「月下の獣人」第27話(MF〜MF)「セシリアのことでは本当に皆の世話になった。たいしたものはないが、遠慮なくやってくれ」 当主ノースグリーン卿の言葉が終わると、打ち鳴らされる杯の音に続いてわきあがった談笑の声が大広間を満たした。 平民出身
「月下の獣人」第26話(MF〜MF) 長きにわたり駆け続けるうちに、白狼の周囲の世界はどんどん彩りを変えていった。本来雪山を離れることのできぬその身は、同化した笛の冷気に守られ気候の支配を免れていた。そのことを確かめるかのように、きらめく鳥
「月下の獣人」第25話(MF〜MF) 夜明けが近づいたことを察したワーラビットが長衣を身に着けた。稜線の彼方から投げかけられた曙光がその姿を再び青年へと変えた。倒れたままのワーウルフたちの姿も完全に人間のものと化していた。「やはり笛の存在が
「月下の獣人」第24話(MF〜MF)「……そうだったの。あなたが……」 セシリアはつぶやいた。少女の正体を知ったいま、ばらばらの出来事を貫いていた真相がついに浮かび上がった。しかしそれは彼女にとって、深い哀しみを覚えずにいられぬものだった。
「月下の獣人」第23話(MF〜MF)「おおい。そうじゃねえ。お嬢ちゃんの音はそんなんじゃねえだろう!」 山小屋の屋根の上に追い詰められた者たちはもちろん、いまや小屋の前にたどりつこうとしている者たちにもその声は届いた。ビリーだった。鍛冶見習
「月下の獣人」第22話(MF〜MF) 二頭のワーウルフがついに立ち上がり、牙を剥いて咆哮した。その恐ろしさに幼い兄妹が声をあげて泣き出した。 するとワーウルフの狂暴な眼光が僅かに弱まった。次の瞬間、彼らは自らの脇腹と胸の傷に鉤爪を突き立てた