちゃに斬り裂いた。勢い余って自らの体に何度も刃を立てたことさえまったく気がつかぬまま。 やっとリアの側に駆け寄ったときに

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今月24日にそれまで部単位で一括掲載していた3部形式の拙作アルデガン本編第1部を10の章に切り分けて載せ直したら84アクセスが付きましたが、これには改稿作業をした僕自身の分も含まれているはずなので2日遅れで出てくる閲覧実人員を見たら39。僕

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 第2部 洞窟の戦い  第2章 洞窟中層 その1「体に熱を感じます。炎のすぐそばに立っているような……」 ゴルツの問いかけにリアが答えた。 あれからリアは進んで敵の意識に接触し、手掛かりを得ようとしていた。もはや敵の監視下にあり、自らの身が

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 第2部 洞窟の戦い  第1章 洞窟上層 その3 入り口から差し込む陽光に浮かび上がった洞窟は天然の状態ではなかった。床や壁のそこかしこに人の手が加えられ、特に床は平らに整えられていて足を取られるような障害物は極力排除されていた。ここが二百

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 第2部 洞窟の戦い  第1章 洞窟上層 その2「洞窟に入ればそなたにも敵の気配が感じ取れるようになろう、それもしだいに強く。その意味はわかるな?」ゴルツのその言葉は、アラードにはなんの容赦もないとしか思えなかった。 リアはうなづいた。だが

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 第2部 洞窟の戦い  第1章 洞窟上層 その1 真昼の光を浴び赤毛を風になびかせながら、アラードはリアとゴルツとともに洞門の前の砂地に立っていた。アラードは体格に合わせた軽い鎧、リアは皮で補強された胴着、ゴルツはラーダの紋章が入った長衣に

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かつてマイミクのAstray様がキリ番を踏まれたとき恒例のリクエスト権を進呈させていただいたところ、これから書くオリジナルファンタジー小説にイメージイラストをお願いしますとのリクエストを賜り、別の機会にも再度キリ番を踏まれたことから情景と登場人物

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 前にパナソニックのローエンドマイクロコンポ1組にデノン製サラウンド用ミニスピーカーを付け加えたシステムを「へらぶなオーディオ」などと銘打ちながらご紹介したわけですが、むろん「へらぶな」だから理想の音というわけではないものの、実際に僕の手持

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第二の野営:川のほとりにて その五「それがゴルツ閣下との」「ああ、初めての拝謁だ」「では、おそばにおられたのは」 いいつつ眠る呪文の師に視線を向けたアラードに、剛剣の師はかぶりを振った。「グロスじゃない。こいつが閣下にお仕えするようになった

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第二の野営:川のほとりにて その四 岩山を城壁の内に取り込んだ城塞都市は、想像もつかなかった巨大さだった。通行手形を渡した門番から彼を引き継いだ見習い僧に夜の大通りを導かれる間にも、田舎貴族の居城しか見たことがなかったボルドフは、尖塔を備え

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外伝8覚書の4
2016年11月05日21:01

今書いている第2の野営はボルドフの語りで通すものの、少しは変化があってもいいような気がしてきたので、第3の野営はグロスを語り手として彼の目から見た、ひいてはアルデガンの中しか知らないほとんどの住人たちにとって来訪者たるボルドフがどう見えてい

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